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復讐に乾杯  作者: 一発ウサギ
8/19

復讐に乾杯

お待たせしました<(_ _)>

私と異母姉はしばし無言で見つめ合う



そして



「「ふっ」」




同時に笑いあった



「お疲れ様。やっとここまで来たわね」

姉が笑顔で言う

「ええ。お姉様のお蔭ですわ」

私も笑顔で返した


そう、私たちは最初から共犯だった

母を亡くした日、あの林で声をかけられてからずっと―――

姉は私の話を聞き、自分も話してくれた。

自分の不注意で大切な人を公爵に傷つけられた事、公爵の裏の仕事の事、償いの為公爵の悪事を公にしようとしてる事

そして私に協力を求めてきた。

公爵の評判は高く今のままでは王子にまともに聞いてもらえないので、数年かけて王子の信頼を得ながら証拠を集めて話をする計画だが、その協力をしてほしいと頼んできた。

1人より2人の方が信じてもらいやすく、公爵の目を盗んで証拠も集めやすいと―――


しかし私はそれを断った。

むしろ逆に頼んだ「その役を自分にやらせてくれ、王子の婚約者という立場を譲ってくれ」と

私はあの男が許せなかった。どうしてもこの手で地獄に送ってやりたかった。

姉任せにするなど耐えられなかった。


姉は戸惑ったが結局は譲ってくれた。

それから2人で計画を立てた。

姉との婚約を破棄して私と婚約させる事、悪事の証拠を集める事、

王子の気持ちを向けさせるのは簡単だった。元々王子には何度か泣いている所を見られていた。「異母姉にいじめられていた」という事にすればいい。

誰だって目の前で泣いて弱っている人間には無条件で同情や優しさを向けるものだ(一部例外な人間もいるが)

そこから好意に持っていくなどたやすい。

悪事の証拠も集めるのが難しいなら作ればいい。


それからは王子の気持ちを向けさせる事、悪事の証拠とするため公爵の身の回りの品を集める事に力を注いだ。

そしてそれは上手くいった。フランツはすぐに私に好意を向けるようになり、姉の協力で公爵の身の回りの品も揃った。

しかし問題もあった。

中々姉との婚約破棄がされなかったのである。

どうやら国王と王妃が渋っているらしい。

フランツはたびたび姉の虐めを挙げているようだが怪我人が出ていない、被害が私に限っている事から「ただの姉妹喧嘩で大した事ではない」とされているようだ。


私達は焦っていた。このままでは卒業になってしまうと

卒業後姉は本格的に結婚準備に入る。そうなれば破棄は難しい


私はどうしても「王子の婚約者」という肩書が欲しかった。

たとえ王子の気持ちが私に向いていたとしても「王子の婚約者」と「王子の婚約者の妹」では発言力が違う

「王子の婚約者」なら全面的に信じられなくても周りも多少は耳を貸してくれる。一度でも話を聞いてもらえればあとは(捏造だとしても)証拠を見せればいい

しかし「王子の婚約者の妹」ではたとえフランツが口添えしたとしても「父親と喧嘩した娘が腹いせに王子に父親の悪口を言っている」くらいにしか思われない。


私は思いきって姉に「階段から突き落としてくれ」と頼んだ

さすがに姉は反対したが「時間がなく他に方法もない、頭と腹を庇えば死にはしない」と押し切った。

あの男をこの手で地獄に送れるなら手足の一本や二本どうなっても惜しくなかった。首だけになっても構わない、そう思った。


結局姉も折れてくれて実行することになった。

チャンスは1度だけ。

場所は人通りの多い廊下の向かいにある階段。

念のため窓も開け放しておいた。万一目撃されなくても私の悲鳴と姉の暴言が聞こえれば充分証拠になる。

そして私達は賭けに勝った。


後は簡単だった。

フランツ達に裏の仕事の情報を流し、同時に騎士が踏みこむ直前にイニシャルや家紋入りの小物を落とす。

それだけで周りはあの男を疑いどんどん孤立させてくれた。

極めつけが代理許可書だ。

私は変装してそれを「公爵から預かった」と偽り奴隷商人に渡した。

奴隷商人などにそんなものを渡せばどうなるか分かりきっている

案の定商人は公爵の後ろ盾を得たと喜び品不足を補うため大胆な方法――誘拐に踏み切ってくれた。

騎士団が巡回を強化してる状態で誘拐などしても失敗するに決まってるのに

もちろん巡回の強化も私が頼んだことだ。

しかもその商人は捕らえた騎士たちに対して「自分には公爵の後ろ盾がある」と進んで許可書を見せてくれたそうだ。愚かすぎて笑いが止まらない


あぁそうだ、笑いといえば―――


「思い出しましたわお姉様。あの卒業パーティの時お姉様扇なんか持ってきてズルイです」

例の茶番劇で人が笑いをこらえている時、姉はちゃっかり扇を用意して影で本当に笑っていたのだ。おまけにサッサと退場してしまった。

こっちはずっとフランツ達と一緒で笑うに笑えなかったというのに

全くズルイ姉だ

「あらパーティでドレスや扇は普通でしょう?用意しない方が悪いのよ」

クスクス笑いながら躱される。

とりあえず立ち話も疲れるのでイスとテーブルを持ってきて座る。


「それに文句なら私にもあるのよ?あんなところで『彼』が来るなんて聞いてないわ」

姉が口をとがらせて言う

そう。姉を襲った夜盗というのは姉の恋人の事だ。

私は事前に彼に連絡を取り姉の婚約破棄の事、姉が行く修道院への道を教えて姉を連れ去るように伝えた。私があの男に教えた修道院へ行くには必ず例の崖を通る。死んだ事にして恋人と一緒に行くにはちょうど良い

「ちょっとしたサプライズです」

私は笑顔で返す


姉は気づいている。

私が彼を呼んだのは政略とはいえ婚約者を奪った事、復讐の協力をしてくれた謝罪と礼だと―――

そして私も気づいている。

姉は愛する人や償いという目的をなくして生きていける人ではない

私にあとを託し公爵の破滅を見届けた後自殺するつもりだという事を

実際姉を救出したという彼からの手紙には姉の荷物の中に毒を塗った短剣があったという

けれどお互い口にはしない

言わなくてもわかっているから

私達は同じ気持ちと罪を分かち合う共犯者だから―――


「お喋りもいいけど喉が渇いたしワインを取ってくるわ」

「ワインなど残ってたのですか?」

驚いた。全部使用人が持ち去ったと思ってたのに

「ええ。調度品にばかり目が行っていたようね。貴方が来る前に見たけど厨房も含めて無事だったわ」

「確かに厨房に金目の物はないでしょうね」

「赤、白、ロゼ、何でも揃ってるけどどれがいい?」

「白が良いです。血のような赤色など当分見たくない」

「分かったわ」

そのまま姉は貯蔵庫に入っていく

その間にグラスを用意する


やがて姉が戻ってきた

「お待たせ」

「こちらも用意しておきました」

ワインを受け取りグラスに注ぐ

席につき2人同時にグラスを掲げる


「それではお姉様の恋の成就と」

「貴女の復讐の成就に」



「「乾杯!!」」












といっても次で本編終了です(*´Д`)

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