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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第一章:汚れ仕事
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強襲

[マーク]

さっきの女は社長が6階にいるとかほざいてたが、俺はどうも暴れ足りねぇ。

エレベーターに乗って、少し考えた。

一気にぶっ殺しにかかるか?それとも久しぶりの仕事だし、もう少し"遊んでいく"か?

後者はリスクが高いが、俺には実に合う。

俺は"2階"のボタンを押し、扉が閉まるのを待った。

「何で2階に行くの?」

エリックは不安そうな顔で聞いてきた、俺が快楽殺人鬼か何かに見えてるんだろう。

俺はバットをエリックに返し、ナイフを取り出す。

「こういう事だ。」

ピンポン、という音と共にエレベーターの扉が開いた。

俺は完全に開くまで待ちきれずに外に出て、丁度目の前で後ろを向いて掲示物の貼り変えを行ってる社員の頭を掴み、壁に叩き付けた。

何度も、何度も叩きつけていくうちに、痛みに喘ぐ声は消えていき、代わりに鈍い音だけが響くようになった。

ああ、人間ってのは脆い、気づいたら逝っちまう。

俺は死体には興味ない、こいつは廊下に寝かせておいて、次の標的を探しに行こう。


[エリック]

ああ、何でマークの衝動的な猟奇殺人につき合わされなければならないんだ。

彼と居ると命が危ういが、待っていても不安という事もあり、何だかんだいってついていった。

エレベーターのドアが開いて数秒で一人目を惨殺後、すぐ脇にある部屋の扉を開けまた一人を殺した。

その時だった。

僕達の丁度死角になっている箇所から二人の警備員が飛び出してきて僕とマークに掴みかかった。

非常に優れたチームワークだ、無線で僕達の存在を知らされていたのだろうか?

マークは必死に抵抗している、それは僕も一緒だ。

でも僕の力量では警備員には到底敵わない。

脇腹に蹴りを入れられ、痛みが走る。

その痛みは身体中を伝って内蔵に重く響いた。

僕は抵抗している内に警備員のバランスを崩す事に成功した。

そこで僕は無我夢中で猛攻をしかけた。

一時的に攻撃に特化した脳は目の前にいる人間だけを殴れと指令する。

何が何だか分からない、ただ暴れているような、滅茶苦茶だ。

バットで何度も警備員の頭をタコ殴りにし、頭蓋骨を破壊、その後上体を殴りつけ、警備員のあばらが折れる音がした。

バキッ、その音で我に帰った。

倒れた警備員を殴る手を止め、数秒程動かなかった。

まるで燃料切れのロボットだ。

一瞬自分が何故こんな事をしているのか理解が出来なかったが、その後すぐに現実を受け止めた。

僕はヨナヨナとその場に座り込み、ボーっと一点を見つめる。

一家の大黒柱であり、家族を支える父親である僕がついに人を殺めてしまうなんて。

なんて最低な父親なんだ、僕は混沌とする頭を手で叩き、嘆く。

不思議と涙は出なかった、心が黒く塗られた証拠か?

マークのほうも警備員を始末したようで、周囲にいた民間人に八つ当たりし、殺しを再開し始めた。

まずはこの仕事を終わらせて、その後で警察に自首しよう、いや、そしたら逮捕されるのは僕か。

「エリック、ここはクリアだ、エレベーターに戻るぞ」

無言で、マークについていった、今コイツとは話したくない。

エレベーターに乗ると、マスクを外し側面の鏡に写っている自分を見つめた。

返り血が身体中に跳ねている。

僕はこれからどうしたらいいんだ....。


[マーク]

エリックの様子がおかしい。

荷が重すぎたか?あまり考え込むのもよくないと思うが。

俺は彼が可哀相になり、仕方なくだが、6階のボタンを押した。

だが、理由は大体分かる、俺も最初の殺人には躊躇があった。

でも事は慣れだ。

俺は快楽を求めて殺してるんじゃねぇ、ましてや注目を浴びたいからでもねぇ。

それが俺の仕事だからだ、殺しが俺の全て、本質なんだ。

殺人衝動だけが俺を動かし、破壊衝動が俺を更なる高みへと導く。


「そうだ、お前は衝動だけで動いてる、そこら辺の動物と変わらない。」


なんだ!?

今のは...もしかしてテッドか?

鏡を見るが、俺は俺のままだ、俺の動くままに鏡の中の俺も動く。

じゃ何なんだ、俺はどうかしちまったか?

クソ、そんな事考えてる内に、6階についちまったよ。


[エリック]

社長の居る階だ、一階ずつ制圧して行こうとしていたのに、僕を気遣ってくれたのか?

そんな気遣いクソだ、それならハナっから僕をこんな事に巻き込むな!

エレベーターの扉が開く、僕にとってはその瞬間が一番の恐怖だ。

マークは社長室のドアノブに手をかけ、ゆっくりと開いた。

中には社長と二人の社員がいて、3人とも僕達には気づいていない様子だ。

そこでマークは早速突撃をしかけ、驚いて硬直した社員二人の首や身体をナイフで切りつける。

僕は手に持っていたバットで倒れ込んだ社員の頭にフルスイングをかました。

何故か躊躇はしなかった、へし折れたバットを見て、捨てた。

子供達との思いでを捨てたんだぞ、僕は自分がおかしいという事はその時点で薄々承知だった。

でも戻るなんて事はしなかった。

冷酷な表情で社長を見つめ、マークと共に歩み寄る。

突然訪れた恐怖に困惑した社長は机の下からピストルを取り出し、僕達に銃口を向けた。

マークは手をあげる事なんてせず、ただただ退屈そうに立ち止まっていた。

僕はそんなマークを見て、呆れた。

こういう時はただ突っ立ってるだけじゃ始まらない。

作戦を練らないといけないが、読書家だった僕は以前こういう際の対処方を本で読んだ事がある。

そして僕はまた、やろうと思った事はすぐに実行に移す主義でもある。

覚悟を決めろ、簡単さ、書いてあった事をそのまま実践すればいい。

僕は社長に向かって歩み寄った。

当然、社長は警戒してこちらに銃口を向ける。

「よ、寄るなぁっ!」

弱弱しい声で叫び始めた。

作り笑いをするが、目が笑っていない事に気づいているだろう。

こうやって彼の心を揺さぶるんだ。

僕はマークに振り返り、首で社長の銃を握る手を指した。

合図に気づいたマークは「なるほどな」とだけ言い、手に持ったナイフで社長の腕を一突きする。

それと同時に僕は頭を低くし、暴発被害を回避した。

マークはナイフを社長の首に突きつけ、嘲笑う。

社長は必死に命乞いをするが、マークにそれが通用しないのは本人も分かっていただろう。

刃先を少し首に食い込ませる、血が滲み出て、鋭い痛みに社長は歯を食いしばる。

死を覚悟し、受け入れない奴を相手にすると彼のサディスト精神が火を噴く。

その後マークはまるで別れを喜ぶように社長の首にナイフを刺し込んだ。

「よし、お仕事終わりっ!」

彼はしばらく初仕事達成の余韻に浸っていた。

一方僕はというと彼の横で頭を抱え込んでいる。

そろそろ女々しいと言われるだろうが、人を殺すという事が実に人間の良心を侵食し、その者の人格を否定するものなのだという事がよくわかった。

家族のためにも警察に自首するわけにもいかない。

そう、この時点で僕にはこれからの人生を裏で生きるっていう義務が与えられたんだ。

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