始まりの夜は
満天の星空と天の川が黒一色の夜空を彩り、その煌びやかな光が降りそそいでいる。
「あっ!流れ星だ!」
丑三つを過ぎたこの頃、風が吹きすさぶ草はらで夜空を見上げていた少女が叫んだ。
その横どなりには三人の男女、そして少し離れた先に僕がいた。
「えっ!どこ?!」
「もう流れちゃったよ。せっかく星見に来たのに携帯なんて触ってるからだよ亮一。」
呆れたように話す男は山川圭吾。誰にでも分け隔てなく接することから彼を好いている人は多い。スポーツも万能でありながら部活には入らない変わり者とも言える。
「しょうがないだろ?ほんとに流星が見えるなんて思わなかったんだから·····」
「まあ亮一らしいっちゃらしいけどね。」
ショートの髪をなびかせながら笑うのは山遠里奈。浅黒い肌は彼女が陸上部に所属していることを象徴しているようにみえる。
「また流れるかもしれないし次逃さんように見とこうよ。」
煩いよといった顔をしながら僕の方を向いたのは木名村広平。圭吾の幼馴染であり彼とは逆にスポーツより勉強が得意なタイプだ。
そして、あと一人。先ほど流れ星を1番に見つけた少女。
醒ヶ井ゆき。喧騒の中ただ一人一言も発せずに星に見入っている。今日星を見に行く提案をしたその人であり、この場を一番楽しんでいる人でもある。
その後も僕たちは星が煌めく空を見続けたが、僕が流れ星を見ることはできなかった。