危機一髪
「ありえない・・・」
その一言がまず最初に口に出た。
自分はトラックに轢かれて死んだはずだ。
死の実感もあった、なのに・・・
「なんで・・・俺は森の中にいるんだ・・・」
俺は緑が生い茂っている森の中で目を覚ました。
「(落ち着け落ち着け・・・)」
動揺を隠しきれないが俺はとりあえず立ち上がった。
「・・・・・・・?」
なぜか目線が普段と合わない。
体を確認する。
「・・・・はぁ!?」
おかしい、俺は30を過ぎている成人男性のはずだ。
なのに。
「この手は・・・子供か・・・!?」
なんと子供の姿になっていたのだ。
実際全身を確認できないためどうなってるかはわからないが、手足の大きさ的に3~5歳ぐらいだろう。
俺は手で顔を覆った。
「死んだと思ったら・・子供の姿になって・・森にいたと・・・」
「誰が信じるんだそんなもん・・・」
だが実際、目を覚ましたらそうなってたのだ。
あきれながらも俺は冷静になることに勤めた。
焦ってもしょうがない、落ち着いていても仕方ない。
なら今現状の自分の立ち位置とやらねばならないこと、それとここはどこかということ。
俺は冷静に整理し始めた。
「まずやらなきゃならないことは・・・食料の確保と寝床の確保か・・・、寝床は最低限いいとして食料だな。」
「それとここがどこなのか、周りを見渡してみて・・・見渡して・・・」
そこで俺は気づいてしまった。
「なんだこれは・・・?」
光る花がそこにはあった。
青色の果実をならす木があった。
自分が見たこともない植物がそこには生っていた。
そう、それはまるで―
「ファンタジーの世界かここは・・・?」
ファンタジーの世界、それは自分の作っていたゲームのような世界。
妖精、亜人類、ドラゴンそういうものがいるところ。
「は・・・はっはぁ・・・」
枯れた笑いがこみ上げてきた。
冷静さが崩れた瞬間だった。
子供の姿のまま辺りを散策する。
とりあえず自分の食べれそうな物、そういうものを探す。
「これは無理そうだな。」
自分でもなんでかはわからないが手に取ると食べれそうなものかわかるのだ。
「・・・これは食べれそうだな。」
赤い実を見つける。
リンゴのような形状をした木の実だ。
シャク!
かじると程よい甘みが口に広がりさわやかな後味が次の一口を誘う。
「うっま!?」
俺はあまりのうまさに大きな声をあげてしまう。
今まで食べたことのない果物に夢中になりながら今後のことについて考える。
「シャク・・・シャク・・・(よく考えたら俺は服を着ている、そこから考えるに俺はこの世界に何らかの方法で魂を飛ばされたと考えよう。転生ってやつだ。だとしてこの服装などを考慮するとただの村人ってわけではなさそうだな・・・)」
今の自分の服装から推理を張り巡らす。
自分の服装は世間では魔法使いと言う者の服装に酷似していた。
端的に言えばローブだ。
だが。
「えい!えい!」
いくら手を前に出しても指を前にさしても魔法なんて出ない。
「違うのかな・・・?」
推測とは違い少し落ち込みながらも数個のこの果実を懐にしまい散策を続ける。
森を適当に進む。
何があるのかもわからないが歩いていれば誰かには遭遇するだろうと。
そうそして遭遇したのだ。
「グギャァオォォォオ!!!!!!」
そう巨大な猪に。
「うっそだろ!!!おい!!!!」
そしてたちの悪いことに自分に向かってダッシュしてきたのだ。
体長20mはあろうイノシシが自分に襲い掛かってくる、轢かれてはひとたまりもないだろう。
俺は走った。
子供の体で限界を過ぎても。
走って走って走って。
それでも。
「無理だああああああああああああああああああああ!!!殺されるぅうううううううう!」
自分との距離を5m以内にまで詰められていた。
そして轢かれる!?
そう思って目を瞑ったとき。
【【スキル発動】】
【固有スキル:三段撃ち】
【固有スキル:斜角陣形】
ドンッ!
ガガガガッ!
とてつもない音と共に自分に襲い掛かってきた猪は倒れた。
「どうじゃ!わしの三段打ちは!軽くひねってやったぞ!」
「いやいやあれは私の斜角陣形があったから仕留められたんですよ!」
「いやわしじゃ!」
「私です!」
「「ぐぬぬぬぬぬ・・・・」」
そこに現れたのは銀髪の女の子と金髪の女の子だった。
次回、5/14に投稿予定