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エレメンターズ  作者: 至田真一
集まるエレメンター 前編
10/202

重傷の氷少年

「はぁー」


 調理中、冷えた手に俺は息を吐いた。


「なんか寒くなってきたな」

「ヒョドの村が近いからのう」


 次の目的地であるヒョドの村は雪原地帯に近い為、結構寒いらしい。

 確かに遠くに白い山が見える。あれ雪かな?


「そろそろいいかな?」


 鍋を混ぜるのを止めて、オーコの村で買った野菜とミルク、お礼で貰ったバファロの肉で作ったシチューが出来るとアルツが覗き込んだ。


「お、美味そうだな」

「寒いし、これが良いかなと思って」


 食器にシチューを入れて皆に配った。


「はぁ~あったかくて美味しい。私寒いの苦手だし」


 隣でシチューを口にしてレインが言う。

 寒いのが苦手なのには同意するけど、レインの場合、露出あるその服装が原因だと思う。


「皆よ。食べ終えたらコートを着ておくのじゃ。ヒョドの村はここより冷えるぞ」

「まだ寒くなるのは嫌だなぁ」


 俺がそんなことを嘆いている中、エンが鍋の中を見る。


「おい勇也。シチューもう無ぇのか?」

「え? まだあるはずだけど、もう無いの?」


 鍋の中を見ると、空っぽになっていた。

 変だな。皆に渡した時は半分ぐらいあったはずなのに。


「えぇもう無いの!? まだ食い足りねぇよ」


 アルツが文句を言ってるけど、無いものはしょうがないよ。


「またおかわりしたかったのに」

「また?」


 食べ始めてそんなに時間経ってないはずだから、おかわりする時間はあまり無いはずだけど。


「先程から、アルツ様がシチューを沢山口にしておりました」


 やっぱお前かよ。どんだけ食ったんだよあの短時間で。

 なんか食料の量問題が出てきた気がする。

 食べ終えた後、俺達はコートを着て馬車に乗ってヒョドの村を目指した。


――――――――――――――――――――


 馬車に揺られて一時間以上、遠目に村が見えた。


「あれがヒョドの村じゃな」

「うわぁ、雪積もってるじゃん。本当に寒そう」


 東京育ちだから雪は積もる所は積もってたけど、それよりも積もってるな。

 村に入るとまずいつも通りに馬車を預けてエレメンターの情報を聞いた。


「エレメンターですか。んー……」


 宿の店主の男の人は何か言いづらそうにしている。


「もしや、この村にはもう居らぬのか?」

「いえ、そうではないんですが……。実は先日、近くで崖崩れが起きて……それに巻き込まれそうになった村人を助けて、代わりに彼が巻き込まれてしまい……」

「なんじゃと!?」

「幸い命に別状はなかったらしいんですが、酷い大怪我をしたと聞きました」


 その話を聞いて俺達は驚く。

 大怪我って……。命に別状は無くても大丈夫なのか!?

 俺達は家の場所を聞いて急いで向かった。

 正直、あんな話を聞いた後だと不安が募る。話によると、その事故の後昏睡状態でまだ目を覚ましていないみたいだし。


「ここじゃな」


 頭の上に乗っているジーリュが言い、教えられた家に辿り着いた。

 家の前に立ちドアをノックする。……が、一向に返事が無い。


「誰もいないのかな?」

「留守なんじゃねぇか?」


 もう一度ノックしようとすると、ドアがゆっくり開いて白い髪の40代ぐらいの男の人が顔を出した。


「誰だ?」


 男の人は眠そうな目で俺達を睨むと、視線を上げて俺の頭の上のジーリュに気付き、目を大きく見開いた。


「ジーリュ!? それにヒレアも! では、この者達は……」

「うむ。この者達は当代のエレメンターじゃ」

「やはりそうか! ……だが、来てもらって悪いが」

「話は聞いておる。氷のエレメンターが大怪我したと」


 ジーリュの言葉に男の人は視線を下げた。

 その後俺達は男の人、ヒョーガさんに案内されて家の中に入ると、一つの部屋に案内された。

 部屋の中には、ベッドに横たわっている白い髪の少年がいた。


「息子のフィーズだ。事故からずっとこの状態だ」

「命に別状はないと聞いたが」

「ああ。だが両腕の怪我が特に酷く。医師の話だと……もう両腕は使えないと言われた」

「そこまでか……」


 ジーリュは暗い声で嘆く。

 俺達は手から光とか水を出すから、両腕が使えないのは致命的だな。


「それで今、両腕の代わりになる義手を作ってるんだが……苦戦してな。なんせ作るのは普通の義手ではないからな、ここしばらくまともに寝れていない」


 だから眠そうな目をしてるんだ。


「ところで普通じゃないって?」

「エレメントの力を使える義手でないといけないんだ。そこが難しくてな、何度も頭を悩ませている」


 エレメントを使える義手か。そういうの詳しくないから何とも言えないな。


「あの、義手の設計図ってありますか?」

「ああ、あるぞ」


 ライデンがヒョーガさんに聞くと、義手の設計図を持ってきた。


「ん~……。これなら、エネージ鉱石があれば作れるな」

「エネージ鉱石……成程。確かにあの鉱石の特性なら」


 なんか理解してるみたいだけど。


「ねぇジーリュ、エネージ鉱石って?」

「エネルギーを溜め込む力を持った鉱石じゃ。魔力だけではなく、エレメントの力も吸収することが出来てのう。それを使った武器に、これまでのエレメンター達は苦労しておった」

「ああ。あれは手ごわかった」


 ヒョーガさんが嫌そうな顔で言う。

 そんなのがあるのか。気を付けよう。


「クロエ用のがあるんだけど、足りるかな?」

「あ。もしかして、火を溜められるパーツを造るのに必要って言ってた特殊な鉱石って……」

「ああ、エネージ鉱石だ。クタガラの近くの鉱山でたまに採れるんだけど、今持ってる分だと……足り無さそう」


 たまに採れるって言ってるし、そんなに持ってないのかも知れないな。


「エネージ鉱石なら、村から少し離れた洞窟で採れるはずだ。……だが最近、その洞窟の入り口付近にゴーレムが住み着いていると聞いたな」

「ゴーレムですか。大丈夫です、必ず持ち帰ってきます」

「すまないが任せた。待っている間、私は出来る限り義手の製作を進める」


 俺達は洞窟の場所を聞くと、村を出てその場所へ向かった。

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