第6話 仲間。修行。
「手柄を上げましたね! 築山様!」
「そ、そうかな…」
コントラーク王国の城下町にて、勇者に鉢合わせた築山は名前や勇者の能力などを間近で感じることができた。
勇者の切り札となり得る能力、相手から受けた呪文攻撃を無効化する能力を情報として得た。
「これ以上、深追いすると逆に怪しまれるので今日はこのへんで終わりにしましょう」
「そうだね。この身体も早く戻してもらいたいし…」
カミヤは、呪文で小さい築山を元の身体、年齢に戻し、城下町の宿屋で一泊することにした。
その日の夜。築山はあることを考えていた。
ここまでに至った経緯、時間。ここまでに出会った人、悪魔。あらゆることが目まぐるしく過ぎていったが、自分はなぜここに転生したのか。
自分はこれからどうしていきたいのか、元の世界に戻る術を探すのか、それともこのままこの世界に居続けて生活していくのか。それら全てに迷っていた。
元は交通事故で失った命。再び生き返った今、強く願っていた《日の当たる場所》へ向かい、戦い、手に入れるのも悪くはない。そう考えもしたが…この世界の現実は甘くはないと思う自分をいる。
築山は小一時間、考えに考えたが答えが出ず、ひとまず今日は休息するために眠ることにした。
次の日の朝。築山とカミヤは勇者一行の情報探しを一時中断し、新しい仲間と合流することにした。
「今日は、新たに心強い仲間を紹介しようと思いまして…!」
「仲間?」
「はい。魔王エルドラ様の命により、派遣されたエリートの悪魔たちです」
「へ、へえ〜…」
築山にはどこかピンとこなかったが、カミヤは鼻息を荒くして自身満々に説明した。
どうやらカミヤ曰く、魔王城からやってくる三人はエルドラ直属の配下らしく、かなりの手練れらしい。
どこまでがホントか分からなかったが、とりあえずその三人に会ってみる以外なかった。
「ほら。やってきましたよ」
「ホントだ」
三人の悪魔らしき人物が馬車に乗り、城下町から遠く離れた森林地帯にやってきた。
「どうも、オレ、マモンって言います! 堕天使同士、仲良くしましょうっス!!」
「う、うん。よろしく」
築山にとって苦手なタイプの人物がやってきた。
マモン。神より財産、金を愛した強欲な堕天使。ルシファーと並ぶ実力の持ち主で、カラスの口をかたどった帽子に狼の毛で彩った服装をしている。髪色は赤色で、短髪。年齢は16歳ぐらいといったところか。
「私は、ゴモリーよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
ゴモリー。ソロモン72柱の悪魔の一人で、26個の軍団を従える地獄の公爵。頭には綺麗なティアラを身に付けており、服装は綺麗な中世のドレスと白髪。年齢は22歳といった感じ。
「最後は俺だな。バラムだ。よろしく。リーダー」
「リーダー?」
リーダーという言葉に疑問が湧いたが、今はそこじゃない。
バラム。現在、過去、未来に精通する堕天使。地獄で40個の軍団を統一する実力者で、三つの角と上半身半裸で腰巻を巻いた程度の筋肉質な格好をしている。髪色は黒で、年齢は30歳ぐらい。
「あの〜…リーダーというのは…」
「はい! 築山様がこの一団のリーダーということになります」
「えええええええええっ!!?」
築山にとってリーダーという役割は少し重荷に感じたが、自分の知識にあるルシファーは、自他共に認める地獄の王ということなので、力的にも仕方ないといえば仕方なかった。
「築山様が今日をもってリーダーに就任したとともにですね、とある修行を築山様にしてもらおうと思ってまして…」
「修行?」
「築山様は今、ご自分に眠る魔力をうまくコントロール出来ていない状態にあります。私達の呪文を見よう見まねで詠唱できたとしても戦うには限界があります。なので、築山様の第0原罪をコントロールすべく、こちらのお三方のいずれかと闘ってもらいます!」
「そ、そうなんだあ〜…」
正直、心の中ではこれ以上痛い目にあったり、傷つけられることは避けたかったが、笑顔で微笑みかけるカミヤの圧しに答えるしか術はなかった。
「そうゆう〜ことならオレっち、リーダーと闘いたいっす!!」
「また、アンタ。出しゃばって、ホント昔から短気よね」
「いいじゃないっすか〜。減るもんじゃないし〜。闘いましょうよ〜」
「……」
築山にとって一番避けたかった相手が挙手したことで、言葉が出なかったが、仕方なく闘うこととなった。
「じゃあ、築山様とマモンが戦い合うという形でいいですか?」
「いいよ…じゃあ」
「やった〜!!」
マモンは腰から短い両手剣を持ち、中腰になることで戦闘の態勢へと入った。
築山もそれに続き、背中から長身剣を持って、同じく闘いの態勢へと移行した。
「初対面だからって、手加減はできないっすよ!」
「お手柔らかにお願いします…」
たった今、築山とマモンの闘いの火蓋が切って落とされた。
やる気を出すのに時間が掛かりましたが、なんとか6話目です!
もう少し話が進めば、怒濤の展開になっていくので、そちらも待っていただけると幸いです。
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