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23.従騎士と昔話

 「ヴィアンさん?」

 「どうしたの?コレッタ」


 そのまま、じっとコレッタに見つめられる。


 「あの?コレッタ?」


 コレッタが、夢から覚めたように、ハッとして答える。


 「ごめんなさい。なんでもないんです。数日前にヴィアンさんと似た人物を見かけて……。そ、そんなことより、ゲイルのことなんですが」

 「何かな?」


 数日前、ゲイルから、決闘のようなものをうけ、よくわからないが、祭りの日の朝、ゲイルと勝負することになってしまったのだ。

 (絶対に、負ける……)

 シルヴィオの従騎士としては、不甲斐ないところを見せたくはないが、今まで鍛錬を重ねてきたゲイルに、付け焼き刃のレイーシアが勝てるとは思えない。

 コレッタが、申し訳無さそうに続ける。


 「ゲイルは、普段は悪い人ではないんです。ただ、シルヴィオ様の事になるとどうにも暴走してしまうみたいで……」


 レイーシアは、以前にレイーシアが来なければ、ゲイルがシルヴィオの騎士となるはずだったことを思い出す。一生懸命鍛錬していた最中、突然、よく分らないやつに自分の目指していたものを獲られたのだ。

 つまり、ゲイルの焦りや苛立ちは自分せいでもあるのだ。

 レイーシアは、少し罪悪感を感じる。

 (せめて、一生懸命相手をしなきゃ)

 そうする事で、ゲイルの鬱憤が少しでも晴れるのならば、と思う。


 それに、今まで何かと突っかってきたゲイルにシルヴィオの従騎士であると、認めてもらうチャンスでもあるのだ。別に認めて貰えなくとも、少しでも、自分の思いが伝わればいいと思う。


 「大丈夫だよ、コレッタ。でも、それまで少しでも強くならなきゃね」


 (あっ!)

 レイーシアはここで、大事なことを思い出したのだ。


 「祭りっていつ……?」


 祭りの日を知らなければ、練習もなにもない。というか何故、祭の日に?


 「祭りなら、今から一週間後です。今シルヴィオ様が、かかりっきりなのも、その仕事なんじゃないですか?」

 「確かに、そういったものがあったような……」


 レイーシアは、記憶のそこから祭りの情報を引っ張り出す。シルヴィオが今、領地をまわっているのは、その関係だったようにも思える。シルヴィオは昨日帰ってきたばかりなのに忙しそうで、少し心配だ。

 レイーシアは、そのあたりにまだ、あまり詳しくないため力に慣れないことに申し訳なく思う。


 「えっと、収穫祭みたいなものだったよね?」

 「はい、建前は」


 コレッタが、いたずらっぽく笑う。


 「丁度、収穫の時期と被ってるのでそういう事になってますが、実のところ、好きな相手に想いを伝える日って感じですね」

 「そうなの?」


 ――好きな相手に想いを。

 つい頭に、シルヴィオの顔が浮かんでしまう。


 「本当の話かはわからないんですけど――」


 コレッタがゆっくりと話始める。


 昔、この地に住んでいた貴族の男がある女性の事を好きになるんです。この女性はとてもきれいで優しい女性でした。二人は結婚して、愛し合って暮らします。

 しかしある時、ちょっとした不注意で、男が窓から落ちてしまいます。その時、女性は鳥の姿となり男の事を助けるのです。

 その後、男は鳥となった女性を引き止めることが出来ませんでした。鳥は哀しげな顔をして飛んでいってしまいます。そのまま帰ってくることはありませんでした。


 「――大体、こんな感じの話ですね。この話みたいに好きな人の姿が変わっても愛し、逃してはいけませんよ、みたいな感じでみんな告白するんです」

 「何ていうか……悲しい話だね」


 そこでコレッタが真剣な顔をする。


 「ヴィアンさんは、シルヴィオ様に告白、しないんですか!」

 「え……」


 (シルヴィオ様に、告白……)

 レイーシアは意味を理解すると、驚きと同時に、一気に、顔を赤くする。


 「な、何を言って……」

 「手伝えることがあれば、何でも言ってくださいね!」


 コレッタが、満面の笑みでそう言った。

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