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エレメンターズ  作者: 至田真一
王立学園の怪事件
126/201

これからの王立学園

「エシオン学園長? 確か、病死したって言う前学園長ですよね?」

「はい。ですが間違いありません。あれはエシオン前学園長です」


 フィーズの問いにコーマス学園長は答えた。

 じゃあ本当にあれはエシオン前学園長なのか?


「あれ? でも前学園長は病死したんだよね? じゃああれって……」

「多分風間の予想通りだと思う」


 全身半透明だし、間違いないな。

 メーシャと同じ霊体だ。


「コーマス新学園長か」

「エシオン前学園長。一体何故このような事を?」

「何故……だと?」


 段々と表情が険しくなり、手に持っている教鞭を強く握る。


「私は死後、気付けばこの学園にいた。恐らく学園がどうなるのか気になるという、私の未練だろう。それで学園を見て回れば……!!」


 エシオン前学園長は教鞭で教卓を叩くと、捕らわれてる生徒達はビクッと肩を震わせる。


「サボる生徒は増えるわ、成績が下がる生徒が増えるわで……何という体たらくだ!!」

「そ、それで生徒を此処に?」

「そうだ! だから代々、学園長にのみ伝わるこの秘密の指導室に連れてきたのだ」

「学園長にのみ? しかし私は知りませんぞ、こんな所」

「当然だ。伝える前に私が死んだのだからな。そんな事よりも……コーマス!!」


 エシオン前学園長はコーマス学園長に向けて声を上げると、捕らわれた生徒はビクッと震える。


「私がいなくなった途端に何だあの学園の様は!?」

「それは……申し訳ありません……。しかし、だからと言ってこのような事は……」

「今の学園がだらしないから、私自らが指導を行ったのだろう!! 邪魔をする気なら、容赦はせん!」


 部屋の教材が浮くと、一斉に俺達に向かって飛んできて、俺達は咄嗟に物陰に隠れた。

 ポルターガイストかよ。幽霊らしい。

 って言うかこの教材、俺等だけじゃなく捕まってる生徒にも当たりそうだ。


「エ、エシオン前学園長、やめて下さい!」

「ならばさっさと失せろ! 私の教育の邪魔をするな!」


 失せろって、俺達は消えた生徒の救出に来たんだぞ。流石に帰りにくい。

 どうにか、エシオン前学園長を説得しねぇと。


「……」


 すると、小森先生が立ち上がってエシオン前学園長に向かって歩き出す。


「先生、危ないですよ!」


 本が小森先生に向かって飛んでくると、ヒレアが小森先生の周りに結界を張って飛んでくる本から守った。


「なんだお前は?」

「私は異世界の教師です。言わせてもらいますが、あなたのやり方は間違っています!」

「何だと……? 何故そう言い切れる!?」

「間違っていなければ、こんなに授業をサボる生徒は出ないはずです!」

「っ!」


 エシオン前学園長は歯を食いしばると、教材だけでなく、空いた机や椅子まで浮かばせて飛ばしてくる。


「私の教育は間違っていない。間違ってなどいない!!」

「いいえ間違っています! あなたの教育方法は聞きました。教育熱心なのは良い事です。ですが、厳しいだけでは良い生徒にはなりません。ですから皆怯えていたんじゃないですか」

「ならば聞く。お前にとって正しい教育とは何だ!?」


 エシオン前学園長の問いに、小森先生はしばらく黙り込むとやがて口を開いた。


「何が正しいのか間違いなのかは、私もよく分かりません。ですが、厳しいだけの教育は生徒に恐怖を与えてしまいます。そんな事は教師がやって良いわけがありません。私達教師の役目は生徒に教える事です。それは勉学を含めた世の中の楽しい事や厳しい事全てです。そうして、生徒の皆さんが将来の為に前を進んで行くのを見守る。それが私達、教師の役目だと思っています。今のこの子達を見て、将来に進んで行けると思いますか!?」


 エシオン前学園長は生徒達に目を向ける。

 表情が変わっていき、次第に飛んでくる教材や机の勢いが弱まり、やがて攻撃が止んだ。


「もう少し見守ってはいかがですか? まだあなたがいなくなって僅かしか経っていません。それだけでは学園はすぐに変わりません。もっと、今の学園長や生徒の皆さんを信じてみて下さい」

「…………いいだろう。コーマス学園長」

「は、はい……」

「もし変わらぬようだったら、私は許さんぞ」

「分かりました」


 エシオン前学園長の体が揺らめくと、徐々に消えやがて見えなくなった。

 すると捕らわれて動けなくなっていた生徒達の体が動く様になった。


「やった、動ける!」

「やっと帰るよぉ~」


 解放されて喜ぶ生徒達を見て一安心すると、小森先生が口を開いた。


「皆さん。厳しい学園長がいなくなったからって、授業はサボってはいけません。さもないと、また同じような目に遭いますよ」

『は、はい』


 コーマス学園長とメーダ教頭も一安心して微笑むと、メーダ教頭が口を開く。


「エシオン前学園長を安心させるためにも、しっかり王立学園の生徒として勉学には育んでいきましょう」

『はい!』


――――――――――――――――――――


「皆さん。今回は誠にありがとうございました」


 学園長室でコーマス学園長は頭を下げて俺達に礼を言う。


「またエシオン前学園長が同じ事をしてしまわないように、私もしっかりしなければなりませんね」

「そうですね。早く安心させて成仏出来るように」


 このような事になってしまった事を反省し、コーマス学園長とメーダ教頭はこれからの王立学園を良くしてくれると思う。


「ところで小森さん……でしたっけ?」

「はい?」

「貴方には本当に感謝しております。出来れば、ここで教師をやってもらいたいのですが……」


 小森先生をここの教師に?

 この誘いをどう答えるのか、俺達は小森先生に目を向ける。


「……お誘いは嬉しいのですが、まだ私は自分の生徒が心配ですので、その話は今は受けられません」

「そうですか……。ちょっと残念ですが、仕方ありません」


 コーマス学園長はガッカリそうにしている。

 でも生徒が心配だからって事は、心配しなければ此処の教師の話受けるのかな?

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