誕生、最恐の魔物
「出来たぞ、ジョルクス」
魔方陣を描き終えた遊大はジョルクスに声を掛ける。
「よくやった。しっかり描けてるぞ。最後に、俺を魔方陣の中央に置け。それで仕上げだ」
「ああっ!」
元の世界に帰れるという期待を胸に、遊大はジョルクスを持ち魔方陣の中央に置き、魔方陣から離れる。
「後は念のため……」
ジョルクスは魔方陣の周りを結界魔法で覆うと、魔方陣の起動に入った。
「やった……これで――」
「そこまでじゃ!!」
遊大は振り返ると、そこには勇也達エレメンターと仲間達がいた。
「荒井君!」
「うっ……」
林子の呼びかけに遊大は一歩下がるとジョルクスの方を向く。
「捕まってたまるか。おいジョルクス! 早く時空魔法で俺を元の世界に返してくれ!!」
「時空魔法?」
その言葉を聞いた勇也は、違う世界に行く魔法なのかと予想すると、ジーリュが首を傾げて呟く。
「時空魔法? そんな魔法は聞いたことないが……」
ジーリュの呟きは勇也達に聞こえ何となく理解すると、ヒレアはジョルクスがいる魔方陣に目を向ける。
「何かしら? あの魔方陣」
「知りたいか? ならすぐに教え――」
「そんなのいいから! 早く時空魔法を使ってくれよ!!」
遊大はジョルクスに向かって叫ぶと、ジョルクスは遊大の顔を見る。
「…………はぁ?」
「うぇ?」
「時空魔法? ぷっ、くくく……はっはっはっはっ!! んなもんあるわけねぇだろ、違う世界に行く魔法なんてよぉ!!」
「ああっ……!?」
「これまで俺の手足となって動いてくれたことに感謝するぞ、遊大」
「やはりそうか」
ジーリュの言葉に勇也達も同じ気持ちだった。
遊大はジョルクスに騙され利用されていたんだと。
絶望して尻餅を着く遊大をよそに、ジーリュはジョルクスに問いかける。
「お主の目的は何じゃ? 封印獣を解放し、何をする気じゃ」
「その答えは、今から見せてやる」
ジョルクスが大きく口を開くと、口の中から紫、赤、青、緑、黄色の炎の玉が出てきて、外側にある小さな五つの魔方陣の上にそれぞれ浮く。
「この炎はな……封印獣の魂だ」
「封印獣の魂じゃと!?」
「お前達が封印獣を倒した後、魂を俺の中に封じ込めた。全てはこの為にな!!」
封印獣の魂が魔方陣に吸い込まれると、五つの魔方陣はそれぞれの色に光り、中央の大きな魔方陣にまで伸びていく。
「いかん! あの魔方陣を破壊しなければ――」
「やべぇ事が起こるってか!?」
「んなもん言われるまでもねぇ!」
エンとウィドが火の玉と風の刃をジョルクスに向けて放つが、ジョルクスが事前に張った結界魔法で二人の攻撃が防がれてしまった。
「ちっ!」
「私が結界魔法を解除するわ! 結界が消えたと同時に魔方陣を破壊して!」
「分かった!」
ヒレアを先頭に勇也達は魔方陣に向かって走りだす。
だが、魔方陣に伸びる光は思ったより速かった。
「もう遅い!!」
中央の魔方陣全体に光が伸びると、魔方陣が強く光り、それと同時に覆っていた結界が割れた。
『うあああああああっ!!』
その衝撃で勇也達は吹き飛ばされると、魔方陣から空に向けて光が放たれ光の柱が立つ。
「感じる、感じるぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
光の柱に包まれたジョルクスは宙に浮く。
「さぁ封印獣よ! 俺の血となり肉となり、俺の力となれ!!」
ジョルクスが光ると肥大化し、その姿を変えていった。
光が消えるとその姿を現し、勇也達は言葉を失う。
「なんだよ……これ」
現れたのは、人型の上半身に四足歩行の動物の下半身のケンタウルスのようなシルエットの50メートル程の巨大な怪物だ。
だが一番気になるのは身体を構成している部位だ。
下半身はギガンドス。上半身、顔、尻尾は魔海龍とマグマオロチを合わせた様な赤と青。頭には魔海龍の二本の角とマグマオロチの一本の角。両腕は右腕は皇蟲の鎌、左腕は鋏で、腹部には皇蟲の顔が付いていて、背中にはガロスの二本の剣が角の様に生えていた。
「この姿……まさか封印獣が合体したのか!?」
「ジョルクスめ、これが目的か!」
ジーリュが歯を食いしばると、怪物なったジョルクスは自分の身体を眺める。
「良いなぁ。身体の底から力が溢れてくる。魔法は使えなくなってしまったみたいだが問題ない。封印獣全ての力があれば、俺に敵などいない!」
ジョルクスは自信に満ちて声を上げる。
「魔法が使えない俺はもうジョルクスではない。そうだな……決めたぞ。我が名は……デスキメラ!!」
ジョルクス、改めデスキメラはそう名乗ると勇也達を見る。
「エレメンター。貴様等が封印獣を倒したお陰で、俺は最強の肉体を手に入れられた。感謝するぞ」
「ふざけんじゃねぇぞ! そんな感謝されたくもねぇ!」
「その通りだ。たとえ利用されていたとしても封印獣を放って置くことは出来ないからな」
リューラが刀を抜いてデスキメラに向けて言うと、勇也達も武器を手に持つ。
「ここでお前を止める! 行こう皆!」
『おおっ!!』
エレメンターの皆はエレメントラインを出しデスキメラへ立ち向かった。
「早速だ。力を試してみるか」
デスキメラの背中の二本の角が光ると、角の間に紫の光が集まる。
集まった光が縮小すると、破裂するように広がり衝撃波が放たれた。
『ぐあああああああっ!!』
衝撃波に勇也達は吹き飛ばされ、周囲の木々も吹き飛ばされて行く。
吹き飛ばされた勇也達は気を失い、エレメントラインも消えてしまった。
「はっはっはっ! 流石の力だ! ……さて。世界中に俺の力を見せびらかすとするか。ここから一番近い町は……ウェアークだったな」
デスキメラは気絶してる勇也達を尻目に、ウェアークへと足を進める。




