#2. 潜入者は苦労する
これも番外編みたいなかんじです。
次は、普通のに戻るつもりです。
セルビンは、シルヴィオの執務室の扉の前で、聞き耳を立てていた。
珍しく、シルヴィオとレイーシアが言い合いをしているようなのだ。
(何かあるようだったら、アスタリア様に報告する必要がありますから)
場合によっては、イロイロとしなければならない。アスタリアの願いは、二人が上手くいくことだ。
(最近、少し距離を縮めていたように思ったのですが…)
少し耳を近づけると、とぎれとぎれに会話が聞こえてくる。
「ですが―、私にも――」
「だが、―――だ。それにお前は――だろう」
「私ではダメ―――うか?」
セルビンは上手く聞き取れず、イマイチ意味が読み取れない。
セルビンは仕方なく壁に耳を押し当てる、と今度はよく聞こえ始めた。
「お前にこれ以上無理をさせるわけには…」
「いいです!私は大丈夫です!」
シルヴィオの渋る声と、レイーシアの張り切った声が聞こえる。
「それに、このままでは大変ですよ」
「それは……」
珍しくシルヴィオは言い淀んでいる。
(この人たちは一体何の話を……?)
「だが、…今夜は眠らせてやれなくなるぞ」
「望むところです!その…出来るだけ、頑張ります」
何でも一生懸命なレイーシアがらしくない返答だ。
室内の空気が張り詰めている。
(止めに入ったほうがいいだろうか……?)
「…今からやるか」
「え……!……確かにそのほうが、いいですね…」
「無理そうなら、言ってくれ。無理はしてほしくない」
セルビンの背中に冷たい汗が流れ落ちる。
(アスタリア様は仲良くなってほしいと言っていたが、ここまでは……)
「出来るだけ、俺が頑張ろう。ヴィアンは楽にしてくれ」
「は…い」
レイーシアの緊張した声がする。
「~~ッッ!」
セルビンは我慢できなくなり、バンッ、と勢いよく扉を開ける。
その瞬間、
―レイーシアの持っていた大量の紙の束が宙に舞った。
大量の紙の束、疲れた様子で座っているシルヴィオ、驚き顔で立っているレイーシア。
「ん……?」
セルビンは思っていたのと大分違う室内の様子に軽く混乱する。
「セルビンさんでしたか。ビックリして書類を床にばら撒いてしまったじゃないですか!」
レイーシアがプンプンといった様子で、可愛らしく怒りながら書類を拾い集める。
「それは、すいませんでした」
よくわからないが、混乱していたセルビンは取り敢えず謝ってしまう。
「でも、セルビンさんにも手伝ってもらえれば、なんとかなるかもしれませんね!」
「何とか……?何がですか?」
「この山積みの書類だ。明日じゅうには王都に送らなければいけないんだが、まだ大半が出来ていない」
シルヴィオが、セルビン疑問に書類のタワーを指差しながら答える。
「なるほど。先程はこれの話を―」
「というわけで、だ。セルビン、お前はヴィアンの分までこれをやれ」
そう言われて差し出されたタワーが今にも崩れそうだったからか、あるいは過重労働に対する恨みか、セルビンの手が震える。
明日は、アスタリアから王都へのお呼び出しがかかっている。睡眠をしっかりとり、体を休め、明日に備えなければならない。アスタリアの相手をするのは、多くの体力が必要だからだ。
(主人が二人いれば、仕事も二倍…。レイーシア様には悪いですが、逃げるしか……)
「私は、今日は―」
「ありがとうございます。本当に良かったです。セルビンさんが来てくれたから、無事に間に合いそうです」
レイーシアが嬉しそうにニコニコと笑っている。
無邪気に逃げ道を阻まれたセルビンは、諦めて覚悟を決める。
(明日自分で持っていけば、丁度いいですね………はぁ)
冒頭のアレですか………。
ごめんなさい、一回やってみたかったんです!
誰だって一度は書いてみたいですよね!!勘違いさせにいく感じの文章。流石に勘違いする人はセルビンだけかも知れませんが。