「もういいよ」の後
もういいよ。
諦めた。
諦めきれないから、諦める為にそう言った。
心の奥底。
掻き消すことさえ、上書くことさえ出来ない欲求。
本心。
本音。
誰か愛して、必要として。
満たされない。
満たされているのに、幸せなのに。
上を見ればきりがないのに。
下を向いても意味がないのに。
愛されたい、必要とされたい。
そんな欲望が、心を、体を突き破っていく。
幼い頃のトラウマ?
成長期の未発達?
ただの「欲張り」
分かってるのに。
分かってるはずなのに。
優しい言葉を向けられても満たされず。
厳しい言葉を向けられても満たされず。
欲しい、欲しいと貪欲なまま……。
感謝してるの、あの優しい言葉に。
納得してるの、あの厳しい言葉に。
なのに、まだ……
心の奥底。
何度も吐き出したはずの言葉が、欲望が。
この口から溢れ出て、腐って堕ちていく。
そこはかとなく、底の見えない暗闇が心地よくて。
差しのべられる手の、中にある見えない何かが醜くて。
伸ばし続けて疲れた手と、動かし続けた口が痛くて。
もういいよ。
諦めた。
心の奥底に無理矢理蓋をして。
きつく口を閉じて。
目を瞑って。
息を吐くのと同時に。
高いところから落ちてみた。