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晩餐会は反省会!ですわ

「全然ダメだったではありませんか!」


私は声を張り上げて叫んだ。

それと同時に目の前に置かれたメイドが給仕してくれたステーキに、フォークを勢いよく突き刺した。

行儀が悪い事この上ない行為であるが、こうもしなければ女性の声はかき消されてしまう。


フォークと白い皿が接触した音と、私の張り上げた声が届いたのか、今回の戦犯たちは肩を落として目を伏せていた。

しかし、私の腹の虫はその反省ポーズでは治らなかった。


フォークに突き刺されたステーキからは肉汁がジワジワと滲み出てきて、きっと口に運べば凄く上品な美味しさを味わえるのだろう。

私はゆっくりフォークをステーキから抜いた。


「何がお忍びですか!あんな大勢で騒ぐなんて!完全に他の観光客にバレてしまったではありませんか!」


そう、あの水占いの後私たちは周りにいる観光客たちに、メピュア国のアンターク王子と、メピュア国のラピスラズリ家の次期当主ロジャード、ブラックローズ帝国のメフィスト王子に、グリスのウィル王子、フレアランス王国のアレクサンダー王子、そしてリキュア国のアクア王子が集まっているという事がバレてしまい、大きな騒ぎになってしまったのだ。


「一歩間違えば怪我人が出る所だったんですよ!もっと自分が王子である事を自覚して行動してくださいまし!」

「あ、でもシフォン?俺は王子じゃねぇし・・・」

「兄さん!貴方は次期ラピスラズリ家の当主である事を自覚してください!ラピスラズリ家はメピュア国の外交を担っている家系という事知っているでしょう!」


私がそう説教すると、ロジャードは小さく「ごめんなさい・・・」と呟いた。


「分かりましたね皆さん!5年に一度、この大陸の平和を祝う祭典で、怪我人が出たら元も子もないでしょう!その原因の一国の王子だなんて・・・!」


そう言い放ち、同じ机を囲んでいる王子たちを睨みつければ他の王子たちの反応は多種多様だ。


アンタークとアクアは心から申し訳なさそうにしているし、ウィルとアレクサンダーは苦笑を漏らしている。

そしてメフィストは面白おかしいと言わんばかりに笑っている為、とても不愉快だ。


「まぁまぁそんなに怒ったら可愛い顔が台無しだよシフォンちゃん」


メフィストは私の機嫌を治めるようにいうが、逆にその発言が私の神経を逆撫でしてくる。


「誰のせいですか誰の!大騒ぎになったせいで、私とアクア様はろくに観光することま出来ずに、蜻蛉返りすることになったんですからね」


ただでさえ人通りの多い場所が、彼らが訪れた為大騒ぎになり、このままでは危険だと判断して一旦私達は城に戻る事になった。


結局その後私たちは城から出る事が出来ず、夜に行われているパレードやフードエリアも行けなかった。

それに私は心底腹を立てているのだ。


そして反省会という名目で、王子と兄、そして私の7人で晩餐会を開いていた。


給仕係の人も、アクアが立ち去るように命令した為この部屋には私達だけだ。

だからこそ私は人目を気にせず、普通であれば文句を言うことのできない程高い地位にいる彼らに説教する事が出来る。


「まぁでも幸い、祭典はまだまだ続きますし。皆さん悪気があったわけではないでしょうから、もうこれ以上は言いませんわ」

「ほ、本当ですか?」

「本当ですよアンターク様。せっかくのお祭りですからね」


そう言って私はナイフとフォークを握り直し、フォークに穴が空いたステーキにナイフを入れる。

それを合図に彼らもナイフやフォークを手に持ち、各々食事を開始した。


「あ、そうだシフォン様」

「はい。なんでしょうか、ウィル様」

「僕も君の事をシフォンって呼びたいなぁ?」

「えっ」


ステーキを一口サイズに切って食べようとした時にウィルから告げられた言葉に、私の体は魔法をかけられたように硬直した。


チラリと声がしたウィルの方を向けば、柔らかな美貌で此方を見つめていた。


ウィル・アゲート・ガーディン王子。

中立国であるグリスの王子で、その儚い美貌はブラックローズ帝国のメフィストに並ぶ。

そんな彼に見つめられると、ついドギマギしてしまう。


「そ、それは勿論!」

「わぁ。嬉しいな、有難う」


そう言って微笑んだウィルは、ご機嫌になったようで優雅にグラスを傾けて水を飲んだ。

その姿すらもまるで絵画のように美しくて、息を呑んでしまう。


「ちょっとウィルくーん。もしかしてシフォンちゃん狙ってるの〜?」

「さぁ〜?どうでしょうねぇ」

「ちょ、ちょっとウィル!シフォンは僕のッ」

「僕の?僕のなんなのアクアくん」

「こらメフィスト、あまり彼を弄るのはやめてあげてください」

「良いじゃねぇかアンターク。俺たちがこうして一つの場所に集まって周りに気にせず会話できる機会なんて滅多にないんだぜ?今日は無礼講と行こうじゃねぇか」

「あ、シフォン人参あんまり好きじゃなかったろ。兄さんが食べてあげるな!」

「あ、有難う兄さん・・・」


まさにアレクサンダーが言った通り無礼講だ。

今の彼らに一国の王子としての姿はなく、そこにいるのはただの仲のいい幼馴染の姿だった。


そしてロジャードはニコニコと笑いながら私のお皿から人参を取って、逆に私のお皿に私が好きな生ハムを入れてきた。

生ハム・・・ロジャードも好きなのに。


こういう所がアンターク曰く、自然に甘やかされていると言われる所以なのだろうか。


「兄さん、私」

「ん?どうしたシフォン!お前生ハム好きだったろ?ほら、もう一枚やろう」

「だからそうじゃなくて!」


私が不機嫌そうに言っても、ロジャードは笑って再び私のお皿に生ハムを乗せる。

こういう所が私を兄離れさせず、そしてロジャードは妹離れ出来ないのだろう。


ロジャードにバレないように小さくため息を漏らして、元々自分のお皿に乗っていた生ハムを口に入れる。

口の中にいっぱいに広がる生ハムの独特の風味と塩味が美味しくて、旨味を求めようと噛み締めてしまう。


「シフォンちゃん、生ハム好きなの?僕のもあげる〜」

「え、いや、あの」

「おっ!なら俺のもやろう!」


そう言ってメフィストとアレクサンダーは、私のお皿に生ハムを置いていく。

慌てて拒否しようとするが、メフィストはニヤニヤと笑っているし、アレクサンダーは純粋な善意で私に生ハムを渡しているようだった。


メフィストはニヤニヤとしているから、完全に弄んでいるのが分かる。


ここで反論したらメフィストの思う壺だ!!!


「有難う、ございます」

「沢山食べて大きくなれよ!」

「・・・ちょっと、シフォンは僕の婚約者なんですけど?」

「ん?だからなんだよ」


アレクサンダーとアクアが睨み合った。

確かこの二人って原作でもあまり良い仲といえない。

でもそれは分からなくもない。

国レベルで足並みが揃わないと言われるメピュア国とブラックローズ帝国は、仲は悪いが戦争などをしたことはない。


しかし、このアクアが暮らすリキュア国と、アレクサンダーの暮らすフレアランス王国はほんの数十年前まで本当に戦争をしていたのだ。

しかもアクアはその戦争で父親を亡くしているのだ。

仲良くするよう言う方が難しい。


「人の婚約者にベタベタするのやめてくれない?!」

「ベタベタなんてしてないよなぁ?シフォン」

「えっと、あのお二人とも・・・」

「束縛の強い男は嫌われるよぉ?アクアくん」

「メフィスト!アクアを揶揄うのはやめなさい!アレクサンダーもですよ。大人気ないとは思いませんか!」

「アンタークもアンタークでお堅いなぁ。シフォンちゃんもそう思うよねぇ?」

「こらこら、知らないみたいだから教えてやるが、シフォンは俺の妹なんだからな!」


急に喧嘩を始めた王子と兄のロジャード。

この中で一番年上なロジャードが声を荒げ、喧嘩に参加していると言う事実に頭が痛くなる。


そしてその原因は私なのだ、とても理不尽。


喧しいこの喧嘩をどうやって止めようか考えていると、この喧騒をかき消す破裂音が部屋に2回響いた。

その音は、唯一この喧嘩に参加していなかったウィルが手を叩いた音だった。


「はいはい、煩いよ。シフォンが困っている事に気づかないのかな?」

「あ・・・ごめんなシフォン!つい」

「ごめんねぇシフォンちゃん。盛り上がっちゃって」

「すみません・・・煩くしてしまって。お見苦しい姿を見せてしまいました」

「すまんシフォン!!!兄さんを嫌わないでくれぇ!!!」


ウィルの声を聞いた4人は私が困っている事に気付いたのか、慌てて謝罪をしてきてくれた。


「少し驚きましたが、気付いてくださって良かったです。ウィル様、有難うございました」

「いいえ〜。感謝なんてしなくていいよ、僕も彼らみたいに下心ありきだから」


そう言うと、ウィルは立ち上がり徐に私の手を掴むと手の甲に一つ傘を落とした。


「え・・・」

「ふふっ。可愛い顔、食べちゃいたいなぁ・・・ご馳走様!」


それだけ言うとウィルは晩餐会を開いていた部屋から出て行ってしまった。

残されたのはさっきと喧嘩とは比べ物にならない程の喧騒だったが、唖然としていた私は全く耳に入ってこなかった。

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