証拠
「え!?ちょっと!」
メグは逃げ遅れ、その場に取り残されてしまった。
目の前にはメグよりも一回り小さい体のレン。彼がみつめるその先にはメグがいる。
「え、えっと…」
「話はなに」
「え、、??」
「だから、話ってなに」
今まで無言を貫き通したレンが急に面と向かって対話する姿にメグは戸惑いを隠せない。
「ソウタ兄ちゃんと話してたこと、なにってきいてんの。」
ソウタ兄ちゃん、その言葉で我に返る。
ソウタと、約束をしたことだ。緊張しながらもレンに伝える。
「れ、レンくん、私あなたと友達になりたいの。」
「は…?」
真相をきいたレンは呆れたように後ろへ引き下がった。
「交流会のときから、私の方ずっとみてたこと、気になってて……」
「違うだろ。」
「え…いや、でも、」
「ソウタ兄ちゃんから頼まれたんだろ。」
核心をついた発言にしどろもどろになるメグ。
「かっこいい先輩だから、出来て褒められると嬉しいなってだけでしょ??ステータスだろ、どうせ。」
「そ、そんなことないよ!ずっと気になってたもの!」
「…はあ。だる。」
深いため息をついてレンは腕を組んだ。
「そういうのいらないから。人から頼まれて友達になってくれなんて、偽善じゃん。」
「……。」
「ほら黙った。オレのこと外見で判断しないで。」
「…してないよ、」
「は?だから…」
「してないよ…!!!ずっとお友達になりたいっておもってた!」
メグの突然の大声に固まるレン。
メグは話を続ける。
「ソウタ先輩から、あとワカナとかからいろんなこと聞いた、その度に、あなたを助けたいっておもってた、本当だよ。」
「へえ……。」
フッと鼻で笑うレン。
その瞬間メグの頭に猛烈に強い痛みが走った。
「いっ……?!」
メグはあまりの衝撃にその場にへたりこんでしまう。メグが目を開けるとそこに現実の世界はなく、よく見たことがある世界が写った。
「あれ、これは。」
そう。メグがよくみる夢の世界だ。大勢の人が自分を取り囲んでなにかを叫んでいる、あの世界。
いまならその情景が鮮明にみえる。
同じ制服を着た子が群がっている、指を指す人、声をあげる人。よくみると、指を刺されているのは自分ではない。後ろにいる。小柄な、男の子。
(れ、レンくん…?)
生徒の中にはメグもよく知るワカナやユウリがいる。たまに生徒から出る手や足に蹲ったままのレンはボロボロにされていく。
"やめて"
下を向いたままのレンが決死の覚悟で叫ぶが周りは怯まない。
それどころか周りから伸びる無数の手が蹲るレンの身体を締め付けている。無理やり起こされた身体に再度蹴りをいれる生徒もいる。
レンの口に手をあてて声を出させないようにしている手もある。
そんな悲惨な状態をメグは目撃していたのだった。