第二部 1章1話 さよらなムーク
ムークでの最後の話です
マオが修斗達と一緒になってから数年が経った。
最初は人間のものに色々驚いたり、呆れていたりしたが?今ではすっかり馴染んでいた。
修斗の部屋のリビングにて。
「修斗さん!今日はけ〜き?と言う食べ物を教わりました!」
「ご主人様!私はぷりん?と言うものを教わりました!」
「「召し上がってください」」
「あっはい」
このように、修斗は至れり尽くせりだった。
「あ、修斗さん。時間ですので変わりますね【還元】」
マオは身体に二つの人格を宿しているようで、子供の方は通常の時に、大人の方は何か高度な話をする時、もしくは生命危機の時に出てくるようだ。
もともとマオは年相応の女の子だったのだが、先代魔王である父と母が急死してから急かされるように次代の魔王になった。それからは年以上の要求を課せられ、毎日重すぎるプレッシャーを感じた。そんなある日に、大きい方のマオが出て来た。それからは大きい方のマオも小さい方のマオを助けるようになった。
「おとーさん!お久しぶりなの!」
小さいマオは
「はい?マオちゃん。お久しぶり」
「おかーさんも!お久しぶりなの!」
「はーい!マオちゃん!お久しぶり〜!」
「マオは子供の時の方がいいな」
「…私も同感です。ライバルは少ない方がやりやすいですし…」
「おとーさん!また飴玉が食べたいの!」
マオは修斗に抱きついてせがんだ。
「いいよ。はいこれ」
「今日は何味なの?」
「あまーい味だよ」
「やったの!」
それか数日
「マオ、真面目な話をしたい」
「んー?」
「マオと真面目な話がしたい」
「…わかったの」
最近は自由に大人マオに子供マオにもなれるようになった。
「…どうしました?」
「……そろそろ街を出ようと思う」
「!?どうして」
「ええ!?ご主人様街を出るんですか!?」
「ああ。マオの魔王として仕事をそろそろやらないとまずいかなって」
「そうですね。そろそろ何か行動しないと、過激派の魔族が動き出しそうです」
マオが人間界で暴れるのは、過激派魔族に魔王はきちんと"魔王"をしていると言うことを見せびらかしている。
過激派魔族は魔族至上主義で世界征服をして魔族のみの世界を作ろうと本気で活動するほど過激だ。それをマオが過激派の代わりに派手に暴れる事で押さえ込んでいる。
「と言うことで、旅に出よう」
「マオさんを引き取ったからには私達もマオさんの目的も果たさないといけませんよね。と言う事で私も賛成です」
「私は修斗さんの言う事に全面賛成です。私もそろそろ何かしないとまずいですし」
「じゃ、明後日に出発するから、みんな準備やら挨拶やらをしておいてくれ」
「「はい!」」
出発当日
修斗は出発当日まで姿をくらましていた。
「アークさん!アークさんいます?」
「あいよ!いるいる!」
「忘れてた俺も悪いんですけど、アレ、加工できました?」
「いや全く、あらゆる方法を使ってもビクともしないよ。確かに伝説の鉱石だよこれは。僕に全力を持っても加工できないんなんて。これは何て言う鉱石なんだい?」
「スタープリズムです」
「スタープリズム?」
「これは空から落ちて来た結晶とも言われ、この世界とは違う鉱石なんです。だから通常の方法では加工は不可能です」
「じゃあ、一体どうやって?」
「こうします」
修斗は手刀で細切れにした
「な?!」
「ね?通常の方法では無理でしょ?」
「あっはっはははは!まさか馬鹿力で加工するとは」
「それで、これはどんな性質なんだい?」
「これは伝魔性に優れ、変化に非常に強いです。その代わり、一定量以上無属性魔力を通せば非常に高い流動性と変動性を持った鉱石になります」
「なるほど。魔力動性なのね。しかし、変化に強いとは?」
「アークさんのあらゆる加工を受けてみビクともしなかったんでしょう?」
「そうだね。マグマほどの高温で燃やしても、絶対零度で冷やしても、超音波を当ててもビクともしなかったよ」
「これ、今はこんな七色で透明ですが?流動性を持った時に魔力で形を作れるんです。そしてそれを維持したまま火属性の魔力を流すと火属性の魔剣になります。性能は最低でも魔剣。最高は天地開闢した創造剣くらいです」
「とんでもないな。と言うことは、さっき手刀でバラバラにしたのは?」
「手に魔力を纏って回転させて斬っただけです。この鉱石は魔力記憶と言う特性を持っていて、一定時間連続し魔力を流し続けると、その魔力以外受け付けなくなります」
「なるほど、だったらどうやって加工を」
「ですから、薄く鋭い魔力を手に纏うなりして加工すればいいのです。ただし、薄い魔力なら簡単には記憶しません。ただし絶対に自分に魔力を意識的に流し込んではいけません。そう言う意識で流し込むと一瞬で記憶してしまいます」
「なかなか難しいな。これは大変だ」
修斗は自分で作った小さなポーチをアークに渡した。
「これは自作したアイテムポーチです。この中に俺が集めた鉱石の一部が入っています。みんな1Tぐらい入ってるのでゆっくり研究してください。いつかこの店が繁栄することを願っています」
「ああ!絶対この店を繁盛させるよ!」
「それでは、また今度」
「そうか、行ってしまうんだね」
「はい」
「うん。いつでも帰って来てくれ。君がこの宿にしてくれた事は僕たちが一生かけても御礼を言い切れないよ。そうだ!これをあげよう!」
アークは手作りの小さなメタルプレートをあげた
「これは僕にサインが入った割引券だ。僕の工房でのサービスは一切無料になる」
「正直に貰うよ。アークさんの工房が物凄い繁盛したら潰れるまで利用してやる!」
「ふふ。ああ!ぜひそうしてくれ」
2人はひとしきり笑いあった後、抱擁を交わした。
「…悲しいな…君が行ってしまうなんて…」
「もう帰ってこないかもしれません。その時はアーク印の工房を贔屓にします」
そう言って修斗は工房から出て行った。
「ふふ。僕の初めてのお客さんが修斗くんでよかったな」
アークが修斗からもらったアイテムポーチをよく見ると、紙切れが挟んであった。
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アークさんへ
鉱石の他にいくつか工房のためにお金を入れておきました。このおかげでもっと工房をよくしていってください。
将来のこの工房に期待してます。
修斗より
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「な!?いつのまに!?」
アークはこれでもエルフ。魔道具である事はすぐわかる。
「こんなに!?とんでもない額だぞこれ!?」
知らないうちにアークは笑いが込み上げて来た。
「全く…期待に答えるしかないじゃないか…」
工房から出て行った修斗はセラさんの厨房に行った。
「セラさーん!セラさーんいます?」
「はいよ!どうしたんだい?」
セラさんは修斗より貰ったレシピで大きなケーキを作っていた。
「セラさん?これは?」
「今日行っちゃうんだろ?このけーき、は、お祝いさ!これ食って別の街でも上手くやってくんな!」
「ふふ、ありがとうございます」
修斗は少しケーキを味見し、それからセラさんとたわいもない話をした。
「ああ、そうだ、最後にセラさんにこれを渡しておこうと思います」
「ん?この紙束とこのポーチは?」
修斗は地球で言うところのA4ノートとアイテムポーチを渡した。
「このアイテムポーチは魔道具で、見た目以上の物が入ります。その中に『帰らずの森』で採ったあらゆる食材が入っています。見た目が禍々しい物もありますでの、その紙束に全ての食材の採取場所と調理方法などが書いてあります」
「ほう!あの森で!よく帰ってこれたね!」
「2人で行けば大丈夫ですよ」
「なるほどね」
セラさんは紙束をぺらぺらを見てみた。
「な!?なんだこの白い紙は!?とてつもなく高価なものじゃ無いか!?」
「気にしないでください。お料理にはいくらお金をかけても心が痛みません」
「あっははは!そうかそうか!ありがとう!ここには私の見たこともない作り方や食材がある!これは楽しみだ!」
「ええ。ぜひマスターして、俺が帰って来た時に食べさせてください」
「ああ!あんたのレシピ、全部マスターしてやるさ!いつか帰って来た時に、またたんと食べさせてやる!そうだ!あんたにこれをやるよ!」
セラは修斗におたまがとセラの名が刻まれたメタルプレートを渡した。
「これはアークに作らせたプレートだ。これを持っていればうちの店ではただで飯を食わせてやる!それだけあんたには色々な事を教えてもらってからね。あと、何か困ったり、権力に屈しそうになったらそのプレートを見せてやんな。私の名が怖く無いやつなんていないだろう」
「ありがとうございます」
「あいよ!元気でやってくんな!」
「はい、セラさんも!お元気で」
最後の挨拶を交わすと修斗は厨房から出て行った。
「あーあ、行っちまったか」
セラは修斗が出て行った扉を名残惜しく見ていた。
すると、ドアノブに小さな袋が手紙と一緒に掛けてあった。セラは気になって袋と手紙を見てみた。
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セラさんへ
この袋の中にセラさんのこれから必要なお金が入っています。いつか別の街でもセラさんの料理が食べたいので、よろしくお願いします。
修斗より
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「な!?こんなに!?あいつのサイフは国家予算か何かか?…ふふ、ふふふ、ふっあははははは!」
ひとしきり驚いて笑ったあと、セラは1人、厨房で元の姿に戻った。
青い肌、天に伸びる大きなツノ、ミノタウロスほど太い腕、天井まで届きそうな身長。
「あいつは私の正体に気づいていたなんてね」
セラは修斗と初めて会った時、修斗が口パクで
「偽装魔法は気配までかけておけ」
と指摘した事を今でも覚えている。
「いつかあいつの召喚獣の前でも半分ほど元の姿に戻ったが、あいつらは驚きもしなかったし、むしろ寄ってくるとは…つくづく面白いやつだ…くっくっく」
ひとしきり笑った後、元の姿に戻った。
「さぁて、本気でやりますか…」
セラは今まで以上に料理に集中するようになった。
「すまない。待たせたか?」
「いえ、大丈夫ですよ修斗さん」
「そうです。私たちも今来た所なので」
街の出口で馬車を引いて2人は待っていた。
「それじゃ、行くか」
「「はい!」」
2人はムークの街の門から出た。
新しい街ヘと
これから旅が続きます。




