第0話 17歳と少年。青春。
人間誰しも心には、日の当たる場所あれば影を覆う場所だってある。
その人の影の部分、いや…根暗で卑屈な部分を性格に現してしまった少年が一人いた。築山司。17歳の高校生である。
いつも寝ぐせのついた黒髪で高身長。髪を染めるといった不良じみたところは一切無い。が、しかし。人一倍日の当たる人間、所、事に敏感で苦手。良く言えば世渡り上手。悪く言えば、陰キャとも言う。多くは悪い方へ捉えるだろう。
築山はあらゆる有名なもの、著名なものが嫌いだった。必ずといってもいい程、自分には手の届かないものではあったし。何より、それが手に入らなくて、努力もせず、憎み、忌みきらい続ける自分がひどく嫌いだった。
築山は小説を書いていた。コツコツと書き連ねていき…何千、何万文字と好きな世界、物語を頭とパソコンの中で描き続けていったが、全く評価はされなかった。
最初は趣味で始めたものの、次第に欲が出始め、評価されなければ自分の作品はつまらないのなのだと思い込むようになり、挙句は筆がのらなくなり…物語を書くのさえもいつしかやめてしまった。
だからこそ、築山は光当たるものを嫌い、その目から影を落としていった。当の本人もそれには気付いていて、心あるもの全員に根暗や闇は必ず存在すると、確信を得ていた。
そんなある日、築山は交通事故で死んでしまう事になる。それは不慮の事故だった。スマホをいじりながら、走行していたバイクにひかれ、運悪く…そのままあの世へ行ってしまったのである。
思い残したことがあるとしたら、ただただ日の当たる場所。そんな場所に少しでも自分も居れればと…。
そう願いながら、長い長い眠りについた。