1章 10話 鍛冶屋
鍛冶屋編です。
その後、六人はお土産話や昔話に花を咲かせた。
「ああ~いいわ~この料理は酒に合うわ~」
「母さん!食べ過ぎだよ!僕にも~....う~ん!美味しい!」
二人はすっかり酔ってしまった。
「それで?修斗はうちの娘のどっちがいいんだい?」
「「「....!?」」」
ディーネ、セリア、セイラの三人が反応した。
「......食後のデザートを作りますね.....」
あまり触れたくない話題を感じ取った修斗は、そっと立ち去ろうとしたが、結局捕まり、なんとか答えをごまかしたのだった。
夜、客室にて
「わが君、わらわ以外はいらないですよね?わらわだけを見てくれますよね?」
お風呂の用意をしていた修斗に後ろから抱き着くと、耳元でそう言った。
「....そうだな.....今はまだ、怖いんだ....」
「そうです。あの方たちのように....また奪われるかもしれないんです.....だったら最初から持ってなければいいんですよ.....わらわだけでいいんです.....」
締め付けるように修斗に抱き着き、悪魔の囁きのように耳元でそう言った
「ああ、俺にはディーネしかいない」
二人は互いを抱きしめあい、改めて関係を確かめ合うようにベッドで体を重ねた。
翌日
みんな揃って修斗の作った朝食を食べてゆっくりしていると、セリアがこんな事を言い出した。
「あと4日で新学期なので、修斗さんとディーネさんの固有デバイスを作ってくださいお父さん」
「いいよ」
「え?いいんですか?」
「うん。僕の試作品の性能検査に付き合ってくれたし、修斗君には数え切れないほどのいいものをもらっているし、固有デバイスの一個や二個ぐらい作るよ」
「それでこそあたしの旦那だ!」
セラはそう言ってアークの背中をバンバンたたいた。
「ごほっ!ごほっ!母さん力強い!....とりあえず、この後二人は暇かい?」
「俺は特には用事がありませんね」
「私もです」
「じゃ、二人とも出かける準備をしてくれ、10時くらいに行こうか」
「どこへ?」
「【鍛冶屋 錬風】の本店へ」
10時にアークとディーネと修斗の三人で扉の前で待っていると、高級そうな車が一台止まっていた。
「これは【魔術車」と言って、車のパーツ一つ一つに魔術単語を刻んでから組み立てているんだ」
「へ~【解析】【解読】」
修斗はこっそり車を解析して刻まれている魔術を解読した。
「運転自動化、敵性生物全力衝突....なかなか物騒だな」
「え?なんでわかるの!?」
「まあ、お気になさらず」
「修斗君だしいいか」
「その納得の仕方もどうかと思うんですが」
「お待ちしておりました。アーク様、修斗様」
車の運転席の中から秘書の女性のような人が出てきた。
「こんにちは修斗さん、アーク様の秘書をしています、マイネと言います。唐突ですいませんが、なにかアークさんとの関係を示す証明書をお持ちでないですか?」
「マイネさん!修斗君の身柄は僕が保証するって言ったじゃないか!」
「一応です、もしかしたら修斗様を偽った別人かもしれませんし」
「じゃあこれで」
そう言って修斗は、まだそよ風がしがない宿屋だった時代にアークからもらった手作りのカードを見せた。
「あ、修斗君まだ持ってたんだ」
「ここここ!?これは!?伝説の【錬風会員証】のプロトタイプ!?しかも創始者であるアーク様の手作り!?レプリカを見た事はありましたがこれは本物ですか!?」
「うん、そうだね、後ろに僕のサインがあるよ」
「え?」
アークはカードの後ろを向けると、そこには金づちと剣が交差したマークがあった
「ここっこ!?これは!?伝説の(以下略」
それからマイネはアークを差し置いてほとんど全て説明した。
「とりあえず、僕の工房に向かおうか」
「分かりました」
マイネはアーク達を乗せるとゆっくりと車を出した。
暫く走らせると街の中央にやってきた。
空まで伸びる大きな建物が並ぶ街の中心の一番奥にお店はあった。
「こちらが【鍛冶屋 錬風】本店になります」
意外にもそこには喫茶店のような綺麗なレンガのお店だった。
マイネの後に続いて中に入ると、中では何人もの高級そうな服を着た大人達が優雅にティーセットでお茶を楽しんでいた。アークが店の中に入ると、お茶をしていた大人達に声をかけた。
「皆さん!来る時は車を出しますので一度連絡をくださいとなんども!」
するとその大人たちは各々立ち上がってアークの方へ歩き出した。
「何を言う、君は世界最高の鍛冶職人じゃないか、下手に連絡を入れて仕事の邪魔をしたらとんでもない損害だ」
白髭を蓄えた長老のような男性がそう言った。
「そうですよ!アークさんは世界の至宝なんですから!」
綺麗なスーツを着た若い女性がそう言うと、横にいた妙齢の着物のような服を着た女性も賛同した
「あらあら、アークさんは相変わらずですね~」
「それで、そこにいる男は誰だ」
軍服のような服を着た厳つい顔をした渋い男性が修斗に話しかけてきた。
「とりあえず皆さんお座りください」
アークは修斗達も一緒に座らせた。
するとどこからかメイドがやってきて、修斗達にもお茶を入れた。
改めて修斗は周りを見渡した。
天井にはシャンデリア、壁や床は真っ白で埃や汚れ一つなく、壁には綺麗な観賞用植物が飾られていた。
改めて見渡したが、鍛冶屋と言うにはおかしいほど武器がなく、本当に喫茶店のようだった。
アークたちは大きな円形のテーブルに座ると、各々座っていた大人達も同じ席に着いた。
「さて、皆さんお久しぶりです、僕の横に座っているのが【英雄 修斗】です」
アークがそう言うと、誰が見てもわかるほどに皆そろって破顔し絶句した。
修斗さんが降臨しました。




