堕天使の行き先
[蝮]
金は人を幸福にする。
だが、それと同時に人を地獄に陥れ、もがき苦しませる。
苦しみに苦しみ抜いた者達はそこから抜け出すか...より底へと堕ちる。
金は人の人生を狂わせ、また暴力も生む。
そこで新たな論争や抗争が勃発し、血で血を洗う、凄惨な悲劇が起きる。
だが俺達にとってはそれは関係のない事だ。
堕落した人間は堕落するような生活をしている。
優しい人間はそれを利用され堕落する事もある。
この事から俺は今回の件を"よくある事"と捕えている。
俺の右腕はもう使い物にならなくなった...だが復讐は望まない。
何せ俺は...ハッハ...平和主義者だからな。
奴の、奴等の自爆する様を見届けてやるさ。
[マーク]
俺を救ったこの女は自身をサラと名乗った。
すすり泣くような声だったためハッキリとは聞こえなかったが、確かにそう言っていた。
以前にも聞いたような名前だが...そんな事はどうだっていい。
取りあえずこれが人生初の殺人だったのだろう、あのサツもくたばっちゃいねぇが、増援を呼ばれる前にずらかろう。
俺が部屋を出ようとしたその時目の前にあの男が現れた、蝮だ。
相変わらずの冷酷な雰囲気でいつも殺気だけを醸し出している。
蝮は俺の前で立ち止まると、何故部屋の扉の鍵がかかっていなかったのかと問う。
だから笑いながら答えてやった。
「アンタの債務者の事か?アイツならとっくに死んでやがるぜ。」
すると蝮は珍しく驚いたように目を開き、俺をどかすように足早に部屋の奥へと入っていった。
少々気になったが...まぁ、俺にとってはどうでもいい事さ、俺はここらで帰らせてもらうぜ。
後片付けは頼んだ。
[蝮]
そうか、ジェフが死んだか。
俺は腹から込み上げてくる笑いを何とか堪えながら唯一女の声が聞こえる部屋へと直行した。
部屋の扉を開けるとそこは酷い惨状になっていて、一見すると地獄絵図だ。
泣いている女の手には銃が握られていて、俺という第三者の介入に心底驚いている様子だった。
そしてその奥には...警察?腹から血を流して重症だが命に関る事ではないだろう。
最後にこの大量の血を出す元凶になっていると思われる"物体"を見つけた。
それは目もあてられない程損傷の激しい死体だったが服装からして恐らくジェフだろう。
あの仮面の男がやったのかそれともこの女か?警察の男はあり得ないだろう...だが...。
「おい、女!」
彼女は俺の声にビクッと肩を痙攣させ、驚いた素振りを見せた。
「あそこに腕やら脚やらが転がっているが...アレは誰がやったんだ?」
彼女の視線は死体へと向き、そしてもう一度俺に向きなおした。
「そこのクソッタレの刑事さんよ」
警察か...想定外だった。
だが汚職に塗れたこの街じゃ分からない事もないかもな。
俺はその男の元へ歩み寄り、睨みつける視線を無視しながらその場にゆっくりと腰を下ろした。
「なぁ、お前がその男を殺したんだな?」
必死に反論しようと彼は声を出すが、銃撃された痛みにより唸り声にしかならなかった。
「お前が殺したその男はうちの債務者だ。借金が膨れ上がって今は125万まで利息が肥大化している。もしその男が死んだとなったら恐らくもう彼から金は取り返せない。だとしたらどうなるか、分かってるな?10日間待ってやる。お前の病院のベッドでもう一度会おう。」
彼の表情はまるでこの世の終わりの時が来たかのように絶望的だった。
でもこれが現実だよ、刑事さん。




