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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第五章:闇の中の光
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更なる深みへ

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温かい感覚が身体全体を覆っている。

周囲では人々の話し声が聞こえ、中には啜り泣く者、怒鳴る者、淡々と話し続ける者がいた。

目を開けるとその部屋はとても明るく、眩しい。

見た所精神病患者収容所のような場所だ。

耳の傍では一定の間隔を開けて不自然に高い音が鳴っている。

これが目覚まし時計である事を願うが、恐らく違うだろう。

「...心音メーター?」

擦れた声で独り言をブツブツと呟き、唸りながら上体を起こす。

驚いた事に俺の近くに人間はいないようだ、だとするとさっきの声は一体何だったのだろうか。

身体を動かそうとすると俺の腕から伸びた2、3本の緑色のゴムチューブが俺を引き止める。

MRIのような機械へと繋がったそれらに苛立ちを感じた俺は迷いなくそれを掴み、思い切り千切った。

針を刺すような感覚が一瞬右腕を麻痺させたが皮膚が破けただけだ、大した事はない。

段々とぼやけていた視界が正常に戻るがそれと同時に感覚も研ぎ澄まされて行く。

だがダメだ、何故俺がこんな収容所のような場所にいるのかが思い出せない。

腹部には包帯が巻いてあり、そこに痛みが集中している。

包帯が巻かれた箇所全体の痛覚が己の傷の深さを訴え続けた。

その場から立ち上がる事も難しい程だが今はこの部屋から出る必要がありそうだ。

リハビリに2時間程費やしたいが時間を無駄には出来ないだろう。

どれ位の間ここで眠っていたのだろうか?

起き上がった途端立ち眩みに襲われ、激しく嘔吐した。

壁に手をつきながらヨロヨロとだが何とか歩き出す。

世界がメリーゴーランドのように回転し、崩れ始めたような気がした。

生まれたての小鹿のような足取りでなんとか扉の前に着いた。

ドアノブに震える手をかけグッと押し込む。

扉が開くと同時に身体は前方に倒れそうになり、壁に凭れ掛りながら踏ん張った。

白くボロボロのタイル張りの壁には綺麗に赤い手形がついた。

周囲を見回すとそこは長い廊下になっていたが恐らく相当古い施設だ。

切れ掛かった蛍光灯からは長い蜘蛛の糸が伸びていてなんとも薄気味悪い。

誰かいるかと呼びかけるが案の定返答はない。

そして数歩歩いてからある事に気がついた...床には大量の割れたガラスが飛び散っている。

爆弾で吹き飛ばされたような壁は過去にそこで発生した惨劇を表した。

一体ここで何があったっていうんだ?

これは裸足の俺には相当厳しい、泣きっ面に蜂だ。

深呼吸をして覚悟を決め、全てを搾り取られる気持ちでゆっくりとガラスの上に足を乗せる。

「うぅ...っ!」

足の裏に痒みのようなムズムズとする痛みが走った。

皮膚はスパッと切れずにジワジワと表面近くの肉から引きずり出し始める。

身体中から発汗し、脳が拒否反応を起こす。

だからといって歩みを止める事は出来ない、もう一歩、また一歩と進む。

歯を噛み締めすぎて歯茎からも出血した、この間に何度後ろを振り返っただろうか?

この道程は決して長くはなかったが体感時間は数時間にも及んだ。

ようやく向こう側に到達した頃には全身を蝕む痛みすら感じなくなっていた。

考えてみればこれは非常に狂っている事だが今の俺には好都合だ。

早く外の空気が吸いたい...俺はより深い闇の奥へと歩みを進めた。

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