2章1話 そして今
数年後のお話です。
それから数年
修斗は完全に変わった。
過酷な森での生活は彼の全てを変えたと言ってもおかしくないだろう。
昔の顔はどこかへ行き、今の顔は万人を威圧し恐怖させるような顔になっており、
中肉中背だった彼の体は生き残るため、しいては凶悪な敵と戦うために引き締まった、
全て戦うための筋肉に変貌していた。
そしてその体にはありとあらゆる傷が付いていた。
どんな歴戦の戦士や傭兵でもそうは付かない傷が彼の体には余すことなく付いていた。
それだけ彼は過酷な生活を強いられていたのだろう。
そして彼の性格も変わった。
もう二度と彼はゴブリンに恐怖する事はないだろう。
生き残るために彼の性格は冷酷に、残忍になって言った。
そうして彼は「その」森で生きていった。
彼はもうあの日襲われたゴブリンに恐怖する事はないだろう。
もう誰も彼を恐怖させる事はできないのだから。
もう誰も彼を殺す事はできないだろう。
彼が先に殺してしまうから。
もう誰も彼をいじめる事はできないだろう。
誰も彼には敵わないからだ。
そうして彼は世界最強になってしまったが、彼自身が気づくのはもう少し後の話だ
今日も彼は食事を求め森を彷徨う。
彼は必要以上の殺傷を望まない。
だが彼が自分の敵だと認識した相手は必要以上に殺傷する。
二度とその相手が彼に歯向かう事がないように。
そうして今日も一匹、愚かにも彼に向かって行った魔物がいた。
「ほう。今日はアークゴブリンジェネラルか」
七色に輝く右の瞳で彼は今日の食材を観ると、
地獄よりも赤黒い左目でその食材を睨んだ。
その瞬間にその魔物は自分の死を見た。
あらゆる方法で彼に殺される未来を見た。
そうしてそのゴブリンは恐怖のあまり意識を放してしまった。
最後に見た自身の死に方は、目の前の男に無残にも首を刎ねられる最期だった。
彼は今日の食材を調理しながら思った。
ああ、俺は平凡に生活しているのだと。
おそらくこれがこの世界の「普通」なのだろうと。
そうして彼は今日も生活していく。
そんなある日、彼は不思議な出会いをした。
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