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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第三章:壊れ出した世界
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用済み

[モロトフ]

野郎、俺の頼みを断るってのがどういう意味を成すのか分からないのか。

アイツは50万という報酬を鼻で笑い、俺に背を向け怒号を無視した。

窓からアイツが帰っていく車をずっと睨み続けたさ。

面白ぇ、俺の頼みを聞かないってんなら奴はもう"用済み"だ。

頭に風穴開けてやる、今に見てろ。

どちらにしろ、奴が容疑者として逮捕された場合、電話の事を吐かれたら厄介だしな。

俺は心の中で即決し、部下にこの事を話した。

詳細、配置位置、時間まで分かりやすく。

最初は嫌がっていた部下だが、給料アップという最終手段を持ちこんだ途端「やらせて下さい」とまで言い出した。

全く、嫌な部下を持ったもんだ。

作戦としてはこうだ、まず電話は怪しまれないよう俺ではなく部下にかけさせ、適当にイーストゴーストの奴等を襲撃させる。

次に、そこへ部下を派遣し奇襲を仕掛ける。

そして俺が奴の頭をぶち抜くっていうわけだ。

埃で覆われた汚い地面が奴の墓場になる。

ああ、明日がお前の命日だ、マーク。

再会が楽しみだよ。

気づくと俺は笑っていた。


[マーク]

「ハニー、今帰ったぜ。」

一人寂しく家の扉を開けた俺は、孤独を紛らわすために居るわけもない妻の名前を呼ぶ。

勿論誰も出て来てくれない、当たり前だ。

家を買い替えてこのボロい一軒家から豪邸に引っ越そうかと思ったが、いきなり巨額の金を使ったりした場合税務署から怪しまれる可能性も否定できない。

だから俺は今日も血まみれの服を洗濯し、パスタを晩飯にする事しか出来なかった。

いい加減こんな生活も飽きてきた。

それなら心機一転して殺人にドップリ浸かった身体を解して自分探しの旅にでも行きたい。

まぁ、本当の自分ならもうとっくの昔に見つかっているわけだが。

俺は洗面所の前に立ち、髭を剃った。

気づかない間に伸びたもんだ。

俺はボサボサとジョリジョリの中間が好きで、いつもその期間が過ぎるまで剃らない。

電動髭剃りを顎にあて、鏡に顔を寄せる。

さぁ切ろう、そう思った直後また奴が俺の前に現れた...。

「今日だけでお前は何人殺した?」

髭すらも剃らせてくれないのか、俺は怒りに顔を曇らせた。

「お前は一体何だって俺にこんな嫌がらせをするんだ?」

鏡に向けて怒鳴りつけた。

傍から見たら完全にヤバい奴だろう。

だがテッドはまるで留守番電話のように俺の話を無視して自分の話を優先する。

聞こえていないのか?

「俺はお前だ、忘れたか?いつだってお前から目を離していない。」

気持ち悪い、ストーカーのような事を言い出した。

俺は顔を顰めた。

尚もテッドは口を閉じる暇もなく淡々と喋り続ける。

「恐らくだが、これは正史じゃない、目を覚ますなら今の内だ。」

やはり、何を言っているのかサッパリ分からない。

「これが夢だとでも?非現実的なのはそっちのほうじゃないか!」

思わず声を荒げた。

それが奴に聞こえていない、もしくは無視されていると分かっていながらも。

いい加減馬鹿馬鹿しくなった俺は、過去に日曜大工をする際に使用した金鎚を部屋の奥から取り出してきた。

部屋から戻ってきても、まだビデオのように延々とテッドの演説は続いている。

俺はそんなクソったれは聞く気はない。

今回ばかりは頭に血が上り、我を忘れていた。

この鏡が我が家の洗面所の鏡だと言う事を気にも留めず、思い切り金鎚で殴った。

鏡の表面に罅が入り、鏡の中のテッドがようやく気づいたようだ。

奴は俺を睨み、「今気づかなかったら一生目覚められないぞ?」と低い声で唸るように言う。

やっぱり何を言っているのか理解不能だ、少なくとも俺の頭じゃ。

俺はもう一度金鎚を振りかぶり、鏡に叩き付けた。

重低音のような声が途絶え、戯言も聞こえなくなった。

鏡は音もたてず、脆くも崩れ落ちた。

その剝れた鏡の奥からは大量の血が溢れ出し、濁流のように洗面台に流れていく。

愕然として、驚きを隠せなかった。

気づけば愕然とした表情で痴呆のように「鏡から血が?」と繰り返していたんだ。

しかし誰でもこうなるだろう。

何せ"世界が壊れ出した"んだから。

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