友人作りは一種の才能!ですわ
父様に言われやってきたお茶会。それはお城の庭園で開催された。
幼い王子であるアンタークとアレクサンダーが開くという事で、大人より子供の方が多い。
そして社交界のダンスパーティーを意識した立食形式で、8歳から12歳の男女が参加している。
15歳の頃に社交界の世界へ足を踏み入れる貴族の子供達は、こういった場でマナーやルール、そして友人という人脈を広げるのだ。
まわりを見渡せば、可愛らしいドレスへ新調したと思われる新品のスーツに身を包んだ令嬢や子息達が会話に花を咲かせていた。
私?私はというの・・・。
「・・・暇ですわね」
一人で椅子に座りながら、のんびり紅茶を嗜んでいた・・・。
いや駄目だという事は百も承知なのだ。
分かってはいるのです。
けれど、今まで心からの友人を作った事が無かった私に、友人の作り方など分からない。
しかも同性の友人となると、どうしても裏を読んでしまう。
重い溜息を洩らしながら、紅茶をソーサーに静かに戻した。
空は憎い程青々しく、雲一つない青空。
文句の言いようの無いほどの晴天だった。
憎たらしい程の晴天。いっその事土砂降りの雨になってしまえばいいのに・・・。
なんて思いながら再び会場へ目を向けた。
すると何処からともなく、女の子の黄色い歓声が響いた。
何だ何だと思いながら、立ち上がり声がした方へ向かうと、そこには多くの女の子達が群がっていた。
砂糖に群がるありんこか何かなのかな、貴方達は。
そう言ってしまいたい気持ちをグッと抑え、その人たちの隙間を縫うように覗き込んだ。
すると其処には思わず目を瞑ってしまいたいほどの、暴力的な美貌だった。
エンジェルリンクが出来る程艶やかな金髪、あれは光の王子アンタークだな。
もう一人は燃え上がるような赤い髪の毛は、炎の王子と呼ばれるアレクサンダー。
そして何故いる闇の王子、メフィスト。
アンタークはニコニコと笑っているし、アレクサンダーも愛嬌の良い笑みを浮かべて相手をしている。
そして私が一番苦手とするメフィストは口角を上げて、胡散臭い笑みを浮かべていた。
関わったら碌な事にならない気がしてならない。
私はドレスを翻し、元いた場所へ戻ろうした。
「あ、シフォン嬢!」
一人の少年の声が耳に届いた。はっきりと名前を呼ばれ、振り向かなければならない状況へ追い込まれた。
このまま振り返らず戻ってしまえば、確実に不敬罪となる。子供と言えど一国の王子なのだ。
そんな事になれば、ラピスラズリ家の名折れだ。
「は、はい」
ビクビクしながら振り向くと、橙色の瞳を此方に向け手を伸ばしているアレクサンダーの姿だった。
呼び止める気満々じゃないか・・・。
私が振り向いた事に対して安堵の笑みを浮かべ、此方へ向かってくるアレクサンダー。
来るな来るな。周りの令嬢の目線が痛いんだ
「急に呼び止めて悪かったな。お前シフォン・ルルーレ・ラピスラズリ令嬢だろう?アクアと婚約したっている」
わぁフルネームで思いっきり個人情報吐きやがったこの男。
アクアと婚約したという事に、周りがザワザワし出したじゃないか。
どうしてくれるおつもりなのですか!!!
所処聞こえる『あの方が噂のシフォン様・・・?』『結構可愛らしい方ね』『でもちょっと地味じゃない?』という令嬢たちの目踏みするような発言。
おい三番目、聞こえてるからな。
前世で鍛えた愛想笑いを浮かべながら、アレクサンダーに対して淑女の礼を取った。
「御機嫌よう、アレクサンダー・レッド・ルビー様。私のような一貴族の事をご存知頂いて感激です」
「何言ってるんだ、シフォン・ルルーレ・ラピスラズリと言えばアクア王子と婚約した事で有名だ。知らなかったのか?」
「え」
知りません、まったく、砂の粒ほど知りません。
思わず声が漏れてしまった。
恥ずかしい・・・。
咳払いをして、態勢を整え再び口元に笑みを浮かべた。
取り敢えず早くここから離れたい。
「アレクサンダー、急に女性へ声を掛けるのは感心しませんよ」
「あはは~アンターク頭固ーい」
オイオイ厄介なの約二人ほどこっちに来てしまったじゃないか。
思わず引き攣りそうな笑みを必死に堪え、二人に目を向けた。
物腰の柔らかい雰囲気を持つアンターク。
そしてニヤニヤと胡散臭い笑みを浮かべながらアンタークに突っかかるメフィスト。
ついに、『リリーと魔法の王子様』に出てくる主要キャラクターほぼ全員に会ってしまった。
「初めましてシフォン嬢。アンタークです、急に声をかけてしまってすみません」
「やっほーシフォンちゃん!僕メフィストだよー?勿論知ってるよね?」
「は、はい・・勿論お二人とも存じております」
もしかしたらご自分より私の方が、貴方達に詳しい可能性もありますが。
なんていう美貌の暴力。
アクアは可愛い系、ウィルは儚い系の美貌でそれはそれなりにパンチがあった。
しかし、この3人はやはり主役級に役割を持つため美貌のレベルが半端ではない。
どっちしても、私から見れば目が痛い。
「今日は俺達が開催したお茶会に来てくれてありがとうな!実は俺、シフォン嬢と話して見たかったんだ」
「はぁ・・・あのシフォンで結構ですので」
「そうか?じゃあ改めて宜しく頼むな!シフォン」
「はい。お話しと言っても、私アレクサンダー様に興味を持っていただけるような事は何も・・・」
そう言って早く離れようとすると、誰かが私の肩を抱いた。
思わず顔を向けるとメフィストの姿があった。
うわぁめっちゃ肌白いし、髪の毛も艶々、睫毛長くて、軽く影出来てる。
そんなに睫毛絶対に要らないような気がする。
「僕もシフォンちゃんに興味あったんだー。じゃなかったら、アンタークが開催するパーティーなんて来ないよ」
「何ですって?聞き捨てなりませんねメフィスト・・・そもそも誰が貴方に来て欲しいと頼みましたか?」
「ちょっとアンターク話に割り込んで来ないでよ。僕は今シフォンちゃんの話してるんだから」
「その言い方はなんですか!大体貴方は何時も何時も」
「おいお前ら!シフォンの前でみっともない事するな!せっかく来てくれたお客様に失礼だろう!」
メフィストには右手を、アンタークには左手を引っ張られテンヤワンヤになっていた所に、この小説きっての兄貴肌であるアレクサンダーが止めてくれた。
アンタークとメフィストも渋々と言った形で、私を手を解放してくれた。
周りの令嬢子息からの奇妙な物を見るような目が痛くて、つい俯いてしまった。
御免なさい父様。
どうやら私同性の友人作るの破壊的に下手なようです。
せっかく同性の友人を作る様に、私を誘ってくれたのに。
私はその期待に応えられませんでした!
「あー・・・ここじゃ目を引くな。また今度手紙を出す、急にすまなかったなシフォン」
「いえ、大丈夫です・・お気になさらず」
「えー僕もっとシフォンちゃんとお喋りしたーい」
「いい加減にしなさいメフィスト。貴方はいい加減その我儘を直すべきです。見てて腹が立ちます」
「僕の態度でアンタークが、怒るなら万々歳なんだけどー」
やはり小説内と同じように、メフィストとアンタークは仲が悪いようだ。
そんな二人を嗜めながら、アレクサンダーは二人を連れて他の所へ行ってしまった。
一人残された私は、早く帰りたいという想いを胸に、会場を後にした。
「これじゃあ、友達なんて・・・」
そんな軽い絶望を胸に、私は人気のない廊下を一人歩いていた。
トボトボと重い足取りで廊下を進んでいた。
「あの!」
「は、はい?!」
いきなり後ろから元気のいい声が聞こえてきた。
思わず振り返ると、緩やかにウェーブした栗色の髪の毛をハーフアップにし、少し釣り上がった翡翠色の瞳が特徴的な可愛らしい少女だった。
どうして声を掛けられたのか分からず、頭の上にハテナマークが浮かんでいた。
少女は徐に手を出すと、そこには一枚のハンカチがあった。
「これ、貴方のでしょう?シフォン・ルルーレ・ラピスラズリ令嬢」
「え?!」
ポケットを確認すると、入れていたはずの白いシルクのハンカチが姿を消していた。
少女が持っていたハンカチを受け取ると、肌触りも刺繍も私が今朝ランファに渡されたハンカチその物だった。
どうやら会場を後にしているとき、落ちてしまったらしい。
「あ、有難うございます!えっと・・・」
「自己紹介が遅れてしまってごめんなさい。エリザベータ・ジーン・インカローズです」
「インカローズ・・・間違ってたらごめんなさい、もしかしてお爺様は、カーティス様では?」
「お爺様を知っているのですか?シフォン様」
「えぇ・・・私の兄がカーティス様が管理しているサフィラスの作品の大ファンで・・・この間グリスであった閲覧会の時お会いしたんです」
「そうだったのですね」
エリザベータは微笑み、その笑みはとても可愛らしい物だった。
そういえばカーティス言ってたような気がする。
エリザベータには婚約者がいて、喧嘩の毎日だとか。
それにカーティスは悩んでいると言っていた。
けど、こんな礼儀もよくて淑女の礼もしっかりしているエリザベータが遺伝子レベルの喧嘩をするのだろうか・・・。
「あの、もし宜しければ敬語なんてつけず、友人になりませんか?」
「良いのですか?!シフォン嬢さえ宜しければ・・・」
「私は勿論!宜しくねエリザベータ」
「宜しくシフォン!私の事は、エリザって呼んで!」
「有難う!あ、私そろそろ行かないと・・じゃあねエリザ!また手紙出すわ!」
「えぇまた!」
出来た、出来たよ友達!父様!
私、同性の友人が、しかもめちゃくちゃ良い子が出来ました!
ちょっと王子達に絡まれて冷や冷やしたけど、エリザっていう可愛い友達が出来た!
これで、父様にちゃんと報告出来る!
どんなウキウキ気分だった為、アレクサンダーから手紙が送られてくる事などをすっかりと忘れてしまっていた私であった。




