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チート転生者は平凡を目指す  作者: 瓜生ヶ崎
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1章26話 結末

少年は一人、慟哭した。

「お前が死神か」

その男はユーの尻から手を放すと、修斗を真っすぐと見た

修斗にはあらゆる名前が付けられていた

その本名が知れ渡る事はなく、死神、赤い悪魔、死を運ぶもの、終結者などだった。

「【俺に従え】」

その男は修斗を見てそう言った。

「【こっちにこい】」

そう言うと死神はゆっくりと歩き出した。

既に武器は握られてはいなく、槍も光を失って地に落ちていた。

そうして死神はゆっくりと男の前に立った。

「【跪け】」

男はそう言うと、周りの召喚獣やユー達は一斉に膝をついた。

それを見た修斗の顔には憎悪や憤怒の顔ではなく、悲しみしか浮かんでいなかった。

「ふっはははは!俺は生まれつきの魔王だ!全ての生物は俺に傅くのだ!俺が王だ!」

男はひとしきりに高笑いすると、死神の方を見た。

その死神は膝をついているのではなく、ユーやマオを見ていた。

「【跪け!】」

そう言うが修斗は跪かず、一生懸命ユーやマオをゆすっていた。

しかし跪いた者達は決して動かなかった。

「【跪けと言っているだろう!】」

男は死神を蹴り飛ばした。


死神は悲しんでいた。


死神は蹴り飛ばされて地面を転がった。

男は何か良くないものを感じていた。

その男は生まれながらにして王、帝王、皇帝の名を持っていた。

幼い頃からあらゆる生物を手玉に取り、自由にしてきた。

戦えと言えば戦い、死ねと言えば死ぬ。

それほどまでにその男は強大だった。

しかし、目の前の死神はそんな男の命令を受けなかった。

これは何かまずいと感じた。

しかしすでに遅かった。

死神はゆっくりと立ち上がると、自らの体に手を突き入れた。

「ぐふっ」

流石の死神も自分で自分に攻撃するのは堪えるらしく、その場に膝をついた


死神は悲しんでいた。


「ふっ、ふははは!我に従わないのは自害するためか!やるではないか死神よ!」

グリューズはその場での高笑いすると、嬉しそうに自分に後ろを向いて歩きだした。

その瞬間、グリューズは死を感じた。

全ての生物を支配した森の中でグリューズは何かさらに危険な、抗いたいものに無残に殺される事を【予見】した。

グリューズは急いで死神を見ると、死神は自ら貫いた体の中から歪な短剣を引きずり出した。

その短剣はとても剣とは言えなかった。

その短剣は心臓のような、脈打つ柄から刃が出ており、その刃は赤い液体でかろうじて刃の部分だと分かった。

「ななな!なんだそれは!」

死神はその短剣を両手で握りなおすと、最後に顔をあげてユーやマオや長年付き添った召喚獣達を見た。

しかしユー達はグリューズの命令を待っているのか、ずっと跪いていた。

死神は悲しんでいた。

「【何を見ている!その者達は我の物だ!お前たち!この男を殺せ!】」

グリューズはそう言うと、ユー達は死神に襲い掛かった。


死神は悲しんでいた。


グリューズは死神はこれだけの敵に囲まれれば流石に勝てるだろうと死体のドラゴンの頭に腰を掛けた。

その瞬間、グリューズは地面に尻をつけた。

一瞬だった。瞬きした瞬間、周囲の光景は地獄と化した。

赤い空、黒い地面、呼吸するだけで死にたくなるような空気、グリューズは魔界以上にひどい環境を知らないが、それも今までだ。

ここは魔界よりもさらにひどい。

ここと比べれば魔界は天国のようだろう。

グリューズは死神の方を見ると、死神は地面に剣を突き立てていた。

そして襲わせていた死神の手下は全て黒い地面に足から沈んでいき、ついには頭まで完全に埋まってしまった。


修斗は笑っていた。


空を飛んでいた白龍帝なども、どこからか現れた名状しがたき鳥の魔物に一瞬で食いちぎられていた。

「ああ!愛しの我が君!ようやく私を受け入れてくれるんですね!」

死神の背後からおぞましい声と共に黒い霧が出てきた。

そうして黒い霧が死神の周りで止まると、霧の中からタコの足のようなものが死神の体を包んだ。

「ああ、愛しい愛しいわが君、わが王よ、ようやく私を受け入れてくれるんですね」

死神は体の周りのたこ足を愛しそうになでると、ようやく顔を上げた。

その顔は既に人の物ではなかった。

髪の毛はさらに黒くなり、まるで引き込まれるような深淵のような黒色になっていた。

顔はさらにおぞましいものになっており、頭部は黒い焔で燃え上がっていた。その黒く燃え上がった頭部、恐らく目があろう場所からは赤い光が見えており、それを見たグリューズは唐突に眼球が燃え上がったと思って目をつぶった。そうしてまた目を開くと、視界は真っ暗だった。

「な!我の目が!我の目がぁああああああああああああああ!」

グリューズは目を押えて回復魔法をかけるが、視界が戻る事は無かった。

それどころか自分が全身燃えているのではないかと言うほど、全身に熱さと痛みを感じた。


死神は笑っていた。


事実、グリューズは燃え上がっていた。

死神に見られただけで全身が燃え上がるなどと誰が想像できるだろうか。

しかしグリューズは睨まれてから数分しないうちに塵とも誇りともわからなくなった。

「ああ!愛しいわが君!こんな私でも愛してくれるんですね!私は決してあなたを裏切りません!私は決してあなたの敵にはなりません!あのような小汚い男に操られたりしません!」

「.........ああ、そうだな。俺にはもうお前しかいない...」


修斗は悲しんでいた。


修斗の姿は完全に人ではなかった。

体も頭部と同じく、黒く燃え上がると、黒い焔が人型をとるようになった。

そうして修斗が完全に黒い焔と化すと、ゆっくりと背後の霧の中へ歩き出した。


「ああ!わが君!ついに私に会いに来てくれたんですね!わらわは嬉しいです!」

黒霧を抜けると、再び修斗が人間の形をして出てきた。

髪は黒く、顔は見るだけで発狂するようなおぞましい顔になっており、眼窩に眼球は無く、代わりに両眼窩には、深淵のような黒い穴にクリムゾン色の焔が灯っていた。

体は元の修斗の体形のままだが、全身常に黒い焔が燃え、その焔が修斗の体形をかたどっているだけだった。歩くだけで周囲の物を燃やし尽くし、塵とも埃ともわからぬ物にしていた。

「ああわが君!どうかわが身を御身のそばに!」

「....お前だけはいなくならないでくれ..【ディーネ」...」

「ええ!ええ!もちろんですわが主!」

修斗に名前を言われてディーネと言われたものは喜んだ。

「【解呪】」

そう言うとディーネは醜い姿から美しい姿になった。

カエルのような顔は稀代の美女の顔になり、

豚のような体形は、まるで天女のようになり、

薄汚れた髪の毛は燃え上がるような赤色になった。

「ああ!愛しい人!【この身の全てをあなたに捧げます】」

ディーネと言われた美女は修斗に抱き着いた。

すると抱き着いた部分からディーネは燃え上がったが、それが全身に回る事はなかった。

「ああ!わが君!創造神より罰せられしこの身の呪いを全て引き受けてくれるその度量!その姿!このディーネ!【獄姫ディーネ】は一生あなた様!【獄帝修斗】についていくことを誓います」

そう言ってディーネは修斗の唇に口づけをした。

すると修斗の頭に王冠が現れ、それが一生外れる事はないだろう。


修斗はいつのまにか黒い地面より現れた禍々しい皇帝の椅子に座ると、横に今は美しいディーネを従わせ、右手に禍々しい名状しがたき大剣を地面に突き刺し、君臨した。

するとどこからか現れた獄界の住民たちが一斉に修斗の前で並びだし、一斉に膝をついた。

それを見たディーネはこう言った。


「【ここにおわすは我らの皇帝!地獄を統べ、万物に等しく死を与えるものである!頭を垂れ!跪け!さすれば死を賜らん!】」


ここから先に戦場を駆ける悪魔も、心優しい一人の男もいなかった。

獄帝のそばには何もいなかった。


獄界。

あらゆる生物の終着点。

不死者の死に場所

そこに友は無く、仲間は無く、生者は無く、あるのは死のみ。

そんな中で獄帝は死ねず、ただ淡々とかつての仲間を殺すだけだった。


綺麗な金色の髪のエルフを

優しい褐色の魔王を、

気高い白銀の騎士を、

自分を慕い、付き添った全ての仲間を、

撃ち殺し、刺殺し、切り殺し、そうしてその記憶を、力を、技を自分のものにする。



そうして帝は一人、ディーネのそばで慟哭する。

もう涙が出ないのも知っている。

ディーネはいつまでも帝に仕える。

その悲しみが消えるまで。

ただただ永遠に帝のそばで。



そうして少年は一人、孤独に生きた。






















これでお話はひと段落します!

次回からはガラッとお話が変わります!お楽しみに!


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