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エレメンターズ  作者: 至田真一
力を貰って異世界へ
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不思議な空間で

新作です。どうぞ見ていって下さい。

「それでは皆さん。気を付けて帰って下さい」


 二年一組の教室で帰りのホームルームが終わり、担任の先生が教室を出ると、俺――光野勇也は体を伸ばした。


「おーい勇也」

「ん?」


 声を掛けられて振り向くと、二人の男子生徒と一人の女子生徒が俺の所にやって来た。

 真面目な優等生の火之浦厚。大柄な体育会系の土田大貴。おさげヘアーをした水崎美奈。

 俺達四人は幼稚園からの幼馴染だ。


「どうしたの?」

「今度のゴールデンウィーク、皆で何処か遊びに行こうって考えてるんだけど勇はどう?」

「あー、良いね」


 今は四月の下旬だから、ゴールデンウィークまであと一週間ちょっと。

 時期的に良いかもしれない。


「でも何処かって何処?」

「それはこれから決めるんだ」


 じゃあ今は何処かに行こうって考えてるだけか。

 すると大貴が俺の肩にバンッと手を乗せた。


「よし! 今日は部活ねぇし、皆でゲーセンに行こうぜ。なぁ兄弟」

「誰が兄弟だ」

「何を言う。幼稚園からの付き合いの俺達は、兄弟も当然だろ」


 大貴のこういうノリはちょっと苦手だ。


「ゴメン。俺これからスーパー行かないといけないから」

「今日も両親帰るの遅いの?」


 美奈に聞かれて俺は頷いた。


「んっ、なら仕方がない」

「そうだね。また誰かの家で食事会をしようよ。この間は僕の家でやったから今度は三人の誰かの家で」

「良いわね」

「別に良いよ」


 俺達の家は近所同士だから親同士も仲が良いし、たまに誰かの家で食事会をする。


「俺そろそろ行くよ。今日特売だし」


 俺はカバンを持って教室のドアに向かった。


「じゃあね勇。また明日」

「ああ、また明日」


――――――――――――――――――――


 学校を出て何を買おうか考えながらスーパーへ向かっていると、母さんから電話がかかってきた。


「え? 仕事がキャンセル? それで帰ってきたって……はぁ~」


 早く言ってほしかった。そうすれば俺も厚達と一緒にゲーセンに行ってたのに。


「そういうことなら、俺スーパーに寄らないで帰……え、買い物はしてほしいって……」


 仕事早く終わったんなら買い物に行ってほしかったよ。


「分かった。じゃあ食材買って帰るよ。うん……え、だから気になる子なんていないって! それじゃあ」


 俺は電話を切るとスマホをポケットにしまった。

 孫が早く見たいからって好きな子がいるかどうか聞かないでほしい。初恋でさえまだなのに。

 少しイラつきながら信号を待っていると、後ろの方から大きなエンジン音が聞こえて振り向くと、反対側の道路の奥に少しフラつきながら猛スピードを出している車が見えた。


「うわっ、なんかヤバそう」


 車はフラフラとフラついていると、急に曲がって俺がいる歩道に向かってきた。

 俺は危険だと思って逃げようとした。

 すると、車の先に小さな男の子が歩いているのが見えた。

 少し離れた後ろには、母親らしき女性が車に気付いて走りだすが、距離的に間に合いそうになかった。

 女性よりも近くにいた俺は、カバンを放り投げて男の子の元に走った。

 俺は男の子を抱えるが、もう車はすぐそこまで迫っていた。

 このままだと一緒に巻き込まれると思った俺は、近くまで走ってきた女性に向かって男の子を投げると、女性は男の子をキャッチして尻餅を着いた。

 これであの子と母親は大丈夫だ。でも車は目の前まで迫っていた。

 ……すると。


『君が良さそうだ』

「え?」


 頭に誰かの声が聞こえた次の瞬間、俺の視界は真っ黒になった。


――――――――――――――――――――


「うう…………」


 俺は目を開けて立ち上がると、何故か俺は真っ白な空間にいた。


(何処だ、ここ?)

「目が覚めたかい?」


 後ろからそんな声が聞こえて振り向くと、そこには白金の胸当てを身に付けていて、アイドルグループにいそうな顔立ちの大学生ぐらいの金髪の青年が立っていた。


「僕の名前はライトス。初めまして、光野勇也君」

「え? は、はぁ……」


 どうして俺の名前を知ってるんだ?


「さて、君も色々疑問があると思うけどまず、残念ながら君は死んでしまった」

「……」


 やっぱりそうなのか……。

 じゃあここはあの世か?


「次に、ここは僕の力で作った異空間。君が死んでしまった時、君の魂をここに呼んだんだ。だから君の今の姿も肉体ではないんだ」

「そう、なんです、か……」


 道理でなんか体が軽いようなフワフワすると思った。


「それじゃあ、本題に入ろう。光野勇也君」


 ライトスは真剣な顔で口を開いた。


「僕の力を受け取ってほしい。そしたら君を僕の世界へ生き返らせてあげる」

「え……?」


 突然の頼みに俺は困惑する。


「僕は君が住んでいる世界とは違う世界、異世界と言った方が良いかな? そこの住人なんだ」


 異世界。漫画や小説ではよく聞くけど、まさか実際に聞くなんて。


「僕の世界には『エレメント』と呼ばれる特別な力があってね。そのエレメントを持つ人物を『エレメンター』と呼ばれているんだ。その中で僕は最強と言われている光のエレメントを持つ光のエレメンターなんだ」

「成程。……それで、どうして俺に受け取ってほしいって?」

「……実は僕も、君と同じで死んでいるんだ」


 俺はそれを聞いて驚く。この人も死んでいるのか。


「ある戦いで僕は命を落としてね。でもエレメントの力は血筋と同じで、エレメンターが死ねばそのエレメントも消えてしまう。どうしてもそれだけは避けたかった僕は、死の間際に自分の魂と光のエレメントを融合させたんだ。そして気が付くと、君の世界にいた」


 よく聞く転生の逆みたいだな。


「その後僕は、光のエレメントを受け継ぐにふさわしい人を君の世界で探したんだ。20年もね」

「20年!?」


 俺が生まれる前から、この人は俺の世界にいたのか。


「そして君を見つけたんだ。危険を(かえり)みず、子供を助けた君をね」


 やっぱり、あの時聞こえた声はこの人か。

 受け取ったら生き返らせてくれるんだよね。この人の世界でだけど。

 でも受け取る力が最強って……大丈夫なのかな? そんなのを受け取って。

 俺が悩んでいると、ライトスさんは真剣な顔で口を開いた。


「本音を言ってしまえば、僕は受け取ってほしくないんだ。もしかしたら危険な目に遭うかもしれないから、無関係な君をあまり巻き込みたくないんだ」


 俺はライトスさんの顔を見て、その言葉に嘘偽りが無いことがなんとなく伝わった。


「……受け取ります。貴方の力」


 俺はそう答えると、ライトスさんは驚いた表情をする。


「いいのかい?」

「はい。貴方がその力を残さないといけないって必死さも伝わりましたし。それに一回死んだ身ですから、多少の危険も怖くないですよ」

「……強いね君は。分かった」


 ライトスさんの掌に光の球が現れると、俺に向かって飛ばし、光の球は俺の中に入っていった。


「それじゃあ頼んだよ、勇也君」

「はい」


 ライトスさんの姿が薄くなると、周囲が強い光に包まれ、意識が再び飛んだ。

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