目に見えない力
— いわなくちゃいけない いったって なにもかわりゃしないのに。
いわなくちゃいけない いったって だれもおはなしきいてくれないのに。
赤色のランドセルを背負った女の子が、息を切らしながら大急ぎで走っている。
なにをそんなに急ぐのか、地味にカギがあいたランドセルも、ちゃんと結べていない紐靴も、ほったらかしにして彼女は奥に見える小学校に向かって走っている。
彼女の名前は、佐々木 芽久
(急がなきゃ!!授業がはじまっちゃう!!)
今日メグは寝坊をした。
こんな日に限って、仕事がある親は早々に出勤し、一つ上の姉も起こしてくれない。
メグがおきたときにはもう、家に誰一人としていなかったのだ。
大急ぎで身支度をして、朝ごはんも食べないまま家をでてきた。
やっとの思いで校舎に辿り着いたメグは、乱雑に靴を靴箱に入れ、上履きに履き替える。
そして自分のクラスである、六年一組へ向かう。
ガラガラガラっ
幸い、まだ先生はきていなかった。
メグの必死な顔をみて一人の女の子が声をかけてくる。
「メグお疲れ様~♪ギリギリだったね!!!」
「り、りりかぁ…」
メグの親友の斉藤 理々加。
いつもメグと一緒にいてくれる、とても大切な人だ。
今日も、メグのランドセルから教科書を引き出しへ移すのを手伝ってくれた。
メグが席につき、一息つける間もないまま、チャイムが鳴った。
一時間目は算数だ。
算数が苦手中の苦手なメグは先生の板書をよそに一人、窓の外をぼんやりとみつめていた。
(今日はお天気がよくてとってもいい日、・・・・・・・・いっ!?)
考え事をしていると、突如として頭に痛みが走った。
頭の中でびりびりとノイズが響きメグの脳裏にある情景が浮かび上がった。
薄暗い
何処かの学校。
沢山の人が自分を囲んでいる。
人は自分の方向へ指をさして叫んでいる。
耳をふさごうとしても沢山の手がその行く手を阻む。
(まただ……)
最近のメグはこの謎の情景を頻繁にみる。
原因はなにかわからない、いつからみるようになったのかも覚えていない。
でも病院に通ってはいない。
なんともしようがない理由が実はある。
どうやらメグには超能力が使えるらしい。
そんなことをいって、何処の医者が信じるだろうか。
メグには自分でも確信的な現象が過去にあった。
幼い頃からこの力を身につけていたらしいメグは、花や草木、犬や猫から声を聞くことができる、
はたまた、人が考えている事が自動的に頭のなかに響いてくるのだ。
「メグ、大丈夫?」
メグの異変に気付いたリリカは心配そうにこちらをみつめている。
幼少期に比べると、その力は鮮明になり、自分でその声を調節できるようになった。
一人でこの力を抱える事はメグにとって大きな負担になるため、唯一リリカにだけ、その力のことを話している。リリカも最初は半信半疑な様子だったが親友が能力に悩む姿を何度も見て、そのたびに相談にのってくれたりとメグにとってとても心強い存在なのだ。
一時間目が終わり休み時間に入ると、リリカがこんなことを持ちかけた。
「メグ、今度の交流会いく??」
「うん!もちろん!いくよ!リリカのお友達にもあいにいこ!」
今週の土日に、「交流会」というものがある。
交流するのはメグが住む桜町の隣の、隣吏町という街の小学校の六年生である。
メグが通う桜小学校と、交流する予定の隣吏小学校。
この二つの小学六年生は来年四月に、桜中学校で一緒になる。
中学校に上がる前に仲を深めておこう、そんな考えから始まった、六年生にとって毎年恒例の行事である。
リリカには、隣吏小学校に同い年の従兄弟がいるらしく、会えることをとても楽しみにしているようだ。
そんな交流会まであと三日。
交流会が近づくにつれ頭の痛みと幻覚が激しくなっていると感じながらも、これからはじまる中学校での新しい生活を心待ちにしているメグであった。




