地獄へようこそ
[サム]
やはり、どう考えても遅刻している。
僕の助手、サラの場合いつも遅刻しているので特に珍しいというわけではないのだが今日という今日は遅れすぎている。
多少の遅延は許されるが2時間の遅刻は助手としての権利を剥奪されてもおかしくないだろう。
それに彼女は昨晩2つの仕事を破棄し夕方に帰宅した。
その後特定の...と言ってもマークの所在地に関する少数の資料だが、彼に関する莫大な量の記録が入ったファイルがサラのデスクから消失しているのを確認した。
こうなった場合、少し癪だが彼女の居場所を突き止めるために監視カメラの監視履歴やコンピューターの使用履歴等をとことん調べていく必要性がある。
正直な所サラ自体は使えない上これっぽっちの価値もないので必要ない、問題なのは彼女が現在所有している記録だ。
彼女を捕獲したら少し罰を与えなくちゃいけないな....。
僕は強力なスタンガンを取り出し、バッグに詰める作業を開始した。
[マーク]
古びてギシギシと音を鳴らす階段を駆け上がり、立て付けの悪い扉を開ける。
いや、正確には開けると言うより、ムカついて蹴り壊したのだが...そんな事はどうだっていい。
そしてその扉の奥にいた若い女と中年の男のハゲ頭を掴み床に叩きつける。
しかしこの若い女は見た目からしてどうやらまだ18になったばかりのような感じだ。
成人したのかどうかもあやふや...だが、これでハッキリした。
ここはヤバい場所だ。
俺はハゲ男を無理矢理立たせると次にバットで背中を投打した。
ゴォン!と金属と骨がぶつかり合う音が耳を劈く。
もうそこそこ年をとっていたせいか、殴られた彼は自力で立ち上がる事は出来ず、一人で「うぉ...」といった感じに、唸っている。
俺はそんな彼の即頭部付近をバットで小突き、尋問した。
「テメェの上司はどこにいやがる?」
彼は俺の目を見て動かなかった。
立て続けに2、3度質問を重ねたが結果は同じだし、それどころかこの男はピクリとも動かなくなった。
「おい、人の事を舐めてっと...」
俺がバットを思い切り振りかぶった瞬間、俺はある事に気づいた。
この男はもう死んでいる。
恐らく恐怖か、投打による内部出血及び骨折等が原因で心臓発作を引き起こしたのだろう。
年のせいというものもあるのだろうが、人間というのはなんて脆い生命体なんだろうか。
クソッ、とバットを床に投げ捨てる。
そして尋問を続けるため先程の若い女に手を伸ばしたその時、後ろの扉がバタンと音を立てながら勢いよく開いた。
一体何だってんだ!
[蝮]
この部屋で何が起こったのかは分からねぇ。
ただ一つ言えるのがこの凄惨な状況を作り出した馬鹿がこの真っ赤になった部屋の中央に立ち尽くしている血塗れのクソ野郎だって事は分かる。
俺が隣の部屋で作業、まぁデスクワークをしながら顧客名簿を一から確認していた時、この部屋が騒がしかった事はわかっていた。
勿論、何か揉め事が起こっているという事もな。
だがこれ程までとは...流石の俺も驚きと動揺を隠せなかった。
今まで色々な奴を見てきたがこいつは侮れない。
「おい、テメェ誰の差し金だ?ここの債務者か?」
奴は質問には一言も答えず、手に持ったバットで威嚇しながら近づいてきた。




