7. 従騎士と忙しい早朝
まだ早朝だがシルヴィオの従騎士の朝は早い。しかも、最近は特に忙しくなってきた。
「ヴィアン、次はこっちのを頼む。あと、セルビンにこれを渡してきてくれ」
「は、はい!」
(でも嬉しい。少しは頼ってもらえてるってことだから)
レイーシアは信頼を得られたのではないか、と嬉しく思っている。もしかしたら、忙しすぎてやむを得ず仕事を振っているだけなのかもしれないが。そんなことを考えながらセルビンを探しに行く。
いつも外にいることが多いため会えないかと思っていたが、すぐに合うことができた。
「おはよう御座います。セルビンさん。これを届けに来ました」
「ああ、ありがとうございます」
セルビンが書類を受け取りながらクスリと笑った。
レイーシアは首を傾げながら聞く。
「どうかしましたか?」
「ヴィアン君が嬉しそうだな、と」
「えへへ、シルヴィオ様に頼られるようになってきたかなと思って」
レイーシアは少し頬を染め、照れながら答える。
「良かったです」
セルビンは、そう呟くように言うと、レイーシアの頭をふんわりと撫で始めた。優しく、いたわるような手付きだ。レイーシアはそんな突然の行動に驚く。
「あの…なんで頭なでるんですか…?」
セルビンは困ったように笑いながら答える。
「いえ、その…。貴方もあの方の被害者だと思うとつい……。気にしないでください」
(あの方…?被害者…?)
レイーシアはセルビンに言葉の意味を尋ねようと口を開きかけたが、
「では、忙しいのでもう行きますね」
「は、はい」
セルビンはあっさり去ってしまった。
その時、後ろから元気な声が聞こえる。
「ヴィアンさーん。おはよう御座います!」
「コレッタ、おはよう」
突然、コレッタがレイーシアの顔をじっと見つめ始めた。
「ど、どうしたの?コレッタ」
「あ、ごめんなさい、じっと見たりして…。いつもよりも、少し嬉しそうに見えたので」
コレッタが顔を赤らめ、慌てながら答えた。その時、はっと思いついたように言う。
「そういえば、あれからゲイルは何もしてきていませんか?何かあればすぐにいってくださいね!私が注意しておきます!」
「大丈夫だよ。何もされていないから。コレッタだってそんなに悪いやつじゃないって言ってたでしょ?」
「そうですけど……。その、周りが、見えなくなってる時があるっていうか…」
(やっぱり仲はいいのかも…)
「でも、心配してくれてありがとう」
「はっ…はい」
レイーシアが少しはにかみながらお礼を言うと、コレッタは、ポッ、と可愛らしく赤くなった。