血の麻薬
[蝮]
また一人...馬鹿が借金を背負った。
人に金を貸す時、相手の身分証明証等のコピーを取る。
そして氏名、現住所や電話番号等を専用用紙に記入させるんだ。
手元の顧客情報の中には信用出来るものからいかにも信用出来ない奴、頭のイカれた多重債務者もいる。
だから慎重になるのさ。
俺達は公的権力から逃れる犯罪者...いや、抵抗者と言ったほうが正しいか。
金もなく、ろくな働き口もないくせして借金を作り優々と暮らす馬鹿達に杭を刺す。
そしてそいつらの金、そしてそいつらの親族や親戚を纏めて喰らう!
世の中殺し合いの連続だ、だからこうやって俺達がいる。
殺伐とした格差社会があるからこそこうやって俺達はのし上れた。
社員数は全部で30人、典型的な会社として見ればまだまだ少ない方だがここは普通の会社じゃない。
これでも年に数十億の儲けが出る。
それに、ここのマンションは直接買収したため維持費及び家賃を支払う必要性は全くない。
赤字なんて今まであり得なかった。
[マーク]
指示された場所に1時間30分かけて到着した。
これなら後でガソリン代もまとめて請求してやろうと思う。
まさかここまで遠いとは思わなかったからな。
指定された建物は金融事務所というよりは会社に近かった。
控えめな看板が一つだけポツンと置かれていて、一見ただの売り上げの悪い会社だ。
扉は自動ドアではなく、硬い扉を両手でゆっくりと開けた。
すると中にはサングラスにスーツの男達が仕事をしており、中にはいかにもチャラそうな男までいた。
奴等は俺の顔を見ると顧客と勘違いしニコニコ笑いだして、その内一人が俺に歩み寄ってきた。
いかにも礼儀正しいサラリーマンの風貌の男が借金の申請書を手渡そうとした瞬間、俺はそいつの頭を金属バットで叩き割った。
金属の曲がる音が部屋中に響き渡り、流れ出す血液には黄色い何かが混ざっていた。
今の男を殺した直後、背後にいた従業員達が一斉に立ち上がり、刃物のような物を手に取った。
あれは短刀だろうか?声を荒げながら、怒鳴りながら突っ込んでくる。
奴等は精鋭揃いなのか速度が異常なまでに速く、避けるのが精一杯だった。
俺は奴等の攻撃を左へ右へと流し、やっと見えた隙を突く。
短刀の刃が俺の腕や頬を浅く切る。
そしてその血が床に滴るまでにもう一つの刃が俺を殺そうとする。
俺はそれを片手で受け止め、バットを叩きつける。
こいつらが協調性のない馬鹿共だったおかげで、この数が相手でも何とか勝ち目が見えそうだ。
奴等の血だけが俺の痛み止め、アスペリン?いや、もっと効き目が強い...モルヒネだ。
俺が入店して数分で部屋は身体の一部や血塗れになり、金属音と怒号だけが鳴り響いている。
頭を破壊されているのに死に切れず、ピクピク動いている者を踏みつけ、少数の生き残りが逃走を開始し始めた。
「こんなもんか...大した事ねぇな」
次のフロアへ移ろうとした途端、何が俺の足を掴んだ。
それは一見死体だった。
だが、正確にはまだ生きている。
身体中内出血や打撲の跡だらけでよく見ると痛々しい傷も大量にある。
「ここから先は行かせねー...ぞ」
勇ましく逞しい奴だ。
流石にこの時ばかりは俺も感心したが、結局はそいつも死体の仲間入りになった。
俺が頭をバットでフルスイングしたんだ。
丁度ゴルフみたいな感じにな。




