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復讐に乾杯  作者: 一発ウサギ
5/19

ある庶子令嬢の回想

暴力+ヒロイン病み気味注意

私が生まれ育ったのはアルデリア領にある小さな街だった

物心ついた時には父はおらず母と2人きりだったが気にならなかった

母は優しく私を可愛がってくれた

朝は母の焼くパンの匂いで目を覚まし、朝食と身支度を終えると店が開き客がやってくる

母の店を手伝いそれが終わると友達と日が暮れるまで遊ぶ

家に帰ると母が夕食を作りながら「おかえり」と言ってくれる

夜は1つしかないベッドで母のおとぎ話を聞きながら寄り添って眠る

毎日がとても楽しくて幸福でこのままずっと続くと思ってた


あの男が来るまでは


その日はお店は休みで私と母は買い物に来ていた

久しぶりの母との買い物で私は浮かれていた

はしゃいで先を走ると目の前に男が立っていた

上等な服を着ていて一目で貴族とわかった

男は私の顔をじっと見ていた

「こら!待ちなさ……こ、公爵様!!」

後から来た母が真っ青になって荷物を落とした

「ここではなんだ。話がしたい、お前の家に案内しろ」と母に言った

母は震えながら頷き道を引き返した


バシッ!!

家に帰るなり男は母を殴った

「何だこの娘は!私と同じ色の目をしているし年の頃もあっている!私の娘だろう!?何故もっと早く知らせなかった!!」

「そんな!妊娠が分かった時に行きましたのに、話も聞かずに「もう来るなと」追い返したのは公爵様でしょう!?」

バシッ!!

「きゃあ!」

「うるさい!口答えするな!!」

殴られて床に転がる母をさらに蹴り続ける男

「やめて、やめて!お母さんをいじめないで!!」

「うるさい!邪魔だ!」

「あっ!」

私は必死に男を止めようとしたけどあっさり振り払われた


男が落ち着くころには母は傷だらけで動けなくなっていた

「とにかくこの娘は貰っていく。お前は2度と娘に関わるな」

そういって男はいきなり私を担いだ

「いや!離して!」

「うぅ…エレナ…」

「お母さん!!」

手を伸ばしたけど届かなかった

男はそのまま馬車に乗り私を屋敷に連れて帰った


それからは酷い毎日だった

最低限の食事と睡眠だけであとは勉強と礼儀作法を学ぶ日々

覚えが悪いと男――公爵に殴られた

逃げようとしても殴られた

時折見かける公爵夫人はこちらを見て罵倒するか、気付かずブツブツ何か呟くかどちらかだし、たまにしか会わない異母姉も私に無関心

使用人達もいつも無表情で人形のようだった


諦めた頃に向こうにもそれが伝わったのか

監視付きだが母に会うのを許された

久しぶりに会った母はすっかりやつれていた

私を見て大声で泣き、私も母に抱きついて2人で泣き続けた


それからも私はたびたび母に会いに行った

母も会うたび笑って迎えてくれた

いずれ異母姉が婿を迎え家を継げば公爵は公爵でなくなり自由になれる

それまでの我慢だ、そう思った

大きな間違いだった


ある日突然公爵からもう母に会うなと言われた

街で病が流行り母がかかったという

優秀な医者に診てもらうか高価な薬があれば大したことない病だが

かける治療費が勿体ないからかかるなという

「病を持ちこまれても面倒だからな」

公爵はそう言った

すぐに母を助けてほしいと頼んだが断られた

「あの女はもう我が家に関係ない人間だ。そんな無駄金払えるか」

私は我慢できず与えられた宝石や装飾品を持ち出し街で売った

そのおかげで何とか母を医者に診せる事が出来た

そのまま容体が落ち着くまで看病し、戻った時には怒り狂った公爵と冷たい目をした使用人達が待っていた。

私は気絶するまで公爵に殴られ「病が落ち着くまで出てくるな!」と倉庫に放りこまれた


ひと月以上たったころだろうか

ようやく出された時には全て終わっていた

街の半分近い住民が亡くなりその中に母も友人達も入っていた


信じられず母の家に向かったが何も残っていなかった

感染拡大を防ぐため遺体も身の回りの品もまとめて焼いたと聞かされた

何も考えられぬまま屋敷に戻った


気づいた時は屋敷の裏の林の中にいた

ここは何故か公爵も使用人も誰も近づかなかったので(理由は後にわかるのだが)1人になりたい時や泣きたい時に良く来ていた

その時ようやく私は二度と母や友人達に会えないのだと、もうあの幸せだった日々は帰ってこないのだと実感した。


「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


大声を上げてひたすら泣いた

泣いて、泣き続けて声が枯れる頃に湧いてきたのは公爵への怒りと憎しみだった

どうして母や私がこんな目に遭わなければいけない!

母や私が何をしたというのだ!?

娘の母親なのだから無関係じゃ無い筈だ!

ずっとほったらかしだったのだから一度くらい助けてくれたっていいではないか!

公爵がはした金を惜しまなければ母は死ななかった!!!!


許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!!!!

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!!!!!

必ず思い知らせてやる!!!!!!!!!!!!!!!!!


そう決意した時――――




「どうしたの?大丈夫?」



『あの人』に会い、そうして私は今の『私』になった









そろそろ終わりが見えてきた。次は公爵の話です

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