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エレメンターズ  作者: 至田真一
戻った日常
129/201

高原の調査

「終わっっっった~~!」


 あれから半月以上経ち、ようやくウェアークの復興作業が終わった。

 町の風景が元通りになり安心した。


「うあぁぁぁ、疲れたぁぁぁ!」

「ここしばらく肉体労働だったからな。体痛ぇ」


 ビトは体を伸ばすと芝生の上で寝転がり、エンは首や肩を回す。

 他の皆も大分疲れてるけど、町が元に戻ったし、頑張った甲斐はあった。


「お主等、よく頑張ったのう」


 ジーリュと後ろにいるグレスさんが、疲労で座り込む俺達の元にやって来た。


「あぁジーリュ。町の復興なんて初めてだから、大変だったよ」

「本当に助かった。お陰で予想より早く町が戻った。頼みたい事があるんだが……この様子なら明日にしておくか?」

「そうさせてもらいます」


 グレスさんからの頼み事となると魔物討伐とかだろうし、流石に今それを出来る気力も体力もない。

 という訳で、その頼み事は明日引き受けることにして、今日は屋敷に戻ろう。


――――――――――――――――――――


 次の日、グレスさんが訊ねてきて昨日頼もうとしてきた頼み事を持って来た。


「高原の調査?」

「そうだ。バート高原と言う巨大な高原の調査を頼みたい」

「そこで何かあったのか?」


 ジーリュが訊ねると、グレスさんの表情が変わった。


「先日、バート高原にしか生息していない魔物が別の場所で目撃された。しかも数匹」

「むぅ~……。そう言えばその事態については解決してなかったのう。封印獣の復活と関係あったかと思っておったんじゃが、結局関係無かったしのう」


 封印獣の封印を解いていったジョルクスは、別に魔物が別の場所に現れる事態に関係して無かったし、原因は未だにハッキリと分かってない。


「じゃあ、その高原に行って調べて見ます」

「ああ。よろしく頼む」


 俺達は準備を終えると、庭に召喚獣を呼び出し背に乗ってバート高原へ向かった。


――――――――――――――――――――


「見えたぞ、バート高原じゃ」

「広いなぁ」


 空からでも全体が見渡せない程、広大な高原が目の前に広がっていた。


「む~……」

「どうしたんだジーリュ?」

「……生き物が少ない」

「え?」

「バート高原は様々な動物や魔物が生息しておるんじゃが……本来ならそこら中にいてどこからでも見えるはずなんじゃ」


 でも、どれほど見渡しても生き物が全く見えない。

 見つけたとしても二、三匹ぐらいの小さな群れぐらいだ。


「こりゃあ明らかにおかしいのう。皆よ、高原を隅々まで見て見るぞ」


 俺達は頷くと空を移動して高原を探索する。

 しばらく空から高原を見下ろすが、確かに生き物が少ない。

 所々に木や湖があるから生き物が住むには適してそうだけど、全然いないな。

 その後も空から見ていると、異様に荒れた場所を見つけ、気になったジーリュに言われてその場所に下りた。


「抉れた地面に砕かれた岩。そしてこの爪跡。何かが暴れた跡じゃろうか?」

「……」


 地面や岩に残っている猛獣の様な爪跡をビトがニオイを嗅ぐと首を傾げる。


「何だこれ?」

「どうした?」

「何て言えばいいんだろう? なんか色んな動物のニオイが混ざったようなニオイがするんだよ」

「混ざったニオイ? だったら色んな動物が争った跡なんじゃねぇか?」

「そう、かなぁ?」


 ビトが困惑しながらも、俺達は再び空から高原を探索した。

 すると今度はある魔物の死骸を見つけそこに下りた。

 見つけたのは金色の皮膚を持つ、金犀と言う(さい)の魔物だ。

 その金犀の腹には大きく抉れた爪跡があった。


「金犀の皮膚はとても硬いんじゃが、この爪跡はそれをいとも簡単に切り裂いておるのう」

「これってさっき見つけたのと同じ爪跡かな?」

「……間違いないね。同じニオイがする」


 同じって事は、さっきの跡は色んな動物が争った形跡じゃないな。一匹の生き物の仕業だ。

 するとどこかから大きな音が聞こえ、音がした方を振り向くと大きな土煙が上っていた。


「何だ?」

「あっちには確か川があったはずじゃ」


 俺達は召喚獣に乗って土煙が上っている場所へ向かう。

 着くとそこには、顎が甲殻で覆われた(わに)の魔物の死骸が複数転がっていた。


「あれは甲顎鰐(こうあごわに)じゃ」

「凄い数がやられてるな」


 俺達は下りて甲顎鰐の死骸を見ていると、ビトが鼻をスンスンと動かしてニオイを嗅ぐ。


「さっきと同じニオイがする」

「じゃあこの鰐達は、そのニオイの主にやられたって事?」

「そうかも知れん。まだ近くにいるはずじゃし、探してみるぞ」


 俺達は地上と空からそれらしい生き物を探すが、全く見つからない。


「どうじゃ?」

「駄目だ。空からでも見つからない。そっちは?」


 青龍に乗ったリューラが聞くと、地上を探してる俺達は首を横に振る。ビトも同じく。


「ニオイが急にしなくなった。これじゃあ僕でも分からない」

「……仕方がない。他の場所へ移動してみるぞ。何か見つかるかも知れん」


 俺達は再び召喚獣に乗って移動した。


――――――――――――――――――――


 複数の甲顎鰐の死骸がある場所から少し離れた地面の中から、鋭い爪を生やした一人の人影が出てきた。


「時が来るまでエレメンターと戦うなと言われてるからな。命拾いしたな」


 そいつは姿を獣の様な姿に変えると、大きく跳び上がり何処かへ姿を消した。

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