後継者
[ジェフ]
金融業関係の人間に上下関係はあるのだろうか?
と、いうのは事務所や会社内での問題ではない。
その上だ。
マフィアとか、そういう類のものじゃない。
賄賂って意味、分かるか?
俺が言っているのは...。
[マーク]
よし、よし、あのクソ野郎の家の前についた!
ボロいアパートに住んでやがる。
この住所を探し出すためにネットを使いまくったんだぞ、手間かけやがって。
それと、木の扉を無理矢理こじ開けるために消化斧を持ってきた。
消防士が火事の現場に突入し、部屋に入る際熱気等でドアノブが変形し開かなくなった時、その扉を破壊するために使われる斧だ。
俺はそれをジェフの家の扉に思い切り叩き付けた。
バンッ!と音を立て斧が木目に抉り込む。
そして斧を引き抜き、もう2、3度それを繰り返した。
恐らく奴はこの時点でこの物音に気づいているだろうが、気にせず続けた。
段々と扉に空く虚構の穴は大きくなっていき、ついには...扉を破壊した。
部屋の中はムッと蒸し暑く、外の数倍は暑い。
この部屋はガスも、冷房も水も止められているから無理はないだろう。
俺は上着をその場に脱ぎ捨て、血塗れのシャツを外に曝け出した状態で散策を開始した。
「おい!ジェフこの馬鹿野朗!出てこい!」
一通り部屋を探し回る。
トイレも、風呂も、台所も、ゴキブリの巣窟みたいな状態になっているが目を通す。
20分の間この熱中症になりそうな部屋で捜索を続けていたその時、寝室で誰かの歩く音がするのが聞こえた。
急いでその部屋へと向かうと、ベッドの下に何か足のようなモノが見えた。
ジェフか、全く笑わせやがって、頭隠して尻隠さずって言葉知らねぇのかよ。
苦笑いを浮かべながら俺はその足を掴み、引きずり出した。
「さぁジェフ、いよいよご対面だぜ..!?」
異常な程軽く、冷たく固まった身体を勢いよく引きずり出した俺は驚きのあまり声も出せず、その場で数秒間固まった。
そこにあったのは正常な人間の身体ではなく、幾つかのパーツに切り刻まれた人間の"部位"だった。
目は完全に抉り取られているが、片方は何の異常もない。
また、胸骨は叩き割られ、首の傷は頭を支えるのが難しい程深く見える。
脊柱は鋸のようなもので切断された跡があり、腕等は筋繊維でなんとか繋がっている。
後頭部からは脳味噌が垂れ流しになっていてそこには既に虫がたかっていた。
いつも自分がやっている事を第三者視点から客観視しているような気分になり、一時的な虚無感に苛まされる。
その場に立ち尽くし、固まっていると後ろから一人の男が現れた。
そいつは見た事のない野郎だった...。
[サム]
時間通りだ。
彼が、マークがここに来るのは最初から分かりきっていた。
彼の住所を特定し、固定電話、携帯電話両方の通話履歴を調べた。
だが僕はあるミスを犯してしまった。
ここの住民をマークと勘違いし殺してしまったんだ。
だからといってこの罪を公的権力で揉み消そうだなんて考えたら、それはデニスさんと同類の猿だ。
我々は一貫した高いモラルを持つ必要がある。
とにかく急いでマークを逮捕し、署に戻ろう。
一度はそうも考えた、だが事態は思ったより深刻だったんだ...。




