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シフォンの誕生日パーティー!ですわ

華やかなパーティー会場。多くの来場者が私に向かってお祝いの言葉を口にした。


「シフォン!お誕生日おめでとう!」

「エリザ!来てくれたのね、嬉しい!」

「勿論よ!大切な親友の誕生日だもの。それにシフォンも私の16歳の誕生日祝いに来てくれたし、綺麗な髪飾りまでプレゼントしてくれたじゃない」

「わざわざ今日付けてくれたの?よく似合ってるわエリザ!やっぱり、モデルが良いと髪飾りも一層輝くのね」

「もう、大袈裟よシフォン・・・」


アンタークの城で開催されたお茶会で、知り合ったエリザベート・ジーン・カーティス伯爵令嬢。


愛称であるエリザと呼び合い、多少立場は違えどお互い愛称で呼び合ったりする仲であり今や親友と言っても良い間柄になったのだ。


それでもやっぱり、伯爵家の娘に呼び捨てにされるのは如何なものかと言う人間もいた。


まぁ、それはそれでちょっと弄って黙らせておいたが・・・。

今更エリザに敬語使われても、なんか変な気がするしね。


エリザと別れた後、私の元に現れたのは光の王子、アンタークだった。


「シフォン嬢」

「はい・・・?!アンターク様!この度は、私の誕生日にご出席くださり、有難うございます」

「いえ、この度は16歳のお誕生日おめでとうございます。細やかながら僕からも贈り物をご用意したしましたので」

「アンターク様から態々・・・有難うございます」

「滅相もないです」


アンタークは微笑みながらそう言うが、この物腰の柔らかさと紳士溢れる口調。


これぞ、『リリーと魔法の王子様』の主要キャラクターを担っていたことはある。


初めて出会った時も、その顔つきの端正さには驚かされたが、成長するにつれ小説のアンタークに近づいて行く。

当たり前の事なのだが、もうすぐ小説の本編が開始するのだと嫌でも思い知らされる。


アンタークの美貌は既に、メピュア国でも随一と言われまだ婚約者もいないという事で多くの令嬢達が目を光らせているという。


そりゃそうだ、こんな美形で性格の良いの人に浮いた話一つないのだがら、恋に恋する乙女達は奪い合いを続けているという。


小説内のシフォンだったら、そんな令嬢達を鼻で笑っていただろうけど。


「それじゃあ、また」

「はい。今日は楽しんでいってくださいませアンターク様」


アンタークと別れると、待ってましたと言いたげにやってきたのはアレクサンダーだった。


「シフォン!誕生日、おめでとうな」

「アレクサンダー様!今宵は態々御出で下さり、誠に有難う御座います」

「そんな堅苦しくしなくても良いのになぁ・・・まぁいいや、あんなちっさかったシフォンがもう16歳か。大人の仲間入りだな」

「アレクサンダー様は今年で17歳ですものね」

「早いもんだよ・・・ロジャードさんは何処に?さっきから姿が見えたんだが・・・」

「ロジャード兄さんですか?何やら企み事があるようでしたが」


アレクサンダーもすっかり大人びて、がっしりとした青年の体つきに変わっていた。


ちなみにロジャード兄さんとアレクサンダーは、実は今では師匠と弟子の関係になっているのだ。


初めて出会った後、私とアレクサンダーは文通を続けていた。

その時手紙にロジャード兄さんが、剣術が得意である事を書いたのだ。


するとアレクサンダーは、ぜひロジャード兄さんと手合せしたいと願い出てロジャード兄さんもそれを承諾。


その後、ロジャード兄さんとアレクサンダーは手合わせをしたが、ロジャード兄さんの剣術の腕前は既にこの国で勝てる者はいないと言われる程成長していたので、アレクサンダーは全敗してしまったのだ。


もし気分を害して、ロジャード兄さんに何かあったらと冷や冷やしていたのだが、逆にアレクサンダーはロジャード兄さんの強さに尊敬を抱いたのか、弟子入りを志願したのだ。


一国の王子として良い物かと思っていたが、フレアランス王国はアレクサンダーが望んでいるのであればという事で許可したのだ。


そしてアレクサンダーは、月に2,3回家に来てはロジャード兄さんと手合せしていたのだ。


「相変わらずロジャードさんは、シフォンの事が大好きなんだな」

「えぇ、まぁ・・けど昔からそうですから」

「俺達がこうして話してるとき、何度も途中で割り込んできたり・・・な」

「その節は大変ご迷惑おかけしました・・何度も注意したんですけど」

「いや気にすることはない。そうだ!俺もシフォンにプレゼント用意しといたんだ!良かったら貰ってくれよな!」

「はい、後で部屋で見させてもらいます」


アレクサンダーと別れると、後からトンッと背中を軽く押され思わずよろめいたが何とか扱けずに済んだ。


こんな事するのは、一人しかないない。


「なんですが、ウィル王子」

「御久し振りシフォン様」


ニコニコと愛嬌の良い笑みを浮かべている、グリスの王子ウィル。

昔も儚げな美貌を持って居たが、成長するにつれてなくなると思っていたけれど青年となった今でも、その儚げな笑みは存命していたようだ。


「お誕生日おめでとうシフォン様、あんまり会いに来てくれないから寂しかったなぁ?」

「お祝いの言葉、どうも有難うございます・・お手紙出したでしょう」


思わず困った声で居ると、ウィルは肩を揺らして笑いながら言葉を発した。


「ふふふ、ごめんよ困らせるつもりはなかったんだ。アクアとは如何?仲良くやっているかな」

「文通は今でも続けていますよ。二人でお茶会もしました、個人的には仲良く出来ていると思います」

「そっか、そっか。そういえば乗馬は?手紙で乗馬を始めたって書いてたじゃない」

「あぁ、ありましたね。無事母様を説得して、今ではロジャード兄さんと共に草原を走り回ってますよ」


そう返すと、目を丸くさせたウィルは再び喉を鳴らして笑い始めた。 

まったくなんだろ云うのだろうか。

私は至って真面目に質問に答えていると言うのに・・・。

ウィルの笑いのツボは分からない・・・。


「相変わらずシフォン様は面白いね。涙が出そう」

「涙が出る程笑わせる事、言ってないんですが」

「君はそのつもりでも、君がやってる事凄く面白いんだよ?しかも無自覚と来たか、あぁ面白い」

「・・・」


思わず無言になると、私の気持ちを汲み取ったのかウィルは申し訳なさそうな表情をしながら微笑んだ。


申し訳ないと思っているのか、笑っているのかどちらかにして欲しい物だ。


「ごめんよ、君をからかうのが面白くて」

「私は全然面白くもないですし、楽しくもないです」

「そんなに怒らないでよ、せっかく可愛い顔してるんだから。そんな可愛いシフォン様に似合う贈り物をさせて貰ったからさ」


それだけいうと、ウィルは何処かへ行ってしまった。

言いたい事だけ言って消えやがったな・・・おっと言葉使いが悪くなっている。

私は公爵令嬢、私は公爵令嬢!


そう暗示を掛けると、急に視界が暗くなった。

目元から感じる人の体温にしては冷たい感触。


すると耳元で「だーれだ」という実に楽しそうな声が聞こえた。


「・・・メフィスト様」

「せーいかーい!もう如何して分かったの~?」

「手が冷たかったので」

「え?それだけで分かったの?言っちゃ悪いけど、気持ち悪いね」

「え?失礼すぎませんかね」


なぜ私は一国の王子に対して、こんな失礼な言葉がつらつらと出てくるのだろうか。

きっとこれがメフィストじゃなかった、私はとっくに死刑になっていたと思う。


「ちょっと~それが一国の王子に対する態度」

「御免あそばせ?」

「それはそれでムカつくなー・・・まぁいいやシフォンちゃん、お誕生日オメデトウ~」


心にもない事言うな、この男。

メフィストは小説の中でもウィルと続いてかなり美形という設定が押し出されていた。


それもそのはずで、メフィストは目に痛い程の美を持っている。

ウィルが優しい光の美貌なら、メフィストは突き刺すような鋭い光の美貌。


「有難うございます、メフィスト様」

「心にもない事言うなぁとか思ったでしょ?」

「いえそんなまさか」


メフィストとの会話も適度に終わらせた。

どうやらメフィストからもプレゼントがあるらしく、有り難く貰っておいた。変な物じゃないと良いなぁ


「ね、ねぇ!」


誰かが私の肩を掴み、声をかけてきた。

振り返ると、そこには顔を真っ赤にしたアクアの姿があった。


昔と変わらず可愛い顔つきだけど、やっぱり何処か大人っぽい雰囲気のある青年へと成長を遂げていた。


やっぱり成長期は凄いな。

しばらくバタバタしてて会えなかったけど数か月合わなかっただけで、ここまで見違えるとは・・・。

けど、可愛い所は変わってないな。


「アクア様!来てくれたんですね!」

「うん・・ごめん、肩痛くなかった?」

「全然大丈夫ですわ」


そう伝えると、アクアはホッとしたような表情をした。

それにしてもしっかりとした体つきになったな。


小説では華奢って表現されていたけど、確かに騎士とかに比べたら細いんだろうけど結構しっかりしていると思う。


ついつい成長したんだなぁと、母親目線で見てしまう・・・。


「メフィストとかに、嫌な事されなかった?」

「いえ?まったくですわ、逆に皆さん良い人ばかりで・・・」

「そっか・・・シフォン、誕生日おめでとう」

「有難うございますアクア様。それと、アクア様。おめでとうございます」

「え、何が?」


アクアはどうして私がこんな事を言っているのか分からないと言いたげだった。


私は微笑むと、アクアの手を包み込んだ。


「魔力の開花したとお聞きしました。水の魔力だとか」

「あ、あぁ・・・なんだ知ってたのか。驚かせようと思ったのに」


アクアは納得行ったという表情をすると、悪戯がバレたような表情をした。


他の王子達は既に魔力が開花しており、開花していないのはアクアだけだったのだ。


それを焦っていたアクアだったが、ついこの間魔力が開花したのだと我が国までその歓声は聞こえてきた。


「本当に、喜ばしい事ですわ」

「・・・うん。有難う」


これで『光の王子アンターク』『炎の王子アレクサンダー』『水の王子アクア』『守護の王子ウィル』『闇の王子メフィスト』が出揃った。


と言う事は、もうすぐリリーが本に出会ったこの世界へやってくる。


アクアとの一通りの会話が終わり、その後何とか押し寄せる人々に対して感謝の言葉を紡いた。


人々が疎らになり始めた頃、少しでも楽になろうと思い私はこっそりパーティー会場を後にした。


会場からは賑やかな話し声が聞こえるが、私が歩いている廊下は人がおらず会場の声が静かに木霊していた。


テラスのドアを開けると、涼しげな風が私を頬を撫で人の熱で火照った体を醒ましてくれた。


「はぁ・・・疲れた」

「お疲れシフォン!」

「うわっ!!に、兄さん?!ビックリさせないでよ!」

「悪ぃ悪ぃ」


花園の中にあるベンチに腰かけて休んでいると、花壇から現れたのは今まで姿を消していたロジャード兄さんだった。


「一体今まで何をしてたの?アレクサンダー様がロジャード兄さんを探していたわ」

「おおーそうか!なら後で会いに行かないとな」

「今会いに行かないの?仮にも王子なのに」

「俺はシフォンに会いに来たんだよ、ほらこっち来い」


ロジャードは私の腕を引っ張ると、ベンチから立たせた。

一体何処へ連れ出そうというのか。


そう思いながら私はロジャード兄さんの後をついて行った。

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