公爵の破滅
暴力+なるべく控えめにしましたが性的暴行あり注意
「くそっ!何故だ!」
ダンッ!
机を拳で叩く
「何故あのタイミングで騎士の手入れが入るんだ!!」
私はヘンリー=アルデリア
現アルデリア公爵である
裏で人身売買を行っていたのだがここ最近どうも上手くいかない
それというのも……
「今月に入って3回目だぞ。どうなっているんだ…」
自室で頭を抱える
最近になって騎士団による街の巡回が強化された。
そればかりか商品の引き渡しのタイミングで騎士団の手入れが入る
おかげで品不足だ
更には取り引き現場で私のイニシャルや紋章入りの持ち物が見つかっている
その度に誤魔化したり、しらを切ったりしているがそれもそろそろ限界だ
最近では社交界でも遠巻きにされている
「やっと運が向いてきたと思ったのに…」
そもそもアルデリア公爵家はあまり裕福なほうではなかった
昔は公爵家に見合う財産があったそうだが、商才が無かったのか浪費家揃いだったのか私が公爵家を継ぐ頃にはどうにか体裁を繕える程度だった
冗談じゃない!
公爵家なら公爵にふさわしい財力を持つべきだ!
とはいえ領地も広さはまぁまぁだが豊かな土地ではなくこれといった特色もない
数年ごとに不作や流行り病が起こるし、あるといったら親や家をなくした孤児ばかりだ
ん?待てよ孤児?
子供は高値で売れると聞いた
それから私は人身売買に着手した
孤児院を建て孤児を集めそれなりに育ったら「里親を見つけた」「働き先を見つけた」と言っては奴隷商人に売り渡した。
おかげで公爵家は身分にふさわしい財力を得た
その上孤児達を積極的に保護する私は慈善家だと世間で言われるようになった
財力を得たら次は後継ぎだ
そのためにはまず相手を探さねば
男児を産めて私の言いなりになる相手が良い
平民か弱小貴族か…
いややはり次期公爵となる子供に平民の血を入れたくない
選んだのは我が家に借金をしている貧乏伯爵家の娘
すぐに妊娠したのはいいが生まれたのは女児
怒鳴りつけたら「女児でも優秀なら後を継げます、婿を取ればいいだけです!」と反論したので殴りつけたらよろめいて壁に頭を打ちつけた
まずい、実家がうるさい!
慌てて医者に診せたら命に別状はないものの半ば正気を失っていた
チッ!これだから貴族令嬢は
血筋が良いのは結構だが大事に育てられすぎて軟弱だったり、気位が高くて生意気だったり!
しかしこれでよく分かった
やはり身近に貴族を置くと碌な事がない
使用人も平民に教育を施して入れ替えよう
伯爵令嬢が駄目だったので今度は平民から探す事にする
平民の血が混じるのは不本意だがまんざら悪い事ばかりでもない
しぶとい平民なら強い男児が産まれそうだからな
視察と称して街に出て適当な相手を物色する
目を付けたのはパン屋の娘
身寄りがない上若くて健康そうだし良い子が産めそうだ
娘に近づき「短期で住みこみの仕事をやってみないか」と持ちかける
屋敷に連れ帰り寝室に連れこむと暴れ出した
「公爵様これはどういうことですか!私は住みこみの仕事だと聞いてたんですよ!?」
「仕事には違いないだろう。我が家の跡継ぎを作る仕事だ」
「お断りします!私は娼婦ではありません失礼します!」
そう言って出て行こうとした。
ふざけるな!
ここまで来て帰らせてたまるか!
使用人に取り押さえさせて目的を果たす
「うっうっ…」
終わった後もメソメソ泣いて鬱陶しい
その後も毎晩頑張ったが成果がない上、泣き続けて鬱陶しいので2カ月で帰らせた
特に口止めはしなかったが問題ない。自分が娼婦になったなど誰が言えるものか。
その後金をせびるためか1度やって来たが役立たずに用はないので門前払いした
あれだけ頑張って結局できたのは娘のフローレンス1人。
男児は諦めてフローレンスに跡取り教育をする
それから数年たちフローレンスも順調に育っている
成績も社交界での評判も良いようだ。
仕事も上手くいっており平穏だ。
そんな中フローレンスの事を聞いた国王から「第二王子の婚約者にしたい」と申し出があった
やった!なんて幸運だ!!
もちろんその場で承諾した
すぐに帰りフローレンスに伝えたところ突然泣いて騒ぎ出した
数年前から付けていた従者と恋仲だという
冗談じゃない!そんな事のために従者を付けたわけじゃない!
聞き分けのない娘を張り倒し相手の男を殴り倒して林に捨てさせた
娘は泣きながら部屋に閉じこもり、その後第二王子との婚約が発表された
娘と第二王子との婚約が決まりしばらく仕事や社交で忙しかったが一段落した頃久しぶりに街に視察に出た。
たまには街や孤児院も見て回らないとな。
商品の品定めは重要だし、取りこぼしの孤児もいるかもしれない。
馬車を降り辺りを見回しながら少し歩く。
「お母さーん、早く早く!」
「エレナ!ちゃんと前を見て歩きなさい」
「っ!」
向かいから親子の声がする
声につられて顔を上げ驚いた。
こちらに向かってくる女児は私と同じ色の目をしていた。
しかも母親は例のパン屋の女だった。年の頃もあっているし間違いない、私の娘だ!
すぐに女に問いただしたところあの後妊娠がわかり産んだという。
何故もっと早く知らせなかった!知っていたら引き取って貴族の教育を施したものを!!
フローレンスの例もある、ちゃんと躾ければ良縁を結べたかもしれないのに!
こんなに育ってからでは難しいではないか!!
怒りのまま女を殴り子供を連れ帰る
翌日から子供に教育を施した
フローレンスと違いブランクがあるのでその分詰めこんだ
怠け癖があるのかすぐに母親の元へ逃げ出そうとする
もちろんきちんと躾けておいた
しばらくしてようやく躾けの効果が出たのかサボらなくなった
全く子供の教育は大変だ
それから少しした後街で病が流行った
例のパン屋の女も感染したらしい
エレナにうつされては困る。母親の元に行くのを禁止した
あのバカ娘が!!!!!
母親の治療を拒否したらあろうことか買い与えた宝石を持ち逃げして街に行った
誰が稼いだ金で買ったと思ってるんだ!!!!!!
エレナの愚行を止められなかった使用人達も腹立たしい!
苛立ちのまま使用人達を殴りつける
数日たったころエレナが戻ってきた。
よくものこのこ戻ってこれたものだ。
怒りのままにエレナを殴る。
怒りはまだ収まらなかったが気絶したので「病が収まるまで出てくるな!」と倉庫に放りこんだ
ひと月…いやひと月半程か?
ようやく出したら反省したのか大人しくなった
その後はフローレンスのバカ騒ぎ以外何もなくホッとしてたのに…
「何故騎士団が…」
再びその疑問に戻る
思い出すとまた怒りが湧いてくる
いつもなら使用人で憂さを晴らすのだがここにはいない
この部屋には裏の仕事に関する書類が置いてあるので使用人を入れないようにしている
以前一度入れてしまった時、偶然書類を見た使用人が私を強請り出した
もちろん林の肥やしにしたが。
それ以来決して使用人は入れないし部屋を留守にする時も鍵を掛けている
そもそもここにいるのは怒りを発散するためではない、考えを纏めるためだ。
深呼吸して気持ちを落ち着ける
「やはり…密告者か?」
タイミングが良すぎる。それしか考えられない
「いったい誰が……」
時期的に最もあやしいのはエレナだ。
しかしエレナに私を裏切る理由はない。
そもそもエレナは事が発覚しても不利益を得るだけだ。それも致命的な。
だとしたら考えられるのは屋敷に仕える使用人しかいない。
「しかしどこで裏の仕事の事を知ったのか…」
使用人だとしても今度はどこで人身売買の事を知ったのかという疑問に当たる
部屋には鍵を掛けているしこじ開けた形跡もない
奴隷商人と繋がりがあるとも思えない
「いや、今はそれよりもこの状況だ」
暫く仕事は控えるしかない。その間に使用人を入れ替えてしまおう
誰が裏切ってるにしろ入れ替えてしまえば問題ない
「……?何だか外が騒がしいな」
窓に近寄り外を見ようとした時―――
バンッ!!
勢いよくドアが開かれ騎士達が乱入してくる
「な……!?」
「ヘンリー=アルデリア!我が国で禁止されている人身売買及び誘拐を行なった罪で拘束する!!」
悪事がボロボロと…