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世にも奇妙な『悪辣姫』の物語  作者: 玉響なつめ


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幕間 その頃、外で待つ者たちは

「アレン大丈夫かなあ」


「大丈夫でしょ、アレンだし」


 イザヤとアンナがそんなことを零すが、どちらも浮かない表情を浮かべている。

 パーティーの会場には一定の貴族位を持つ者しか入ることを許されず、警護は王城の騎士たちによって厳しい目が光っているために様子を覗きに行くわけにもいかない。


 二人は辺境伯夫妻の部下であるということから、彼らの控え室に滞在することを許されてはいるが……それだけなのである。


「はあー、奥方様、お辛い目に遭っていないかしら……」


「パトレイア王国の国王夫妻も来ているんだろう? それが心配だよなあ」


「そうよね……アレンがブチ切れてまた騒ぎを起こしてないといいけど」


「そうだな、そっちの方が心配だな。いや、それに加えてうちの第三王子もいるからな……」


「あー」


 何かとアレンデール相手に競い合ってくる第三王子は、イザヤとアンナの目から見てただただ甘やかされたイイトコロのお坊ちゃんにしか過ぎない。

 アレンデールが武力を磨いたのは経験に劣る貴族としての振る舞いを補うものであって、それが彼なりの、辺境伯として周囲に認めてもらう手段であったことを彼らはよく知っている。


 それを理解せずにただ『強者である』ことだけに目を向ける王子は、自身の方が才に優れていると言い放ち真っ向からただ馬鹿正直に突っかかってくるだけなので、決して危険な存在ではなかった。王子個人だけであれば。


 ただ王子という身分、それが時としてアレンデールを傷つける棘となることもあるだろう。

 それがイザヤには心配でならないのだ。


(今やアレンデールはモレル領にとってなくてはならない存在だ。ヘレナ様という伴侶を得て、より精力的に良い領主になろうとしているけど……同時にヘレナ様の存在が、アイツにとっての弱点にもなり得る)


 噂のような悪辣な女性でなかったこと、博識で思いやりのある、むしろ王家では酷い扱いを受けていたことに同情すら覚えてしまうような姫君だったヘレナに対し、イザヤもアンナも好意を抱いている。

 だが、幼馴染であり、自身が仕える相手であるアレンデールの方が大切なのだ。

 そのアレンデールがヘレナを大事に思っているからこそ、ひっくるめて大事に守りたいと思っている。

 ただし、最悪のパターンでどちらかの命を選ぶとするならば、イザヤもアンナも迷わずアレンデールを選ぶだろう。友情と忠誠は、彼にある。


「奥様は社交に不慣れだからな……」


「それでも、アレンよりはマシだと思うわ」


「それはそうだろうけど」


「……今はそんなこと考えずに、あの二人が戻ってくるの待ちましょうよ」


「……そうだな」


 あの二人が傷つく前に、それら全てから守れたら一番だ。

 だが身分高き者や、彼らの幸せを妬む者たちは後を絶たない。


 ようやく互いに安心できる相手を見つけた幼馴染と、哀れな姫君を思うとどうしてもイザヤは落ち着かないのだ。

 そんなふうに落ち着かずにうろうろするイザヤをアンナは呆れた目で見つつ、いざ(・・)という時に使う隠しナイフの手入れを始めるのだった。


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