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ゆきおんなの恋

作者: さなゆき
掲載日:2021/02/05

 バレンタインデーには、忘れられない思い出がある。


 スキー場でバイトをしていた時、一緒に働いていた子。


 色白で、長い黒髪の『有希(ゆき)』は、目立たない子だった。


 すごく美人だったけれど、田舎のスキー場ではそこまで目に入ることも無かったらしい。


 俺だって時給の良さと、泊まり込みで温泉入り放題に魅かれなければ行かないような所だ。


 大学二年生の冬。金に困ってバイトをしたのだが――。


「スマホ圏外!? コンビニも車で十分!? 僻地(へきち)にも程がある!」


 そんな所で二か月――。やっていけるのか不安だった。


 そんな時に声を掛けてきたのが、有希だ。


「あの、大丈夫ですか?」


 一目で、惚れた。


 それから、バイトの最中は彼女と過ごすことが多くなった。

 口数こそ少なかったが、聞き上手な彼女といると心が和んだ。


「じゃあ、生活費のためにここに……?」

「あぁ。君は、どうしてここにバイトに来たの?」


 何気なく質問してみたが、返答はなく。笑顔ではぐらかされるだけだった。


 二月がきて、バイトの期間がそろそろ終わるというある日。

 有希から、ナイトスキーに誘われた。


「珍しいね、君から誘ってくるなんて」

「そうですね、そうかもしれません」


 しばし、夜のスキーを楽しんでいたら、天候が荒れてきた。

 さすがに帰ろう、と言うと、彼女は手を握ってきた。


「今日は、好きな人にチョコを渡す日なんですよね?」


 そう話す彼女の手は、手袋越しでも分かるくらい冷たい。


「私、北の方に帰らないといけないから――」


 吹雪に紛れる彼女。白い服が、雪で見えない。


「さようなら、好きでした――」


 その言葉を最後に、彼女はたちまち姿を消した。

 手には、チョコの箱が残されていた。


 一粒口にすると、氷のように冷たく、ほろ苦かった――。

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