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エレメンターズ  作者: 至田真一
番外編 エレメンターの休息
118/202

勇也とレインの初デート

ストーリーのキリが良くなったので、ここで短編集の番外編を少しの間投稿します。

今回は勇也とレインが付き合ったばかりの頃の話です。

「ねぇ勇也。今日デートに行こう」

「…………え?」


 ある日の九時頃、リビングで突然言い放たれた言葉に俺は呆気に取られて固まってしまった。

 そう言い放ったのは二日前に俺に告白し、恋人関係になったレインだ。


「えっと……どうして?」

「どうしてって、私達恋人同士なんだからデートするのは当然じゃない?」

「そうか……そうなのか?」


 これまで誰とも付き合ったことが無いから恋人としての普通が分からない。まぁ……恋人同士がデートをするのは別に変じゃない……か?


「……私とデートするの嫌?」

「え、嫌じゃ無いよ! ただ、ちょっと恥ずかしいと言うか……」


 緊張気味に言うと、レインが口元に手を当てて顔を横に向けて考え事をすると顔の向きを戻して口を開く。


「じゃあ、町の案内がてらデートっていうのはどう?」

「町の案内?」

「だって勇也、ウェアークの町ちゃんと見た事ないでしょ?」

「言われてみれば……」


 この世界に来てもう次の日には旅に出ちゃったし、戻ってきてもワイバーンの群れと戦ってその次の日にはまた旅に出たし、再び戻ってきても特訓やら魔物や盗賊退治があったりしたし、町に出ても食料を買いに行くぐらいできちんとウェアークの町を見たことは無かったな。


「それなら……。じゃあ、お願いしようかな」


 俺がそう言うと、レインの顔がぱぁっと明るくなった。


「うん! じゃあ午後二時に屋敷の門の前で待ち合わせね」


 レインが嬉しそうな顔でそう言いリビングを後にすると、俺は頬杖を突きながら口元を隠す。

 ヤバい、緊張して来た!

 人生初のデートで緊張を隠せず、もしかしたらニヤけてるかもしれないから口元を隠すが、会話が聞こえていたエンが話しかける。


「あいつとデートとは大変そうだな」

「う~ん……。ねぇ、出かけるときのレインってどんな感じ?」

「別に普通だぞ。だがあいつ、恋に憧れてた……何て言ってたし、張り切るんじゃねぇか?」


 昨日皆に報告した時に、確かにそんな事言ってたな。

 レインも初デートだろうし、やっぱり恥をかかせないために、俺がしっかりエスコートしないと。


――――――――――――――――――――


 昼食を終えて30分前の一時半から俺は門の前でレインを待っていた。待ち合わせで男が先に待つのは基本……って漫画に描いてあったし。

 しばらく待つと、屋敷からレインが出てきて門の前で待つ俺を見つけ駆け寄った。


「早いわね勇也」

「一応デートだし、彼女を待たせるのは良くないから……」


 俺がそう言うとレインは頬を赤くし、俺の腕に抱き付いた。


「じゃあ行こう」

「あ、ああ」


 早速向かおうとすると、レインは手を伸ばして俺の手を繋いだ。しかもただ繋ぐのではなく、恋人繋ぎでだ。ヤバい、これだけでも緊張する。

 緊張しているのがバレない様に、俺とレインは街の方へ歩く。

 俺はレインに案内されながらウェアークの町を見て回った。

 冒険者ギルドや商店街、公園など色々見て回り、ある一軒の店を横切ろうとするとレインが「あ」と漏らす。


「どうした?」


 レインが見ているのは、アクセサリーの店だった。

 やっぱり女の子だからこういう店には興味あるんだな。


「ねぇレイン」

「あ、ごめんね勇也。足止めちゃって」

「大丈夫だよ。折角だから何か一つ買ってあげるよ」

「いや、悪いわよそんなの」

「良いから、今日の記念に。俺が買ってあげたいんだ」

「……じゃあ」


 俺とレインはその店に入ると、レインはアクセサリーを選び、その間俺は店の端っこで待つことにした。


「勇也、私これが良い」


 そう言ってレインが選んだのは小さな青い髪飾りだった。値段は他のを見ると控えめな感じがした。


「それ? 他にも高いのが沢山あるけど?」

「良いの。一目見てこれが良いって思ったから」

「……分かった」


 俺は金を払って髪飾りを買うと店を出た。


「じゃあ勇也、早速付けて」

「良いよ」


 俺は髪飾りを手に持ち、レインの前髪に髪飾りを付けた。


「どう?」

「うん、似合うよ。やっぱりレインには青いのが合うね」


 レインは頬を赤くして照れてそうに見える。


「あ、勇也。あそこのサンドイッチ食べない?」


 レインが指さした先には、サンドイッチを売っている露店が建っていた。


「あそこのサンドイッチ美味しいの」

「へぇ。じゃあ折角だし、食べようか」


 俺とレインは露店へ行って、俺はハムサンド、レインはフルーツサンドを注文し、近くのベンチに座ってサンドイッチを口にする。


「確かに美味しいね」

「でしょ」


 俺が二口目を頬張ると、レインが自分のフルーツサンドを俺に向かって突き出した。


「はい勇也、あーん」

「んっ!?」


 突然の行動に驚き頬張っていた分を飲み込みむせてしまった。


「あ、あーんって……」

「ほら、早く」


 レインの真っすぐな瞳に断り切れず、俺は突き出されたフルーツサンドを口に入れる。


「うん、美味しい」


 あまりの恥ずかしさに顔が熱く感じる。

 するとレインが顔を近づけて俺の口元に付いていたクリームを舐め取り俺は肩を震わせる。


「ちょっ……!?」

「ふふ、勇也顔赤ーい」

「そりゃあ恥ずかしいよ、こんな事されて!」


 レインがからかうように笑っていると、フルーツサンドのクリームがレインの胸元に落ちた。


「あ……。勇也、拭いて?」

「いやいやいやいや! 流石にこれは無理だって!」


 流石に出来ないので首を横に振って断ると、レインは自分の指でクリームを拭き取り口に入れる。


「ごめんね、からかっちゃった」

「勘弁してよ……」

「勇也、顔真っ赤で可愛い」


 これからもこの調子で大丈夫なのか?俺。


「ねぇ勇也。最後にあそこに行こ」


 サンドイッチを食べ終えレインが指差したのは、俺がこの世界に来た時に目覚めた高台の広場だ。


「良いけど……どうしてあそこに?」

「だって、あそこは私と勇也が初めて会った場所だから」

「……そうだな」


――――――――――――――――――――


 俺とレインは高台の広場に来ると、そこからウェアークの町を見下ろした。


「なんか、この世界に来た時より景色が違って見える」

「そう?」

「ああ」


 あの時は知らない場所って感じで不安だらけだったけど、今は住んでる場所なんだって安心感みたいなのを感じる。


「なぁレイン」

「ん?」

「まだまだ至らないところもあるけど、これからもよろしくな。仲間として、恋人として」

「ええ」


 俺はレインと手を繋ぐと、レインは目を閉じて顔を近づける。

 それを見た俺はレインが何をしたいのかすぐに分かった。


「ほ……頬で良いですか?」

「ん~……しょうがない」


 レインは不満そうながらも了承してくれると、俺は深呼吸をしてレインの頬にキスをする。

 その直後、レインが一気に顔を近づけ唇を合わせた。


「じゃあ、帰ろうか」

「あ、ああ」


 俺は少し恥ずかしい気持ちを持ちながらも、レインと一緒に屋敷に帰った。

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