摘出
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緩やかな山道を下り、村へ降りた。
村というよりは田舎町と言ったほうが正しいだろうか、俺にはよく分からない。
それよりまず自身の怪我の治癒が必要なんだ。
先程の戦闘の後、俺が逃走する際発砲した警察達の内の一人の銃弾が俺の肩を直撃した。
よく見えないが傷口は深く抉られているようで深さは恐らく2cm以上あるだろう、酷く痛む。
傷口に触れると右半身全体に電撃が走るような感覚だった。
だが俺は病院には行けない。
警察監視下に置かれた病院で医療証明書を提示すれば一発で追い込まれる事だろう。
今のところ奴等の追跡はこの村まで達してはいないようだがこのままでは俺も長くない。
どうにかして希望を作り、未来を切り開くしかなかった。
俺は一人の村人を見つけその後をついていった。
彼と俺の距離は約20メートル。
大量殺人者が家に泊めてくれと言ったところで拒否され通報されるのは明白。
なら奪い取るほか手はない。
放浪し続け、舗装されてすらいない道路の上で犬のように野垂れ死ぬのだけは勘弁だ。
墓に埋葬される事すらないだろう。
「...おっと。」
彼は2階建ての古い木造建築の家の前で立ち止まると、担いでいた荷物を一時的に降ろし扉を開けた。
...俺はその時を狙った。
早歩きで一気に距離を縮め、背後から一切の気配を消し近づいた。
耳の良い彼は俺の足音に気づき後ろを振り返ったがその時にはもう俺は彼の首に手をかけていた。
相手は初老の男でそう抵抗力もなかった。
俺は彼の首を掴んだまま家の中へ入って行きそのまま突き倒した。
そして起き上がろうとした彼の頭をバットで割った。
鈍い音と共に内容物が流れ出る。
壁に鮮やかな血が飛び散り、そこにあった命は消息した。
静かになった室内で背後の扉が勢い良く閉まる。
すぐに鍵をかけると俺は台所へ向かいそこでナイフやフォーク等の鋭利な物を探した。
体内の銃弾を摘出する必要があるからだ。
フォークは無かったがナイフはすぐに見つかった。
先が尖ってはいるがこれが綺麗かどうかは分からない。
しかし今はそんな事はどうだっていい、錆びてなけりゃ何だっていいんだ。
俺は脱いだシャツを丸めて口に咥え、ナイフの刃先を自身の肩に向け、勢い任せに突っ込んだ。
考えていた程楽には刺さらなかった。
「ぐっ!...はぁ」
まさかここまでの痛みとは思わなかった。
着弾した時はここまでは痛まなかったのだが。
まるで拷問のような痛みにその場で嘔吐し、開ききった傷口を手で押さえる。
中で目的の鉛玉が動いているのが肉越しに伝わってくるのが分かる。
鼓動と共にドクンドクンと動いている。
俺は深呼吸してナイフをもう一度、今度はより内側まで押し込んだ。
「...来たっ!」
刃先が固い物に触れた。
これは確実に鉛玉だ、骨じゃない。
指を傷に差込み、ナイフと指を使って箸のようにそれを掴んだ。
そして指先に絡まった血管ごと思い切り引き抜いた。




