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ゆきおんなの恋

作者: さなゆき

 バレンタインデーには、忘れられない思い出がある。


 スキー場でバイトをしていた時、一緒に働いていた子。


 色白で、長い黒髪の『有希(ゆき)』は、目立たない子だった。


 すごく美人だったけれど、田舎のスキー場ではそこまで目に入ることも無かったらしい。


 俺だって時給の良さと、泊まり込みで温泉入り放題に魅かれなければ行かないような所だ。


 大学二年生の冬。金に困ってバイトをしたのだが――。


「スマホ圏外!? コンビニも車で十分!? 僻地(へきち)にも程がある!」


 そんな所で二か月――。やっていけるのか不安だった。


 そんな時に声を掛けてきたのが、有希だ。


「あの、大丈夫ですか?」


 一目で、惚れた。


 それから、バイトの最中は彼女と過ごすことが多くなった。

 口数こそ少なかったが、聞き上手な彼女といると心が和んだ。


「じゃあ、生活費のためにここに……?」

「あぁ。君は、どうしてここにバイトに来たの?」


 何気なく質問してみたが、返答はなく。笑顔ではぐらかされるだけだった。


 二月がきて、バイトの期間がそろそろ終わるというある日。

 有希から、ナイトスキーに誘われた。


「珍しいね、君から誘ってくるなんて」

「そうですね、そうかもしれません」


 しばし、夜のスキーを楽しんでいたら、天候が荒れてきた。

 さすがに帰ろう、と言うと、彼女は手を握ってきた。


「今日は、好きな人にチョコを渡す日なんですよね?」


 そう話す彼女の手は、手袋越しでも分かるくらい冷たい。


「私、北の方に帰らないといけないから――」


 吹雪に紛れる彼女。白い服が、雪で見えない。


「さようなら、好きでした――」


 その言葉を最後に、彼女はたちまち姿を消した。

 手には、チョコの箱が残されていた。


 一粒口にすると、氷のように冷たく、ほろ苦かった――。

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