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ゆったりまったり!ですわ

「あぁ・・・良いお湯」

「生き返りますねー、シフォンお嬢様」


現在私は、グリスの名物でもあり国家を支えている資源である温泉に浸かっている。


可愛くない声を出しながら、広い湯船につかり、足を普段では伸ばせないぐらい伸ばした。


こんな声を聞かれたらと思うが、しかし、幸いな事にこのお風呂にいるのは専属メイドであるランファと私の二人だけである。


あの後ソル・ソロルを含めサフィラスの作品を見て回り約2時間近く振り回されたのだ。


興奮していた兄さんだが、私のヘロヘロ具合を見てさすがに疲れただろうと察ししてくれたのか、なんとか宿に帰る事が出来た。


やっぱり公爵家の人間が生活するだけあって、かなりの高級宿らしく、ふっかふかなベッドだった。


現在は、その宿にある温泉に浸かって旅の疲れを癒している所だった。


「本当に、気持ち良いですねぇ」

「良いなぁグリスの人達・・・聞く話によると、一般家庭でも温泉なんですって」

「なんと、それは羨ましい。このお湯、冷え性や肩こり、睡眠不足を和らげる効果があるそうですよ」

「所謂効能というものねぇ・・・」

「よく御存じですね・・・」


岩などで出来た湯船は、風景とマッチしており肉体的にも精神的にも癒してくれる。


ついつい長湯してしまう。

子供の体に戻っても、興味のない物を見せられ続けると此処まで疲労するものなのね・・・。


「お疲れですね、シフォンお嬢様」

「当たり前。約2時間も兄さんのサフィラス好きに振り回されたのよ?よく耐えた方じゃない?」

「よく頑張っておられました。遠くからラムさんと共に見守っておりましたが、もう顔が・・・」

「それは私も薄々感じていた・・・ほんとによく耐えたわよ私」


遠い目をしながらそう呟く。

兄さんに手を繋がれ、ソル・ソロルを含め絵を見終わると次は彫刻だと言って連れ回された。


しかも、カーティスさんにサフィラス以外の画家の作品もぜひ見て欲しいと言われ、断るわけにもいかずそのままズルズルと、美術館にある作品を全て見てしまった。


兄さんは本当にそういう美術的な物が好きなのか、疲れた顔一つ見せず興味津々だった。


興味を持つことは良い事だと思う。

けどそれ以前に興味持てる持てないの問題であって、持てない人にとってそれは単なる拷問なのだ。


興味の持とうとする努力は良い。

けど、興味持てない物に興味を持とうとする努力は聊か酷だと思う。


「でも、まぁ兄さんが楽しそうだったから良いよ」

「大人びていらっしゃいますね。でも、温泉に浸かれるのは良いと思いますよ。我が国では一々お湯を沸かさないといけないですから」

「面倒よね。だからお湯を張らず、その温めたお湯をタオルに染み込ませて体を拭く。お湯に浸かるのはお茶会とか社交パーティーの時だけだから」


わが国ではグリスのように、温泉の源のようなものがない。


だから普通のお湯を沸かして、湯船に溜めるのだがそれにも時間が掛かるため、沢山タオルにお湯を染み込ませそれで体を洗う。

髪の毛はお湯を使うが・・・。


「そろそろ上がりましょうか?」

「逆上せるわね・・・」


ランファの提案を受け入れ、そろそろ上がる事にした。

お湯に浸かると言う習慣があまりない私達は、あまり長湯すれば逆上せてしまうかもしれない。


脱衣所に向かうと、宿が用意してくれたタオルを使って水分を拭って行く。


「お嬢様、こちらを部屋着に」

「ありがとう」


ランファは私に、緩めのワンピースを渡してくれた。

最初に着替えた私は、髪の毛を水分を取るためタオルで乾かしていた。


ランファは私の着替えを優先していたので、まだ着替えられていない。

ランファの着替えが終わるまで脱衣所の周りを見て回る事にした。


「緑だらけ・・・」


カーテンも、椅子のカバーもご自由にと置いてある石鹸も、全て緑色か黄緑色だった。


まぁ当たり前か、この国は緑全般の色は国家カラーとしているのだから。


この大陸にはメピュア国、リキュア国、フレアランス王国、グリス、ブラックローズ帝国の5つの国から成り立っており、その5つの国には国家カラーと呼ばれる国を表す色が存在する。


我がメピュア国の国家カラーは、金色と白。


アクアがいるリキュア国の国家カラーは、水色か青色。


炎の王子アレクサンダーがいるフレアランス王国の国家カラーは、赤色と橙色。


そしてこの国グリスの国家カラーは、緑全般。


そして闇の王子メフィストがいるブラックローズ帝国の国家カラーは、黒色と銀色である。


我が国メピュア国と国単位で仲が悪いブラックローズ帝国とは、色すらも対になっている。


メピュア国が白ならブラックローズ帝国は黒。

メピュア国が金ならブラックローズ帝国は銀、という風に色すらも対立気味なのだ。


しかしお互い嫌い合っている理由は、何となく癪に合わない。

何となく反りが合わないという性格的な問題な為、戦争を起こす理由にはならない。


しかも面白い事に、国全体でブラックローズ帝国の国民とメピュア国の国民は何となく仲が悪い。


勿論仲が良い人もいる。

その人たちが可笑しいというわけではない。


それにブラックローズ帝国とメピュア国が仲が微妙なだけで、ブラックローズ帝国自体は他の国とは基本的に仲が良い。


貿易なども行っているらしく、そこまで悪い国ではないとラムは言っていた。


そう言えば、ランファが持ってきた洋服も結構緑が多かったような気がする。


という風にグリスと言えば緑、というイメージがあるためグリスに来るとついつい緑色の洋服を着てしまいがちなのだ。


私も緑色のワンピースが嫌いとは言わないが、グリスと言えば緑だから着るっていう安直な考えは嫌んだよね。

人と違う事がしたいという欲求・・・。


「お嬢様、髪の毛乾かしましょうか?」

「え、あぁ良いよ。もう乾いたから」

「そうですか?では部屋に戻りましょうか。ご夕食の準備が出来ているはずです」


ランファも着替え終わり、私は部屋に戻る事にした。


この宿は所謂最高級宿と言われるものらしく、しかも公爵家の者が泊まるとなると広くて綺麗な部屋になる。


兄さんの部屋とはだいぶ離れており、今兄さんが何をしているのか知る方法は私にはない。


けどまぁ、兄さんもお風呂に入っている事だろう。

疲れているだろうし。


「ご飯食べて、歯磨いて、寝てしまいたいわ」

「寝る前に髪のお手入れをなさいましょう。明日はウィル王子に逢われるのですから」

「思い出させないでよランファ!せっかく忘れていたのに!」

「それは申し訳ございません・・・しかし、忘れるのは如何な物かと。それにお嬢様は少々毛先がカールしておりますので、手入れを劣ると寝癖のようになってしまいますよ?」


ランファにそう言われ、自分の髪の毛を盗み見た。

腰ぐらいまである長い紫色の髪の毛。

癖毛なのかは知らないけど、私の毛先は少々カール気味である。


フレアランス王国にはストレートパーマという物があるらしくそれを使えば、私の髪の毛をストレートになるらしいが。


前世では黒髪のストレートという平凡すぎていたから、こういう小説の中でしか似合わない髪色も良いわよねー!


でも、この髪色はこの世界が小説の世界であるという事を思い出させる。

そして私は、主人公であるリリーを苛め最終的に断罪され発狂しながら死んで逝く運命にある、悪役令嬢である事を。


「明日は、緑の洋服を着た方が良いかしら」

「シフォンは、白いドレスを着ていても赤いドレスを着ていても綺麗だぞ!」

「に、兄さん?!」


急な兄さんの声に驚き、振り返ると恐らく兄さんもお風呂上りなのだろうか、髪の毛が少々濡れていた。


驚きのあまり心臓がドキドキしている。あーもうビックリした。


完全にランファと二人っきりだと思っていたから、後から声を掛けられると本当に驚く。


「兄さん、髪の毛濡れてる」

「あとで乾かすって。シフォン、明日城へ向かうんだろう?気を付けて行けよ」

「き、気を付けないといけない理由でもあるの?」

「一国の王子の元へ向かうんだぞ?まぁシフォンは前にも婚約者の元へ向かってるから大丈夫だと思うけど。あと、怪我しないようにもな」

「分かったよ。気を付ける。兄さんは明日のご予定は?」

「明日俺は、グリスを観光してくる。楽しんで来いって父さんも言ってたしな」


良いなぁ私も兄さんと一緒に観光したいものだ。


しかし、守護の王子グリスも『リリーの魔法の王子様』に出てくる主要王子だ。

今の内に彼が一体どんな人物なのか、知る必要がある。


「なんか土産買ってくるからな」

「うん、楽しみにしてる。じゃあおやすみ」

「お休みシフォン、ランファさん」

「お休みなさいませロジャード様」


兄さんと別れた後、私達は部屋に戻り夕食を食べ歯を磨き、そして椿油で髪の毛の手入れをした。


ランファ曰く『これで明日は艶々ですよ!』とのこと。


それは嬉しいけど、この毛先のカールがどうなっているのか。

それが私には楽しみだ。

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