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物語は動き出す!ですわ

久し振りの更新となります。お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!

重苦しい時計の音が沢山の本が収納された本棚が並ぶ図書室に、私は深くため息を漏らしていた。


窓を盗み見れば、青々と茂る木々を飛び回る可愛らしい小鳥とその鳴き声。

軽く吹く風に揺れる葉に雲一つない青空が小枝の隙間から見える。


「はぁぁぁぁ・・・」


そんな晴天に似合わない溜息を零しながら、私はさっきから一ページも進まない小説を諦めて本棚に戻す。


本を読み為に来たのに、本を読まないとは何事か・・・。


しかし、今回私はこのような心境に陥ってしまうのは仕方がない事だとご理解頂きたい。


ついに恐れていた日が来てしまったのだ。

とうとう来てしまったのだ。


今日、リリー・アモントが空から落ちてくる。


もう一度で説明すると、16歳の春にリリー・アモントは暇つぶしで訪れた図書室で、光り輝く本を見つけ手に取った時、興味本位でその本を開いたリリーは、謎の光に包まれ、目を開くと空を落ちるのだ。


その時、乗馬中のアンタークに拾われる・・・という話から『リリーと魔法の王子様』という物語の歯車は動いて行くのだ。


アンタークが乗馬していて、リリーと出会ったのはこのラピスラズリ家からもそう遠くない湖、リュミエール湖の畔を相棒の白馬と散歩しているときだ。


そして我が兄ロジャードだから、昨日「アンターク王子が、明日リュミエール湖で乗馬するらしい」という話を聞いてしまったのだ。


今までどうやってシフォンの悪役ルートを回避する方法を、何度も何度も考えてきた。

もう頭がパンクするぐらい考えてきた。


その結果私が思いついたのは、アンタークとリリーの出会いを妨害する事だった。


ぶっちゃけ私はアクアと婚約者同士になっているのだから、アンタークとリリーがどうなろうがそんなに関係がないのも事実。


しかし、アンタークはこの大陸にある全ての国の王子と面識があり、アレクサンダーは勿論他の王子とリリーが出会う確率が大いにあり得る。


そうなれば、なんやかんやのもつれがある事は確実!

であれば、なんとしてでも私はアンタークとリリーの出会いを妨害しなければならない。


しかし、リリーが此方の世界にやってくる事はこの世界の理と言っても良い避けようのない運命だ。


その運命を受け入れつつ、妨害するには出会いを変える事を私は思いついた。


私が8歳の頃から習ってきた乗馬がようやく実を結ぶのだ。


詳しく説明すれば、まずリリーが空から落ちてくる。


本来リリーを受け止めるのはアンタークだが、アンタークには悪いがその役割、私の譲ってもらう。


母様との約束に決して乗馬をしている事を他者に露見した場合、乗馬訓練は禁止するように言われていた。


このままでは、アンタークに乗馬訓練を受けている事がバレてしまうが、別に構わないと踏んだ。


訓練は3か月ほど前に全て終えている、訓練は禁止されるば乗馬が禁止されるわけではない。


え?小賢しいですって?ごめんなさいね、私元悪役令嬢ですので。


兄さんにプレゼントしてもらった黒い馬の名前は『クロエ』と名付けた。

クロエはとても賢く、気性の荒くない立派な馬だ。

おっと、馬自慢を始めたらキリがなさそうなので、本題に戻る事にしよう。


アンタークは紳士だし、性格も良かった。

他言無用とお願いすれば黙っていてくれる可能性は大きい。


それを利用して、ラピスラズリ家の体裁も保つ事が出来る。


そして私は兄さんから詳しい話を聞いて、アンタークが何時頃リュミエール湖に向かわれるのかを聞いた。


なんでも午後の14時頃にはリュミエール湖到着を目標としているという。

そして現時刻は13時。


あと一時間でアンタークがリュミエール湖に到着し、リリーが空から落ちてくる。


その場面を、私は何としてでも妨害しなければならないのだ。


リリーを助けたのち、受け止めたのは自分なのだからと言い、リリーを我が屋敷まで連れ帰る。


平民の子なのだから掃除や洗濯ぐらいは出来る設定だったはず。

そしてリリーをラピスラズリ家で帰る方法が見つかるまで、我が家のメイドになる事を進めればいいのだ。


「ふふっ・・・完璧だわ!」


あら、そろそろ支度をしなければ。

私は椅子から立ち上がると、スキップしたくなるような歓喜を理性で抑え込むと自室に急いで入り込んだ。


「さぁ!支度をするわよランファ!」

「かしこまりましたお嬢様」

「って・・・ランファは・・・ん?」


今、後ろから聞こえるはずのない声と、私への返事が聞こえたような気がした。

恐る恐る振り返れば、そこには故郷へ帰ったはずのランファがニコニコとした微笑みを浮かべながら、いつも通りのメイド服に袖を通したランファの姿があった!


「ラ、ランファ?!どうして貴方が?!故郷へ帰ったのじゃなかったの?!」

「そのはずだったのですが・・・兄妹が今出産ブームを迎えているようで、今里帰り者続出しているようなんです。しばらく実家に身を寄せて、1,2年後に独り立ちしようと思っていたんですが。船到着を待っている時に、急便が来て今大忙しで、戻ってくるのをもう少し伸ばしてくれないかって・・・」

「つ、つまり・・・?」

「独身の私が迷惑になるわけにもいかなかったので、旦那様にお手紙出したらもう一度雇ってもらえる事になったので、再びお嬢様専属メイドに戻る事にしました!」

「あんな感動的な別れしたのに?!」


なんというか凄い脱力感がある。

朝からランファとの別れに泣いて、伝統的刺繍を学ぶと言ったランファを止めたい思いを押し殺して見送って、泣くのを堪えながら手紙書いて・・・。

あの時間は一体何だったのか!!


「それよりお嬢様、御仕度は?」

「あぁ、そうね。うん、そうだわ・・・ランファ、あの服を用意して」

「あの服・・・という事は例の服を?」

「えぇそうよ。ついにあの服を着るときが来たのよ」


例の服とは、この黒いスキニ―パンツと白いシャツ事である!


ドレスでは上手く乗馬を乗りこなす事が出来ない。

だから私は母様に内緒で作って貰っていたのだ。

女性らしさを強調するさらしを巻いて潰し、シャツに袖を通し紫色のスカーフを首に巻く。


黒いスキニ―パンツを履き、動きやすいブーツに履き替える。

何時も下ろしている髪の毛を、紐で一つに纏め化粧は薄めに!元の顔立ちが可愛くて助かった!


ナチュナルメイクなんて、前世でやっていたらとんでもない化け物が出来上がっていた。


「どうかしら!ランファ」

「はい、とても可愛らしいです。しかし、どうして胸まで・・・それでは形が」

「良いのよ今日は」


だってリリーを受け止めるのに、胸があったら邪魔でしょ?

え?邪魔になるほどないだろって?だまらっしゃい!


この格好見たら、きっと母様は卒倒するだろうし、父様は苦笑を漏らすだろうし、兄さんに至っては爆笑するだろうな。


けど、この格好が一番乗馬するときに楽なのだから仕方ない。


普段の乗馬の訓練の時は、軽めのワンピースを着たりして凌いでいたが、もう我慢の限界だったのだ。


この事実を知っているのはランファと、近衛騎士であるラムだけである。


兄さんすらも知らないのだ。

だって、多分反対はしないだろうけど、ゲラゲラ笑われるのが関の山だからだ。


「よし、行くわよ!」

「ど、どちらへ?!」


ランファが慌てて言うと、私は悪戯っ子の笑みを浮かべてこう伝えた。


「リュミエール湖よ!」


さぁ、物語を始めましょう!

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