第5話 戦闘と運命。
「いいですよ!! イイッ!! 貴方は素晴らしい存在だ!!」
「………」
街の女性を人質に取りながら、弓矢を遠くから放ってくるバルバトスとそれを剣で弾きながら、間合いを詰めていく勇者ツクモ。築山はその光景を固唾を飲んで見ていた。
ツクモが間合いを詰め切ったところで、持ってる剣を一歩引き、一閃。
眩い閃光を放ちながら、バルバトスに向け、追撃する______________________。
瞬く間にバルバトスの右腕が血飛沫をあげながら、上空に吹き飛ぶ、人質に取られていた女性が解放される。
「ゴホッ、ゴホッ!!!」
「早く下がって……また襲われるわよ」
「は、はい…ッ」
「やりますね……これで弓矢が打てなくなってしまいましたよ」
「そうね…これで殺りやすくなったわ」
緊張感が街の全体を包み込む。一瞬の隙をつき、バルバトスが次の先手を打つ。
「天罰の落雷」________________!!!
バルバトスがとある呪文を唱えると、段々と雲行きが悪くなり、空高くから地上のツクモ目掛けて強い落雷が大きな地響きを立てて、落ちる。
「どうですか? 私の奏でる間奏曲は。これは貴方へのささやかな贈り物です」
この戦いを見ていた築山もこれは死んだか…と思った。が、しかし。焼け焦げたと思われるツクモは無傷だった。
ツクモを包む煙は吹き向ける風で徐々に消えていき、ツクモの姿が露わになる。
「無傷ですか…」
「ええ、私には呪文耐性のステータスが付与されているもの…」
「……!?」
呪文耐性のことについて知らなかったのか、バルバトスも焦りを滲ませている。額に汗。握りしめる拳。
明らかに弓矢と呪文を使えなくなったバルバトスは、勝ち目を失っている。そのことに築山は気づいてしまった。
「これで終わりにしましょう……」
「!!?」
バルバトスの目の前から、いきなりツクモの姿が消えた。何が起きたか、誰もわからない中…不穏な空気と無言の状態が続く。
「____________________________________________
!!!!!!??」
一つの閃光。バルバトスの首が吹き飛ばされる。
首元の胴体からは激しい血飛沫が上がる。誰もが、この瞬間、戦いが終わったのだと分かった。
バルバトスの身体は地面に倒れ、勇者ツクモは身体を一切汚さず、勝利した。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!! 勇者様の勝利だああああああああああああああああああ!!!!」
一人の男が勇者の勝利を称えると、それが街の全体に広がり大歓声が上がった。
当のツクモは涼しげな顔で剣についた血を振り払っている。
「勇者のお姉ちゃん、この街を救ってくれてありがとう」
「いえ、私に出来ることをしたまでよ…」
「オレ、勇者様のこと探してたんだ! どんな人なのか、知りたくて」
「……」
沈黙の後、ツクモは少年の姿をした築山に対して答えた。
「私のどんなことを知りたいの…?」
「えっ…えーと……」
咄嗟の事で何を質問しようか全く考えていなかった築山は、間を置くのが怖くなって一つだけ質問した。
「な、名前! 勇者様の名前は?」
「名前……私の名前は《タチバナ・ツクモ》。ツクモってみんなからは呼ばれてる」
「ツクモ…」
「貴方の名前は…?」
「オレの名前はツキヤマ・ツカサ。ツキヤマって呼ばれてるよ!」
「そう…」
築山の質問に一つだけ答えると、ギルドの掲示板に貼ってある貼り紙を一枚だけ剥ぎ取り、距離を取るようにして城下町をあとにした。
「まさか……そんな事、あるはずが無い……」
そうツクモは呟いて、少し歩みを止めた。
今回も書き溜められるぐらいスムーズにかけて、良かったです!
後、感想を書いてくださる方もいるので、その方達には本当に感謝しかありません。
いつもありがとうございます!!
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