第二話 学校授業時間目録
【一時間目】
−優等生>劣等生−
「あああああ!!いてぇ!イテェよぉ!!」
そこにはふとももを手で押さえ、その下からダラダラと血を流している上山が倒れていた。
「は〜うるさいな〜そんな怪我すぐ治るだろうに。」と上山を見下ろすように隣から少年が言った。
彼の名前は、原田優徒。
このクラスの優等生的存在だ。
「だいたい、お前は何度も何度も同じ事を繰り返して何がしたいんだ?まったく学習能力のないやつだ。だから劣等生と・・・」
「あ〜〜!うるさいうるさい!わかったよ!俺が悪かったよ!」
優徒の言葉を途中で上山が遮る。
「つ〜〜!!!!さっさと治してくれよ!!」
数秒後に保険の先生が来て保健室へと連れていってしまった。
「さあ一時間目が始まるぞ早く教室に戻りなさい」
この学校には全部で十二学年あり、一学年にA〜Oまでの15クラスある。上山や原田のクラスは十一年のFクラスだ。
「一時間目は数学か・・・」
原田はそう呟くとすぐに教科書やノート、ワークを用意してチャイムも鳴らないうちに復習を始めた。
さすが優等生。
一方上山の方は
「いでででで!!ふざけんな!!優しくやれ!!」
と叫びながら性懲りもなく騒いでいる。
さすが不良。
いや、さすがと言うべきなのか・・・
キーンコーンカーンコーン
一時間目の開始のチャイムが鳴り響くと同時に数学の『先生』が現れた。
その先生はこのクラスの担任でもある南野数一だ。
「授業を始める前に前の授業で言っておいた宿題を提出してもらう。忘れた奴は言いなさい」
すると数人の生徒が前に出た。
「お前たちは今日の放課後までにやって持って来なさい」
「・・・はい」
と小さく返事をして数人の生徒は席に戻る。
「では宿題を前に持って来なさい」
そう言われるとぞろぞろ生徒たちは立ち上がり宿題を提出する。
南野は出席番号順に宿題を並べていく。
が
「・・・ん?女子の十八番山里利恵!早く提出しなさい」
そう言われると一人の女子が静かに立ち上がり、恐る恐る前にでて言った。
「あの・・・すみません・・・えっと・・・あの・・・宿題を・・・えっと・・・その・・・忘れて・・・しまいました・・・」
「何故さっき言ったときに言わなかったんだ」
南野は静かに、素早く聞いた。
利恵の方は聞かれるとビクッと震えまた恐る恐る言った。いや、言っていない。ただ
「えっと」や
「あの」を繰り返すだけだ。
南野はそれにいらつきながら
「何故だと聞いている。答えられないのか?」
と再び聞くが利恵は何も答えない。
南野はとうとう我慢しきれずに言った。
「この愚図生徒が、貴様のような劣等生に付き合っているひまはない。しっかりものを言う事すらできんのか。もういい!席につけ。授業の妨害になるからな」
南野はそう言うと集めた宿題を確認し始めた。
利恵の方はその後も五分程立っていたが
「早く席につけ、授業の邪魔だ。」
と南野に言われた。
その時この場の全員はこう思っただろう。
(授業してねーじゃん)
それはさておき利恵の方は今にも泣き出しそうな顔をしている。それに気付いた南野は
「ちっこれだからガキは」と小さく呟き
「お前も後でやって持って来なさい」
と言った。
利恵は目から一筋の涙をこぼして
「・・・はい・・・」
と言い席に着いた。
利恵の後ろの席の女子が今だに泣いている利恵に
「大丈夫?」
と声をかけた。
だが南野は
「そこ!授業中は私語を謹みなさい!」
と厳しく注意する。だが利恵の後ろの席の女子黒井真知は、もともと気が強く、男勝りな性格の上このクラスの学級委員長である。
彼女は南野のあまりの仕打ちに怒りを覚えていた。
「先生!」
彼女はついに我慢しきれず声を出していた。
「何だ?黒井」
「山里さんがかわいそうです!あんな言い方あんまりだと思います!」
「何を言っている。劣等生にはちょうどいいどころか物足りないくらいだ」
「そうやって人を劣等生とか優等生って差別するの、やめてください!」
「・・・差別?・・・」
南野はそこで一度呆れたようにため息をつき、それからまた言う。
「黒井・・・お前は成績優秀の優等生だ。そんな考えはすてなさい。」
「優等生とか劣等生とか、そんなのじゃなくてもっと『生徒』を見て下さい!」そこでガラガラっと教室のドアが開く。そこには先程保健室に運ばれた上山が立っていた。
「やめな、黒井。そいつら『先生』が『生徒』のことをちゃんと見るわけねーだろ」
「上山、あんた」
「こいつらは俺らのことは所詮道具かなんなかとしか見てないにきまってる。だいたいこいつらは――――
「お前らは何か勘違いしていないか?」
南野は上山の言葉を遮りながら言った。
「私達『先生』の仕事、それは優等生はさらなる高みへ、劣等生はその学校に相応しい生徒に、お前はこれを差別と言ったがこれはただ人により対応が違うだけだ。」
「ぐっ」
上山は言い返せなかったが黒井は
「ちがう!そもそも優等生とか劣等生に分けるのが間違ってる!」
「実際分ける程の差があるのだ」
「それでも!劣等生を馬鹿にしていい理由はない!」南野はそこで笑いをこらえるようにして言った。
「何を言っている?劣等生とは他より劣る存在と言う意味だ。つまり今お前は劣等生のことを劣等生と馬鹿にしたのだろう」
「っ!?ちがっ」
「一つだけ言っておく」
南野はまとめるように言った。
「優等生は良し劣等生はクズなのだよ」
教室の中は静まり返っていた。一時間目はのこり少ない。
いつも通り先に(?)謝ります すみません なんか途中の作品もあるんですがこっちのが書きたいんで(勝手だな)