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それは本当?それとも・・・!ですわ

「シフォン〜!!!可愛いすぎるぜぇ!!!お前は天上の天使だぜぇぇ!!!」

「目が覚めた瞬間から煩いですわ!!そしてお酒臭いですわ!あの数分の間で何がありましたの?!」


私に抱きついて眠りについていたロジャードは小一時間で目を覚ましたロジャードは、私に抱きしめられている事実に気付いたのか目をカッと見開いたと思えば、頬や耳を赤くさせながら私をギュッと再び抱き締めてきた。


まるでぬいぐるみや人形を抱き締めている子供のように、私を抱き締めてロジャードはぐわんぐわんと私を振り回して遊ぶ。


「あぁやだぁ!!!他の男とイチャイチャするシフォンなんか見たくない!!!」

「急に何なんですかもう〜・・・兄さん、そんなにお酒弱かったでしたっけ?」


16歳で成人するこの国ではロジャードは19歳なので、お酒を飲んでいても問題はない。


私は前世でも今世でもお酒を飲むのが苦手なので、パーティーなどではジュースを飲むようにしているし、お酒を貰っても持つだけ。


「兄さん・・・落ち着いて」

「うぅッ・・・いつかシフォンは結婚して、俺の手の届かない所に行く」

「兄さん?」

「だから、だから今だけは・・・俺のそばから離れないでくれ」


兄さん、泣いてるの?


私の耳元で鼻を啜る音が聞こえてた。

所々聞こえる嗚咽混じりのその言葉は、ロジャードが泣いているのを証明していた。


ロジャードは滅多に泣かない。

男だから、兄だから、とか色々背負っている物はあると思うが、恐らく今まで鉄の意思で泣くのを堪えていたのだろう。


そして今回お酒の力によりその意思が弱まり、心のままに私の元へやってきて、感情を漏らしているのだ。

つまり、今目の前にいるロジャードが、本当の“兄さん”だと言う事なのだろう。


そう思うと、私には一抹の罪悪感が心の中に芽生えた。

意外にもロジャードは寂しがり屋なのだろう。

そんな寂しがり屋のロジャードに対して、私はもしかしてかなり酷い事をしてしまっていたのではないだろうか。


罪悪感がジワジワと私の心に黒いシミを作っていく。

まるで雨に濡れて震える子犬を見ているようで、そんなロジャードに私は「離れろ」だなんて言えない!!!


「ごめんなさい兄さん。理由も話さずに兄離れだなんて言って」

「・・・おう」

「別に兄さんが嫌いになったわけじゃないんですよ」


私は優しくロジャードの背中を撫でながら、はっきりと、尚且つ角が立たないように言えば、ロジャードは小さく返事をした。


そして「もっと撫でて」と言わんばかりに擦り寄ってきた。


「いくら兄妹と言っても、私たちはいずれ違う道を進む。ずつと一緒に入れるわけじゃない」

「・・・」

「一緒にいたら、いたら分だけ別れる時辛くなると思ったの」

「・・・分かってる。分かってるが、一緒にいたい。俺を、一人にしないでくれ」


ロジャードはラピスラズリ家の分家から引き取られた。

そう言えば昔、家族と離れ離れになって寂しくないのか?と聞いたことがあったな。


その時ロジャードは、離れていても絆があれば家族だと言っていた。

それなのにどうして急にロジャードは一人にしないでくれと言い出したのだろうか。


「兄さん、例え離れていても私たちは家族ですわ」

「・・・」

「兄さん?」

「・・・違う」

「違う?」


ロジャードにそう伝えると、ロジャードは俯き小さく首を横に振った。

そして、いつもの兄さんとは思えないほど覇気のない声で私の言葉を否定した。


「俺は・・・俺は!!!」


ロジャードは私の肩を掴み、私の目を真っ直ぐ見つめてきた。

その顔は一概にお酒のせいとは言えない程、真っ赤になっていた。

そしてラピスラズリ家特有の深い海の瞳には、薄い水の膜が張られていた。


「に、兄さん・・・?」


私は驚いていたが、ロジャードの真っ直ぐな瞳に目を奪われてしまい、逃げることが出来なくなっていた。


「俺は、シフォンが、好きなんだ・・・ごめん、ごめんなぁ。ちゃんとした兄に・・・なって、やれなく・・・て」


一つ一つ絞り出すように言葉を紡いだロジャードは、意識を奪われたように倒れ込み、私の膝を枕にして再び眠ってしまった。


私は固まって動けなかった。

好き?

今ロジャード、私の事を好きって言った???

それはつまり・・・いやいやいや!!!


そんなことありえない!!!絶対ありえない!

ロジャードが言った「好き」は絶対兄妹的なやつに決まっている!!!


義理の兄妹であるけど、私とロジャードは血の繋がり的に見れば親戚なのだ。

しかも書類上見れば、私とロジャードは兄妹だ。


もしさっきの「好き」が恋愛的な意味だとしても、私とロジャードが結婚する事はできない。

それをロジャードが知らないわけではないだろう。


そう思っているのに、何故か心臓がドクドクと音を立てる。

顔に熱が溜まっていくのを感じる。


私の膝上で寝ているロジャードを見つめながら、片手で自分の頬に触れる。

少し冷えた私の手のひらが、じんわりと私の頬の熱を吸収していく。


「違う・・・違う」


自分に暗示をかけるように何度も「違う」と唱える。

前世、私は真っ直ぐ好意を向けられることがなかったから、ロジャードからの言葉に狼狽えているだけだ。


絶対そうだ!!!

別にロジャードの言葉を真に受けているわけではない!!!

慣れていないだけ、慣れていないだけ。


ロジャードは酔っ払っていたから思考が鈍っていたのだ。

だからもしあれが本心だとしても、酔っ払いの言葉を信じるのは馬鹿だ!


目が覚めたとき、ロジャードが私に言った言葉を覚えてない可能性だってあるのだから。


前世じゃ、婚約者はいたけど平民の子に取られたし。

友達もいなかったし、婚約者一筋だったせいで他の人に恋をするとかもなかった。


だから狼狽えているだけであって、ロジャードの言った言葉を信じるの違う!


ロジャードは家族思いだ。

だからいずれ嫁いで家を出ていって私と離れ離れになるのが寂しいのだろう。


元の家族と過ごすよりも、ラピスラズリ家の本家で過ごした時間の方が多い。

だからこそ昔よりも離れ難くなってしまっているのだろう。


だからロジャードの「一緒にいたい」は、家族だから一緒にいたいというだけ。

断じて、こ、こ恋人的な?恋愛的な?そんな男女関係に関する「一緒にいたい」というわけじゃない!!!


そりゃロジャードみたいな顔のいい人に言われたらドキドキしてしまうけども、あくまで私とロジャードは兄妹だ。


でも、もしロジャードが恋愛的な意味で私を好きだと言ってくれたのであれば、私はどうすれば良いのだろうか。


兄妹だからという理由で断るべき?

でも、ロジャードが他の人と結婚する姿を何故か想像できなかった。

想像できていたらリリーとロジャードが一緒にいても気にしなかったはずだ。

想像すると胸がズキズキと痛くなる。


私はロジャードの方が好きなのだろうか。

いいや違う。これは恋だなんて可愛いものじゃない気がする。

これはきっと、独占欲だ。


私を一途に可愛がってくれたロジャードを手放したくないと言う、悪役じみた考えだ。

愛されたいんだ。

前世、誰からも愛されず死んでしまったから。

心のどこかで愛されたいと思っていたのだろう。


今まで目を背けて続けてきた事実を今日、改めて自覚した。


これは恋じゃない。

だから、ロジャードの言葉に応える事は出来ない。


「ごめんね、兄さん」


私はやっぱり、ヒロインにはなれない。

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