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小さな罠!ですわ

記憶を思い出した晩、私は両親と共に晩御飯を食べていた。


長く癖のない紫色の髪を持つカトリーナ・フェーチェ・ラピスラズリ母様。私に髪色は母様譲りなのね。


そして深海を閉じ込めたような青い瞳を持つアーサー・リュカ・ラピスラズリ父様。瞳は父様譲り。


ちなみに私のミドルネームであるルルーレは、父様はお母様。

つまりお婆様ルルーレ・ジーン・ラピスラズリ様から頂いた名前。


「そうだシフォン。貴方に良いお知らせがあるのよ」


食事を取っていた私に、母様のウキウキした楽しそうな声が聞こえ、私は顔をあげ母様の顔を見た。


母様の顔は、その声に比例するようにまるて悪戯をしている子供のような顔をしながら微笑んでいた。


私が思わず首を傾げると、母様は横に座る父様の顔を見た。

父様も優しそうに微笑むと、母様と合図するように頷き、その仕草を見てますます分からなくなった。


「シフォン、お前の婚約者が決まったよ」

「こ、婚約者?!・・・あ、すみません・・」


思わず声を荒げ椅子から立ち上がってしまい、私は自分の醜態に気づき急いで座り居住まいを整えた。

大きく深呼吸をして、何とかバクバクする心臓を抑え父様と母様の顔を伺うように覗いた。


「私に、婚約者ですか・・」

「えぇ!相手は誰だと思う?とっても素敵な方よ!」

「あぁ。きっとシフォンも望んでいる相手だろう」


アンターク・ミュゼット・シュタインですよね父様、母様。えぇシフォンは分かっております。


とっても素敵な方?アンタークと仲良くすればメフィストの『無差別アンターク嫌いセンサー』に引っかかり、下手をすればリリーと同じく殴られ「可愛い」と言われてしまうかもしれない。


アンターク自体は嫌いではないが、その代償があまりにも大きすぎる!


私も望んでいる相手?いえいえ望んで等いませんよ。私は光の王子より守護の王子の方が良いんです。


ちょっと容姿とか頭脳とかにはあまり自信ないけど・・・。

ここで私がアンタークと答えたら、母様たちはビックリしてしまうだろうし、此処は無難にやり過ごそう。


「さ、さぁ~?検討もつきませんわ」

「ふふっそうよねー!お相手、言っても宜しいですか旦那様」

「カトリーヌは楽しみで仕方ないんだね。まぁ大事な一人娘だし、仕方ないが・・言っても良いよカトリーヌ」

「有難うございます。シフォン、貴方の婚約者は・・・アクア・ガブリエル・マリン様よ!」

「ア、アクア様?!」


再び勢いで立ち上がりそうになる足を必死に抑えたが、声だけは押さえきれず逆に足を抑えた反動で、めちゃくちゃ大きい声が出てしまった。

私、こんなにも声が出るのね。


それにしても、婚約者がアクア・ガブリエル・マリン?!原作では私の婚約者はアンタークになるはずじゃなかったの?!


しかも、アンタークになった場合ウィルにしてもらおうとした私の作戦!

うーん、でも安泰でわけでもないのよねアクアの国も・・・。



私達の住んでいる大陸は、魔法が原因により国によって気候がまったく違うのだ。


まず、光の王子アンタークの父親が納め私達が暮らしている国、『メピュア国』温暖な気候で、作物などの農業によって発展してきた国。


次は、炎の王子アレクサンダーの父親が納める情熱の国、『フレアランス王国』熱帯な気候で、砂漠や火山活動が活発。

石油などの燃料も豊富で工業によって発展した国。


もう一つは、水の王子アクアの母親が納める国『リキュア国』海に面したリキュア国は漁業と、美しい海を全面に出した観光国家。

この大陸初の女王という事で、世間を騒がした屈強な女性が国を治めている。


次は、守護の王子ウィルの父親が納める平和な国『グリス』自然が豊富で温泉街として有名な国。

現国王の守護魔法により国一面が見えない盾で守られており、外からの攻撃を防ぐことが可能。


最後は、闇の王子メフィストの父親の納める国『ブラックローズ帝国』独裁国家と言われる程大陸1軍事力に長けた帝国。

黒い噂が後を絶たないが、目立った争いを起こしていない国。


という風に分けられている。

国の中じゃ私達の暮らしているメピュア国か、ウィルの父親が納める王国グリスが一番平和と言っても良いだろう。


特にメフィストの住むブラックローズ帝国なんて論外だ。

生きている心地がしない。


入国した瞬間暗殺されるんじゃないかと、私は内心冷や冷やしている程だ。


いや、待て待て!

重要なのはそこじゃないはず。

私が一番気にしないといけないのは、婚約者がアンタークじゃなくアクアだという事。


この時点で原作とは違う事が起こっている。まさか、まったく同じことは起きないという事だろうか。


アクアの母親が納める国と、アレクサンダーの父が収めている国は数年前に終戦したばかり。


若しかしたら再び争いが起こるかもしれない。

もしかして、この婚約。何か裏がある?


「どうして、私とアクア様の婚約を?」

「ほら、シフォンの周りのご令嬢もどんどん婚約者が出来ているでしょう?こんな可愛いシフォンが、取り残されるなんて可哀そうだと思って」

「カトリーヌが見合い話を睨みつけて選んだ相手だ。シフォンの将来も、我がラピスラズリ家も安泰だ」


父様も母様も、ソレらしい理由をつけてニコニコと愛想の良い笑みを浮かべている。


けど私はその笑みに覚えがあった。

この笑みは何か裏があるとき、嘘をついているときに浮かべる笑みだ


前世、私はそれなりに高貴な立場にいた。

20歳で病死したが15歳で社交界へデビューした私は、大人同士のドロドロとした腹の探り合いが日常的に行われていた。


ダンスパーティー。

表面上は美しくても、お互いに欺き騙し、裏切り合う世界。


そんな中を生き抜いて来た私は、人の嘘を見抜くの力を無意識に見つけていた。

ドロドロとした世界を生き抜くために身に着けた、心と体の防衛本能といってもいい。


私は気づいていた。

嘘や人を欺こうとしている人は、何時もヘラヘラと理由をつけて愛想の良い笑みを浮かべていたという事を。


口元隠す人もいるが、それでは「私にはやましい事があります」と言っているようなものだ。


その為高度なテクニックを身に着けた人は、口元を隠さず逆に笑みを浮かべ巧みな話術で誘導するのだ。


その人に騙され、利用され嘆き悲しむ人を私は少なからず見てきた。


私が、体のまま精神まで幼い子供ならこの婚約に裏など思わず、大感激して受け入れていたことだろう。


しかし今の私は違う。孤独な死を免れる為、両親の良い様に使われるわけにはいかないのだ。

・・・少し罠を仕掛けてみるか。


「父様、母様」

「ん?如何したんだいシフォン」

「・・・私、アクア様と婚約したくありません」

「?!ど、如何してシフォン!相手はアクア・ガブリエル・マリン様!一国の王子様よ?上手くすれば貴方は王妃。いいえ、もしかしたら一国の女王になるかもしれないのよ?!如何して嫌なんていうの!」


ほら、慌てだした。目に見えて何か慌てている。

母様、それでも貴族令嬢ですの?

もっと優雅に、もっと御淑やかに待ってくださいませ。

それではまるで、私に嘘をついているようではないですか。


え、悪役令嬢みたいですって?

使える物は使うだけよ。

これは仕方ないのよ、仕方ない罠なのだから。


「落ち着きなさいカトリーヌ・・・シフォン。如何して婚約したくないんだい?」


さすが、父様。あんな小さな発言では、狼狽えませんか。

いえ、表情に出てないだけかもしれませんが。

さーて・・・父様を狼狽えさせる隙は一体何処かしら?


私は薄らと口元に笑みを浮かべながら、父様の事を見つめた。

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