第17話 昼休み、お弁当タイム
よろしくおねがいします。
昼休み、また楓が話しかけてきた。
「ねえ、久方君。少し話に付き合ってくれないかな?」
「俺は構わないけど、あれは良いのか?」
視線を女子に囲まれてる瀬貝に送る。
とうやら伯東が居ない間にお近づきになろうと他の女子達が狙っているようだ。
「別に良い」
「そう、なら場所を移すか」
「学食行く?」
「いや、別の所だけど良い?」
俺が確認を取ると帰る楓が頷く。
話をするなら落ち着いたところのほうがいいだろう、幸いボッチ飯をしていた諒也のおかげで人のあまり来ないスポットは知っている。
俺は裏庭の園芸部が管理してる花畑にあるベンチに向かう。
基本的に裏庭は放課後の園芸部くらしか使わないないので穴場だ。
「こんな場所あったんだ」
そう言って楓が少しだけ嬉しそうな表情をする。
「気に入ってくれたようで良かった」
俺はベンチに腰掛けると美子さん特製のお弁当を開く。
「……久方君のお弁当美味しそうね」
俺の隣に座ると楓が覗き込んでくる。
「ああ、母さんの料理は絶品だな」
「……よかったらおかず交換しない」
つばを一度飲み込み、期待に満ちた目で俺を見てくる。見た目と話した感じはクール系かと思っていたが食べ物には目がないらしい。
「いいけど、楓さんもお弁当?」
「うん、自分で作ってる」
そう言って楓も自分のお弁当を開く、覗き込むと色とりどりで健康にも気を遣っていそうな、美味しそうなお弁当だった。
「それじゃあ、これもらっても?」
俺は悪いかなと思いつつも美味しそうな唐揚げを指す。
「うっ、久方君、中々の鬼畜野郎ね……なら私はこれが欲しい」
楓は俺のお弁当から美子さん特注の逸品、ウインナーソーセージを指名する。
「楓さんの方こそ、まさかそれを迷いなく選ぶとは」
「うん、普通のより太くて美味しそう」
「肉汁たっぷりの逸品だからな、それを味わうと普通のじゃ満足出来なくなるぞ」
実際に美子さん特注のソーセージを食べると市販のものじゃ満足出来なくなる。何でも知り合いにわざわざ配分まで指定して作ってもらってるらしい。
俺も初めて食べたときは驚いた。
「それは楽しみ。それでは遠慮なく、いただきま~す。あむっ」
楓が俺のお弁当からソーセージをつまみ口に運ぶ。その瞬間綺麗な青色の瞳が大きく見開かれると次には蕩けた表情に変わる。
「どうだ美味しいだろって、聞くまでもなかったな。そんなに美味しそうに頬張って」
「んぐっ、んぐっ、もグッ………驚いた全然違う、こんなに美味しいのは初めて、もっと欲しい……ってごめん、はしたなかった」
そう言って教室では見たことないしゅんとした表情の楓。美人にこんな顔されたら何もしてないのに悪い気がしてくる。
「……しょうがないな、もっとやるよ、んっ」
そう言って俺は弁当を差し出す。
楓は驚いた顔をすると、すぐに嬉しそうな表情に変わるとソーセージをためらわず頬ばった。
「んっ、むぐッ、んぐぅ……やばい、これ癖になる味」
美味しそう食べる楓を見ながら、俺も指定した唐揚げを頂く。
「いやいや、楓さんのこれも美味いぞ、驚いた」
確かに取られるのを嫌がるのは分かる。
「うん、練習したから配分とか結構考えてある」
少し自慢げな表情の楓。こうして見ると僅かだが色々な表情を見せている事が分かる。
思ったよりとっつきやすい性格なのかもしれない。
その後も定番の卵焼きを交換して食べ比べしたりして昼食を楽しめた。
お弁当を食べ終えて少し休んで、最初の目的でもあった楓の話を聞くことにした。
「それで話って?」
「うん、その勇人のこと、というより幼馴染の事かな」
要領の得ない言葉に首を傾げる。
「どういうことだ?」
「あのさ、久方君って伯東さんのこと好きだったんだよね?」
直球な質問に即答で答える。
「ああ、だったの通り、もうそう言う感情はないけどな」
「……そんなに早く切り替えられるものなの?」
うっ、痛い所をついてきた。こちらを探るような質問にも思える。前にも思ったがやはり楓は俺と同じ転生者なのだろうか?
「……簡単ではなかったよ、ただそれ以上に価値観を変える出来事があったから」
「……死にかけたんだよね。確かにそれに比べたら恋愛の悩みなんて些細なものかもね」
「些細ってほどでもないけどな、それ以上に自分自身を見つめ直す良いきっかけになったのは間違いない」
「そっか……私ね夏休みに勇人に告白されて、一度勇人のこと振ったの」
思いがけない告白。しかし時系列的におかしい。
伯東と瀬貝が付き合い始めたのは夏休みだったが、その前にはキスをしていた。
それにも関わらず楓にも告白していたということだろうか。
俺は状況が把握できないまま思ったことを楓に尋ねる。
「えっと、もしかして断ったことを後悔しているのか?」
「うううん、勇人は幼馴染だけどそう言う感情は無いから、というより他の人にもそう言う感情は抱いたことないかも」
そうなるとますます何を聞きたかったのか分からなくなる。
「それじゃあ、何が知りたかったんだ?」
「勇人がね、しきりに言うんだよ伯東さんは彼女でも、幼馴染の私は特別だって……実際伯東さんにとっても貴方は特別みたいだったから、でも今聞いた話だと久方君にとって伯東さんはもう特別じゃないんだよね」
伯東にしろ瀬貝にしろ、どうしてそこまで幼馴染に拘るのか分からない。諒也にしてもそうだ、あいつにとっても伯東は特別だった。そう考えると俺に近い感覚の楓は転生者じゃないかとの疑念が拭えなくなる。
「そうだな、今は特別じゃない。でも楓さんは本当に何も感じないのか? 瀬貝と伯東が一緒に歩いてたら、こう胸がモヤモヤするとか?」
本当に俺と同じか確認して見る。
「無いわね。むしろ勇人は私に干渉しすぎだと思ってるくらいだし」
答えはやはり俺と近い考えだった。
ただ楓が転生者だとしても今した話の意図が掴めない。
「それで、俺にこんな話をしてどうしたかったんだ?」
俺は腹の探り合いは止めて正直にきいてみた。
「んっ? 確認したかっただけ。周りが同じ価値観に支配されている中で異を唱えれば、たとえそれが本来正しくても異端となるでしょう」
楓が難しい事を言ってくるが理解は出来た。
「で、楓さんの考え方はおかしいと思うか?」
「少なくとも幼馴染は絶対的な特別じゃないって思ってる人がいることが分かって安心した」
「奇遇だな。俺もだ」
「ふっふ、そっかすごい偶然だね」
そう言って笑った楓の笑顔はとても綺麗だと感じた。思わず見惚れてしまうほどに……。
その後、教室に戻った俺は物凄く瀬貝に睨まれた。うーん、瀬貝とは一度ちゃんと話し合った方がいい気がしてきた。
今度時間をとって説明させてもらおう、そう決めて午後の授業に集中した。
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