動き出す者達
「うわっ!?」
足元の地面から魔物が飛び出し、俺は間一髪で避けた。
飛び出てきたのは、牙が生え揃った丸い口に緑色の長い胴体をしたグリーンワームという魔物だ。
そのグリーンワームが大量発生したという依頼を受けて、俺達はある森にやってきて、今まさに交戦中だ。
対峙していたグリーンワームは再び地面の中に潜った。
「地面の中に潜られると厄介だな」
どこから現れるのか分からないから、左腕の予見の盾で10秒先を見てみた。
地面の上に立つ俺に、真下からグリーンワームが出てきて俺に襲い掛かる光景が盾に映った。
「10秒後か」
俺はその場で立ち止まり10秒待った。
10秒経った頃、俺は光のエレメントで脚力を上げて大きくジャンプすると、丁度真下の地面からグリーンワームが飛び出してきた。
グリーンワームに向かってライトカリバーから光の光線を放つと、グリーンワームを貫き緑の血を出して倒れる。
「よし」
「勇也ー、大丈夫?」
地面に着地すると、少し離れた所で戦っていたレインが駆け寄って来た。
「ああ、大丈夫。レインは?」
「私も大丈夫よ」
「良かった。皆の様子も見てこよう。多分もう倒し終えてると思うし」
森の中を歩いて行き、予想通り倒し終えた皆と次々と合流していく。
全員揃うと、周囲を捜索しグリーンワームがいないことを確認する。
「もういないみたいだね」
「結構いたからな、流石ちょっと疲れた」
「もう長くてウネウネしたのは皇蟲で勘弁~」
「文句言うても仕方あらへんよ」
20匹以上もいたから流石に疲れた。
肩を回していると、誰もいないのにレインが後ろを振り向いた。
「どうしたの?」
「水が流れる気配を感じる」
「そう言えば……確か向こうに川が流れていたはずじゃ。そこで休憩してから屋敷に戻るかのう」
「そうしましょう。私も疲れました」
「僕も喉が渇いたし」
ジーリュを先頭に進むと、言う通り川が流れていて、俺達は川のほとりで休むことにした。
レインから渡された水を飲んでいると、ジーリュが上流の方にある小さな滝をジッと見つめていた。
「どうしたんだジーリュ?」
「いや、ここには先代のエレメンターと来たことがあってのう。少し懐かしんでいた。あまり良い思い出では無いがな」
ジーリュの少し沈んだ表情を見て、本当に良い思い出じゃないって事が伝わった。
あの顔……前に先代エレメンターの話をした時と同じ顔だ。
流石に聞くのは野暮だと思ったから聞かないでおこう。
――――――――――――――――――――
日が沈み、満月がハッキリと見える夜。
勇也達がグリーンワームを討伐した森の中で流れる川にある小さな滝の上空に、突如小さな穴が開くと、穴の中から一人の男が出てきて川の中に落ちた。
「ぶはっ!!」
男は川の中から顔を出すと川から上がった。
「はぁ……はぁ……、地面じゃなくて助かったが、此処は……」
男は周囲を見渡す。
「あの森か? 景色は似てるが……地面は荒れてねぇな。って事は……」
すると、近くの茂みが揺れバッと振り向くと、全身をマントで覆った一人の男が歩いて近づいてきた。
「誰だぁお前は?」
「……久しぶりだな」
「っ! その声は……!?」
男がフードを外し顔を見せた。
「兄貴!!」
「久しいな、我が弟よ」
「ああ! ……にしても老けたな、兄貴」
「あれから22年も経っているからな。その間にも色々な事が起きた。私の隠れ家へ行きながら話そう」
マントの男が杖を取り出し掲げると、一体の翼竜が現れ二人の男は背に乗り翼竜は飛んで行った。
「凄ぇ所を隠れ家にしたなぁ。……にしても、ライトスとダーケルが死んだとはな」
隠れ家に着くと、男はマントの男から聞いた話を思い返していた。
「一番我々の邪魔をしたあいつ等がいなくなったのは別に良い。だが光のエレメントが復活し、新たなエレメンター達と共に活動を始めた」
「あいつ等の子って事か。で、強いのか?」
「厄介なのは間違いない。なんせ封印獣を全て倒したのだからな」
「マジかよ!? 確か一体で町一つ滅ぼせるって聞いたぞ!?」
「それだけではない。封印獣全てが合体したデスキメラと言う怪物までも奴等は倒した」
「うぇ~。また俺達の邪魔されたら堪ったもんじゃねぇな」
男が顔を歪めるのに対して、マントの男はニヤリと笑う。
「安心しろ。何もこの22年間、何もしていなかった訳ではない。この長い年月のお陰で、”とっておき”が完成したのだからな」
「とっておき?」
「お前も驚くぞ」
自信満々のマントの男に、男は首を傾げると、二人は大きな部屋に入った。
その部屋の中にある物を見て、男は目を見開く。
「あ、兄貴……これって……!?」
「ハハッ。流石のお前でも言葉が出ないか? そう、これがとっておき……私の最高傑作だ!!」
マントの男は腕を大きく広げて、人が入った幾つものカプセルを男に見せる。




