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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第五章:闇の中の光
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思わぬ対峙

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足が軋みをあげ、心臓が叫ぶ。

時折壁に設置されている窓から見る景色は先程までと違い上から街を見下ろせる程まで高くなっていた。

その景観はこの忌々しい閉鎖空間から外にダイブしたい気分にさせる。

ふと振り返ると、29階まで上って来た頃には背後には今までの2割ほどまで追っ手の人数が絞られていた。

俺と同様、皆疲労にはついていけなかったのだろう...俺は奴等とは違う。

従軍時代に積み重ねた訓練経験やこの状況を打破しようとする精神が俺を前へ進ませてくれた。

左胸の皮膚に、まるで心臓を抉るように爪を立てる。

そしてその状態のまま30階に位置する社長室へと辿り着いた。

だがその頃には横隔膜も気管支も脳へ、肺へと酸素を供給する事を止め、頭は酷く朦朧としていた。

喘息のような咳の症状が表れ、何とか息を吸い込む。

俺はこれ以上ない程に咳き込みながらも暴れる器官を抑制し、目の前の扉へと身体をぶつける。

一度では勿論開かない事は承知している。

何度も、何度も蹴りを入れたり、殴りつけたり、とにかく損傷を与え続けた。

手から血が出始めても構わずに自身の全てを集中させる。

すると扉のドアノブの部分が次第に緩み始め、カランカランと音を立てる。

掴んでみると中のネジが何本か抜けていて今にも取れそうな状態になっている。

そこで俺は身体の全体重を腕に移動させ、思い切り引いた。

若干の障害はあったものの、扉はバキッという大きな音をたてて閉ざしていた部屋への出入りを許した。

扉を破壊した音に驚いている...ここの従業員だろうか?...人員を容赦なく銃殺する。

何らかの作業をしている者、さっきまで楽しそうに会話をしていた者、携帯を弄っている者。

誰一人して抵抗はしなかったが、俺は一切の慈悲を許さなかった。

一発の弾薬が無抵抗の人間の肉を弾き、骨を砕く。

そして命を刈り取るんだ。

返り血を拭い、誰もいなくなった作業室の椅子に座る。

自分が情けなくなったんだ、こんな惨めな事しか出来ない自分が。

手についた血を眺める事だけが自分を、"生"を実感している気分にさせる。

ただ全てを悟った気がするというだけなのに。

一人欲望に浸っているその時、部屋の奥から老人のような声で誰かが俺を呼んだ。

反射的にパッと振り向いて銃を向けるが相手が物陰に隠れていて見えない。

いや、本人は隠れている気はないようだがどうも背が小さすぎる。

銃弾の残り弾数は一発のみ、無闇に撃てないのが現状だ。

しかし驚く事に老人は自ら周囲の人間を殺したこの俺に歩み寄ってきた。

ニコニコと笑うその笑顔には不確かだが悲壮感が漂っている。

銃を向けても止まる事を止めない老人はうろたえる俺の前まで来ると、一言こう言い放った。

「我々に協力してほしい」

何を言っているのかは理解出来なかった。

老人は俺の頭の中一杯の疑問を何も言わずとも理解したようで、笑顔を絶やさないまま、ある写真を取り出した。

それは見覚えのある人間というよりかは俺に一番近い、親友のような男だった。

「君は彼と殺しあった...違うかね?」

忘れていた記憶が一瞬の内に蘇り、世界が反転したような感覚に陥る。

得体の知れない何かが心の奥底を覆す。

「私は君の全てを知っているよ、今までの仕事の請け負い先、仕事内容や経歴まで」

額からは汗が噴出し、手からは脂が漏れる。

貧血のような症状が俺を襲う。

「核心を言おう、我々は数年前から君を追っていた。そして運よく君はエリック君と殺し合い、倒れた。そしてその死にかけた君を蘇生したのが我々だ。」

つまりはこの老人は自分が何らかの権力者だとでも言いたいのか?

ここにきて自慢を始めようとでも?俺には理解出来ない。

「我々ノースゴーストはギャングではない、あくまでも企業だ。君に対する国際的警備が厳重になる中で武器を提供したのは我々だ。勿論その影響で株価が暴落、暴動が始まり市民は民兵へと成り代わった。そして憎き互いを潰しあった。ただそれだけの事だ。」

ノースゴーストと聞いてモロトフを思い出すが、今はどうでもいい。

もうアイツは過去に生きた男でしかない。

それより、この街がこんなクソみたいな状況になっちまったのはこの老人のせいだというのか?

勿論そんな事を聞いたところで政府が招いた事態だとか言い逃れる方法は幾らでもあるだろう。

だが俺が聞きたいのはそんな事じゃない、街や国なんか好きなようになりゃいい。

この老人の話を聞く限り、まるで俺の人生の主導権を握っているような言い方じゃないか。

急に何もかも失ったような気分になった。

今までの俺のやってきた事は何だったのだろうか?

全てこの老人の思う壺だったという事かと思うと非常に馬鹿馬鹿しい。

俺は黙って銃を老人の額へ押し付けた。

「う、ウチで働けば収益はかなりの額になるぞ!」

もう金なんてどうでも良い、ただこの老人を殺して全てを終わらせたかった。

喚きたいだけ喚け、死んだら呟く事も出来やしない。

「自分の始めた事は自分に返る」

悲しく悴む指先で硬く重い引き金を引いた。

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