真実
「引いた??」
ふと、レンの声が響き渡る。
メグが声のする方を探すが見当たらない。もう一度前を向いてみるとさっきまで縛られていたレンが、こっちを向いて喋っていた。制服は千切られて身体はボロボロだ。
「あなたの、過去なのね。」
すべてが一致したメグはその声に向かって冷静に答えた。
「私が毎日頻繁にみる悪夢は、あなたのものなのね。」
「そう。オレもお前とおなじ超能力者だ。だからこうやって、テレパシーで脳内に伝達できる。」
「それを知っていたから、私のこと」
目の前のレンは笑った
酷く儚い顔で笑った。
「同じ能力者だ、分かり合えるかなって少し希望をもってた。でも、お前もみんなと同じだ。初心者だった。お前もどうせオレのこと裏切るんでしょ。
………もうオレに友達なんていらない。この力も、自分のためだけに使う。噂になろうがなんになろうが構わない。」
それだけいって、レンは立ち去ってしまった。いつの間にか、隣吏市のさっきの道に戻ってきていた。
いつもみていた悪夢はレンのものだった。レンは自分の過去をおなじ能力者でありながら他人であるメグの脳内に介入させていた。どういう意図があったのかはわからない。
次の日メグは病院へ出向いてソウタに相談することにしたのだった。
「え?話したの??レンと??」
「はい。でも、怒らせちゃったみたいで……。」
超能力のことは伏せながら、メグはソウタに昨日のことを話した。それでもソウタはなんだか嬉しそうだ。
「いや、いいよいいよ!話が出来ただけ上出来!」
そういってソウタは昨日の夜のことを話してくれた。昨日のレンはちょっといつもと違っていたこと。一緒にごはんを食べてくれたこと、自分ともちょっとだけ会話が続いたこと、、。もしかして、メグちゃんと喋ったからかわってきてるのかもしれない。そんな様子で嬉々と話した。
「あいつああみえて構ってちゃんなとこあるからさ!酷いこというかもしれないけど、それも気を引きたいからだってことで、これからも喋ってやってくんねーかな!?話し相手とかでいいからさ。」
その日からメグがみていたレンの悪夢はキレイさっぱり見なくなった。レンがメグの脳内に介入することをやめたからだ。頭痛も収まったし、ソウタに相談したことで不安な気持ちは減ったものの、レンの言葉が胸に突っかかったままであった。
「お前もどうせオレのこと裏切るんでしょ」
友達なんていらない。そう彼はそういっていた。隣吏小の人達がみな、レンと友達に戻る気がない今、レン自身もそのことをよくわかっているようだった。そんな状況下で、どんなふうに接したら、レンと仲良くなれるのだろうか。必死に頭をまわすが答えが得られないまま、朝を迎えたメグであった。