番外・元公爵令嬢の追憶9
これで完結です
一か八かの大勝負だったが上手くいった。
エレナは足を痛めただけで済み、婚約破棄も言い渡された。
卒業パーティの茶番劇は愉快だった。急いで部屋に帰ったが我慢できずに大笑いする。
「あははははは!」
王子が勝手に言った事だが公爵令嬢に怪我をさせたのは事実だし、大勢の前で宣言した以上国王も撤回できないだろう。ようやく努力が実ったのだ。笑い過ぎて涙が出てくる。
ひとしきり笑った所で急いで最後の仕上げをする。
今まで集めた父の持ち物を纏めてアーサーへの最後の治療費とエレナ宛の手紙と一緒に林に置いておく。今までアーサーへの治療費はドレスやアクセサリーを少しずつ処分して作ってきたがこれで最後だ。エレナ宛の手紙にアーサーに届けてくれるよう頼んでおいた。これでやるべき事はほぼ終わった。
王族との縁を逃した娘を父は許さないだろう。初めから覚悟は出来ている。念の為生きたまま林に捨てられた時の為、用意していた短剣を忍ばせる。最後まで結末を見れないのが残念だが、彼女なら上手くやるだろう。
まさか妹が乱入して修道院行きにさせるとは思わなかった。その上アーサーに私を連れ出すよう頼んでいるとは…
「どうしたの?ボンヤリして具合でも悪いの?」
窓際に座って考えてるとアーサーが声をかけてくる
「あぁごめんなさい。ちょっと昔の事を思い出してたの」
「昔の事?」
「えぇ。貴方に初めて会った時の事とか、異母妹の事とか」
「あぁ。そういえばしばらく会ってないね」
「そうね。でもあの子の事だからきっと元気にやっているわ」
そう言って再び窓の外に目を向ける。
修道院に向かう途中で私はアーサーとその友人達に連れ出され、傷が治るまで彼がお世話になっている主治医の元に留まっていた。彼は右腕が使えなくなった後、主治医の元で住みこみで働きながら、右手のリハビリと同時に左手で剣を使う修行をしていたらしい。
彼にプロポーズされた時の事は今でも忘れられない。
合わせる顔が無い、資格がないからと断ったのにそれでも彼は諦めず私に求婚しとうとう根負けした。
傷が治った頃隣国に行きひっそりと式を挙げた。そのまま隣国で生活を始め彼は騎士団に入団した。
その後父が捕まったと聞き、一度国に戻り妹に会った。
彼女と少し話をした後隣国に戻った。
私のやるべき事は全て終わった。結末を見届けるのは彼女の役目だと思った。
その後隣国で男児を産み現在2人目を妊娠中だ。
妹とはあまり会わないが手紙のやり取りは続いている。
最後に会った時彼女に「今幸せか?」と聞いた。
彼女は驚いた顔をした後「とても自由で心が満たされている」と返事をした。
彼女はまだ幸せではないのだろう。
ありがとう
貴方のおかげで私は目的を果たせた
諦めていた幸せを掴めた
だから今度は私が貴方の幸せを祈る
どうか貴方が幸せになりますように
だって貴方は私の―――
大切な共犯者だから――――――
ここまでお読み下さりありがとうございました<(_ _)>