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エレメンターズ  作者: 至田真一
王立学園の怪事件
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奇妙な死骸と襲われた冒険者

「失踪事件の詳細は耳にした。今回は誠に感謝する」


 王立学園の生徒失踪事件を解決した俺達は王城を訪れ、執務室でシュアン国王に報告すると感謝の言葉を貰った。


「いえ、当然のことをしただけです」

「それにしても前学園長の霊ですか。確かに、あの頃の学園は今と比べると静かと言いますか、皆大人しく感じました」

「あの様な事が遭ったからのう。生徒もきちんと真面目になるじゃろう。そうすれば前学園長も安心して成仏出来るはずじゃ」


 あんなに教育熱心な人だからな。

 またサボる生徒が出たら同じ事しそうだし、本当に真面目に授業を受けてほしいよ。


「林先生、大活躍だったね」

「私は思ったことを言っただけです。聞く耳をちゃんと持っていたから良かったです」


 先生の説得のお陰で解決出来た様なもんだし、本当に今回のMVPだよ。


「失礼します」


 執務室のドアがノックされ、シュアン国王が「入れ」と言うと、兵士が一人入ってきた。


「ラース騎士団長にご報告したいことが」

「なんだ?」


 ラースさんが兵士の元へ行き耳打ちで何か聞くと、険しい表情に変わった。


「分かった、行こう」

「どうした?」

「陛下。王都の冒険者ギルドから、奇妙な魔物の死骸を見つけたと報告が」

「奇妙な魔物の死骸?」

「はい。その死骸を回収したらしいので、これから冒険者ギルドへ行きます」

「そうか、分かった」


 話を聞いた俺達は目を向け合うと頷く。


「ラースよ。ワシ等も行ってもよいか?」

「……確かに、意見は欲しいですね。分かりました。ではご一緒に」

「すまぬ」

「それでは国王様。俺達はこれで」

「ああ。また何かあったら頼りにさせてもらう」


 俺達は執務室を出ると、ラースさんと共に王都の冒険者ギルドへ向かった。


――――――――――――――――――――


 王城を出た俺達は、王都の冒険者ギルドの前に着いた。

 王都だけあってウェアークのギルドよりも大きいな。

 中に入ると一人の若い女性が駆け寄ってきた。


「ラース騎士団長、待っていました。……そちらは?」

「ギルドマスター。こちらはエレメンターだ。彼等にも一緒に見てもらおうと連れてきた。それで、例の死骸は?」

「ギルドの奥です。こちらへ」


 ギルドマスターの後をついて行き、ギルドの奥の部屋に入ると、そこに置かれている物を見て俺達は思わず顔を歪めた。


「こ、これがそうなのか?」

「はい」

「確かに、奇妙だな」


 部屋の中央の台に置かれていたのは、腹や背中、口から木の根が突き出た大きな蜥蜴の魔物の死骸だ。


「一体どうなっておるんじゃ? これは」

「分かりません。冒険者が見つけた時にはすでにこの状態だったと」


 これ、思いっきり木の根が体を突き破ってるよな。そう思うとなんかグロい。

 気になるのか、レイフが近づきその木の根に触れると、不思議そうな顔になる。


「どうしたの? レイフ」

「この根っこ、自然な物ではありません。何て言えばいいのでしょうか……異質と言いますか、不気味と言いますか……」

「自然な物では無いか。まぁ確かにこんなのは初めて見るわい」


 自然じゃないって事は人為的か? 植物を操る魔法とか?


「そう言えば、以前グレスさんから木の根が異常発生して人間や魔物に突き刺さっている、という話を聞きませんでしたか?」

「そういやぁ……んな話聞いたような」

「それと今回の事は関係があるかもしれないって言いたいの?」

「恐らくですが」


 フィーズの推測でも、関連性は高そうだな。木の根って共通してるし。


「ん? なんか騒がしいな」


 ギルドのロビーの方から騒めきが聞こえて、気になった俺達はロビーへ行くと、そこで剣士の男と、その男に肩を借りているグッタリとした大柄の男と魔法使いの女の三人組の冒険者の内、剣士の男が声を上げていた。


「誰か! 誰か回復魔法を使える奴はいないか!?」

「どうやら回復魔法を使える者を探してるようじゃな。このままじゃ迷惑じゃし、ヒレア、行ってあげなさい」

「ええ」


 ヒレアは向かい何か話した後、剣士の男が大柄の男を床に寝かし、その男に向かってヒレアが回復魔法を掛け、俺達も近寄る


「これで大丈夫なはずよ。酷い怪我ね、一体何があったの?」

「それが、魔物討伐の依頼を終えて戻る途中、突然一人の男が俺達に襲い掛かってきたんだ。殴りかかってきたのをこいつが盾で防ごうとしたら、そいつは盾と鎧を呆気なく一撃で破壊したんだ。ミスリルとか、希少な金属を使った盾と鎧をだ」


 そんな盾と鎧を一撃でって、そいつ本当に強いな。


「俺も斬りかかったんだが、何故かそいつの体が異様に硬くて、逆に剣が折れたんだ」

「敵わないと思って、私の魔法で目くらましをしている間に逃げてきたの」


 剣が折れる程硬いって、何だそいつ。


「また冒険者が襲われたのね」

「”また”? どういう事ですか?」

「最近、世界各地で冒険者が襲われるという報告が上がってきてるの」

「冒険者が?」

「ええ。しかも高ランクの冒険者が中心に襲われているみたいなの。襲ってくる人はとても強いらしくて、たった一人で数人の冒険者がやられてるみたい。亡くなった冒険者もいるわ」


 今回と似てるな。それに世界各地って事は何人もいるのか?


「そもそも、相手が人間なのかも怪しいのよ」

「どういう事じゃ?」

「襲われた冒険者からの話の中には、斬り落とした腕が再生した、なんて話もあるのよ」


 腕が再生!? 確かに人間なのかどうか疑わしいな。


「その襲ってきた者は一体どんな奴なんだ? 特徴とか」

「特徴は……特に共通点は無いわね。見た目もバラバラだからね。青い髪をした女だったり、風を操る男だったり、騎士の格好をした女だったり」


 青い髪の女に風を操る男。どれも聞いたことがあるな。

 って言うか、騎士の格好をした女って……。


「ねぇリューラ。確か前にあんたに襲ってきた女って」

「ああ。騎士の装いをした女だ。同一人物かもな」


 リューラも襲われたことを考えると、冒険者だけを狙ってるって訳じゃないのか。

 俺達も気を付けないと。

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