夕暮れの酒屋
[マーク]
俺は帰宅する前に古びた酒屋に立ち寄った。
折角久しぶりに郊外に来たんだから、一杯飲んでいこうと思ったんだ。
この酒屋は古びている割りにはここら辺では栄えているようだ。
客はそこらのバーより多く、和気藹々としている。
作りは全て木製で最近はてっきり見なくなったような小道具等も飾られていた。
マスクをバッグに隠し店に入ると店長を名乗るボロい身なりの白髪男が店内を案内してくれた。
俺は素直に付いて行ったが...どうも俺を見る目が怪しい、変にオドオドしているんだ。
それに彼について店内を歩いていると、周囲の目が一気にこちらを向いた。
恐らくだが返り血を浴びた服のままだからだろう、着替えてくれば良かった。
先に立った事のない後悔から目を背けているとやっと彼の案内が終わりを迎えた。
俺は指定された席に深く腰かけ、店主に酒を頼んだ。
ワイルドにテキーラでこのムシャクシャした気分を紛らわせようと思ったんだ。
え?テキーラは別にワイルドじゃない?い、いいんだよそんな事!
それで、カウボーイハットを机に置き一息ついていた。
頭の中では俺を無給で働かせたモロトフのケツをしばき倒すイメージを組んでいる。
愚痴の一つでも零したい気分だった。
店の奥でバーテンダーが氷を割っている音が聞こえる。
まさにその音に合わせてモロトフの頭を割る脳内ビデオを思考した。
しばらくして店長が戻ってきた。
相変わらず雑巾のような服装だ、もしかしてこれが当店の制服か?
俺は肘を机につき、手を差し出す。
だが中々ジョッキボトルを渡さない。
礼儀に反してるかと思い頭を上げたその時、俺は銃口を覗く事になった。
彼は銃身の長い1880年製のライフルを俺の頭に突き付けていたんだ。
「お客さん、当店は善人以外の方の利用はお控えして貰っています。」
バレた?どういう事だ。
俺は彼の背後に写るテレビに視線を逸らす。
古いブラウン管テレビで放送されているニュース速報には先程俺が仕事を行った店と、マスクをつけた俺自身が写されていた。
服に飛散した返り血の場所、頭髪の色、腰に差した拳銃の種類から俺を割り出したみたいだ。
あの家は警備が不十分だと思っていたがまさか隠し防犯カメラとはな。
彼も俺を目の前にして相当ビビっているようだ。
銃の先端が震えているのが伝わってくる。
「大丈夫だ、俺はアンタを殺すつもりなんてねぇ。」
まるで彼を脅迫するように彼の目を睨み付けた。
だが彼は俺を警察に突き出してやると喚くだけだった。
何度も、何度もだ。
いい加減苛立ちを収められなくなった俺は銃の先の方を右手で掴み、彼の顔に拳を入れた。
腰に差した拳銃の片方を抜き、ヨロヨロと後退する彼に向ける。
そしてもう片方の拳銃で延々と俺を報道し続けるテレビを黙らせた。
銃声に客共は騒ぎ始め、1分と経たない内に皆店の外へ逃げ出してしまった。
だがここら辺には警察署はない、かえって好都合だ。
最後の一人が慌てて逃げて行ったところで俺は重い口をもう一度開いた。
「さぁ、俺と二人きりだぜ。ここでアンタを殺っても誰も気づかない。」
もう一歩前に出る、彼の口に勢い良く銃口を突っ込む。
歯の折れる音がした。
血の味が口の中を支配したろう。
だがすぐにその味すらも感じなくなるさ。
俺は彼に最後の祈りをさせる事もなく硬い引き金を引いた。
バンッという火薬の弾ける音と共に彼の後頭部からは肉やら血やら脳漿やらが背後に向かって飛び散り、動かなくなった。
途端に彼の膝がガクッと力を無くし重心に対する抗力を失う。
俺は咄嗟に銃を彼の口から抜き、血の混じった汚ぇ唾液を拭く。
あのまま銃自体を飲み込ませても面白かったかもな。
後で腹を裂いて銃を取り出すんだ。
フフッと笑みが零れる。
「良い酒が飲めたぜ、店長さんよ。」
俺は料金を店長の死体の上に乗せ、カウボーイハットを頭に被りなおしその場を後にした。
あ、それと酒を一本お持ち帰りした。
これ何ていう酒だ?ちょっと飲みすぎちまったのか字が二重三重になって読めねぇんだ。




